日記
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2013年04月29日(月) 「あなたがたはこのような陋劣な罪を告白することがおできになりますか」できません神父さま

昨日から今日にかけて

フ゛ラウソ神父の秘密 G・K・千ェス夕トン
倉刂元扌隹理文庫1972年8版

ですって 1961年初版 40年 50年ほども前に出てるんですね
遥か昔にどこかの古本屋さんの店先で買ったと思われる
路上に安売りでダンボールで出してあったりかもしれない
裏に直接手書きで鉛筆で 50− とお値段が 50円で買ったらしい
表紙を見るにおぼろげな記憶が
書体の名前は判りませんが古風でデコラティヴなアルファベットのFとBの文字を大きく縦に置き
表紙全体に赤で斜めに縞をかけた大胆なデザイン
左隅に縦一列になぜか星が並んでいるのとFの文字の一部 それだけ緑
おそらく何も知らずに なんか名前を聞いたことあるようなないような有名どころのミステリ くらいの認識で
この値段なら失敗してもいい とかいう失礼な心づもりで
好みにひっかかるデザインのものを集める気持ちが主で買ったように思います

買って何年経ってるんだか おそらく初めて開く
もう紙は生成りも通り越し茶色
読んでいると日焼けした紙?埃?土のような?見たところカビは生えていないが
よく古いものを描写するときに出てくる「黴臭いような埃臭いような」
ってこんな感じだろうか とちょっと思いました 何かの匂いがします

しかし!
開けてよかった!
素敵だフ゛ラウソ神父!
登場する方々のイギリスっぽい会話もなんだか素敵だ!
とか言ってイギリスでいいんですよね?
冷静で頭がよくってユーモアがあって人情の機微もおわかりになる小柄なおじいちゃま
と書いてしまったがご年齢はいくつか 意外にお若かったら申し訳ない

「まんまるな童顔」「澄んだ目」「小柄なからだに大きな黒い帽子と蝙蝠傘」
かわいいじゃないですか

俺の中で勝手に白髪です うっかりすると勝手に眼鏡です
実際よく読めばご年齢とか外見に関する記述もあるんでしょうが今は確認しません

カトリックの神父さま というのがまず好みだったりするんですが
その立場のせいでしょうか 昔の探偵ものの主役としてはすごく謙虚な
謙虚なのかな 同情すべきところには同情する?
兇悪な犯罪人とそれを追い詰める名探偵!という感じでないのがすてき

そうそれだ 作中神父さまご自身で仰ってます
自分にとてもそんなことはできない と遠いこととして犯罪を恐れるのではなく
自分もそれをやりかねないと思うからこそ恐ろしい と

犯罪の推理をするときに理詰めで証拠品をアリバイをというのもすきですが
ちょっとただいま神父さまの俗っぽさとクールさ加減のバランスに惚れぎみです
神父さまかっこいいんだもの!

そうだ書いてるうちにようやくわかってきたその己の黒さを認めるとこがかっこいいのかも

どのように推理していくのかと問われたその推理方法が

殺人犯の考えるとおりに考えるのです
殺人犯のと同じ激情と格闘するのです こみあげてくる憎悪の念
なかば狂った頭が見えるものも見えなくし
そこに見えるものと言えば血の池めがけてまっすぐに伸びる一本道のぎくしゃくした眺めだけ
わたしは本当に殺人犯になるのです

もっとも
いつも他の人間がすでに下手人の役を演じ終えていたので
私が現実に凶行を経験するわけにはまいりませんでした

凶行に及ぶ瞬間の犯人の精神状態を心に描いてみると
わたしはいつもそれがとても他人ごととは思えなかったのです
ある心理的条件におかれさえしたら
わたしが自分でそれをやったかもしれない といつも痛感したのです

・・・・・・神父さま!
ね惚れちゃうでしょ!?

あげくある男のある罪には寛容だった登場人物たちが
その男が本当に何をしたかを知って一斉に糾弾を始める場面では
「しかし神父さん、あなたはああいう陋劣な所業がわれわれに許せるとでもお思いなのですか?」
「思いません」「しかしわれわれ司祭はそれを許すことができなくてはならぬのです」

この人たちは本当に申し開きの立たぬことをしているのです
本人も世間も弁解の言葉を知らぬようなことをしているのです
それが許せるのは司祭以外にはないのです
卑劣な 唾棄すべき 本当の罪を犯した人をわれわれに残してください
鶏が時をつくったとき 聖ペトロもそのような卑劣な罪を犯していました
しかしそれでも夜明けは来たのです





もう泣いちゃいそうです神父さま!

そのあと

あなたがたは品行に自信のある名誉ある紳士淑女でいらっしゃる
あなたがたは自分はこういう陋劣な罪を犯すことはできないとおっしゃる
しかし あなたがたはこのような陋劣な罪を告白することがおできになりますか

そう言われて一人また一人と無言で去っていき
神父も無言で踵を返す

あなたがたのうち罪のないものから石を投げるがよい
とキリストに言われついに誰も石を投げずに去った聖書の一場面をどうしても思います
糾弾者たちに向かい合って立っていたのだから フ゛ラウソ神父が踵を返して向かうのは犯罪者のいる方です

・・・神父さま!!!

一応最初と最後をつなげて神父さまが昔のことを語ってくれたという形になってますが
その最初と最後の文を除いてもこの一冊の中に8本話が入ったお得な短編集
読みやすくてその辺も素敵です
全5冊あるらしい その4冊目らしい
読み終えて速攻古本屋へ 他のが読みてえ
しかし1冊も見つけられず
しかし関係ないものを山ほど買ってきました
読みながらまた探します





しかしなんでこんないいもの今まで読まずに置いちゃったのかおれ

もったいない もうちょっと早く読んでたら
もうちょっと早く読んでたら
若いころの神父さまとか言って不埒な本を出しかねない
「フ゛ラウソ神父の秘密」

だからか

 


 

鈴木  MAIL

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