ひとりびっち・R...びーち

 

 

かたわれ - 2001年07月31日(火)

 そう、結局、“かたわれ”の問題だからね。
 
 あなたが起きてるとき、むこうは寝てる。
 こっちが眠れば、あっちが目を覚ます。
 かたわれが寝ぼすけなら、こっちが不眠症ってことです。

 ですよね。
 しかし、よく寝るヤツなんですね、私の“かたわれ”は。

 仕方ないですよ、そうなっているんだから。

 ・・・・・・・

 覚醒直前、夢と現実とのボーダー、一瞬のあわい。
 私は謎の博士と“リヴァーシブルになっている世界のしくみ”を確認している。

 ・・・・・・・

 ものすごい暑さと、それに続く涼しい日々の温度差からか、すこぶる体調が悪い。
 部屋を移って、少しはまともになってきたと思っていた睡眠サイクルが、一番先に打撃を受けた。
 殴られて気を失うような感じの眠りが、2時間ぐらいずつ、夜昼問わずに訪れる。
 影絵のような街と、顔のない男の夢を繰り返し見る。

 ・・・・・・・

 たぶん、先日読んだ『ネシャン・サーガ』と、眠る直前に読んでいた大島弓子のマンガが影響していたのだろう。
 でも、裏返しの世界の“かたわれ“というアイデアは救いになる。

 すやすやと眠り、時々パッと目を覚ますと2時間フル稼動する私の“かたわれ”。
 たぶん、その眠りは深く長く、寝顔は安らかであろう。

 ・・・・・・・

 「ねぇ、おかーさん、もし、そうだったらさー」

 「ん?」

 「おいらの“かたわれ”って、テスト期間中とか、死ぬほど起きてるよねー」
 
 「だね。テスト前って、ホントーーーに、よく寝てるもんな、キミは」

 「でも、文芸愛好会の締め切り前とかになると、キミの“かたわれ”は死ぬほど眠るってことさ」

 ・・・・・・・

 これって、もしかして、ビリー・ミリガン化願望=多重人格の兆し??
 
 『1ダースのびーち・まんがん』

 ・・・う〜みゅ、あまり売れそうもないな。



...

画の中の家庭 - 2001年07月22日(日)

 昨日(7月21日付)の朝刊、上野精養軒と東京工学院の広告に挟まれるように載っていた死亡欄に目が止まった。
 
 諸井薫さんが亡くなっていた。

 肩書きは「作家・出版プロデューサー」、享年70歳。

 記事にあった主な著書、『男の流儀』、『男の止まり木』 などは読んだことがなかった。
 どうも、タイトルに「男」とか「女」が使われている本は、無意識のうちに避ける傾向があるらしい。
 キューリのキューちゃんの“男の味”という漬物は好物なのだが・・・。

 諸井さんの著書では、 『侠気(おとこぎ)について』 という文庫本が、けっこう好きだったことを思い出す。
 すでに処分して手元にないので、出版社も覚えていないし、引用もできないが、毘沙門天や昇り龍など、艶やかな柄の半永久シャツをお召しになった方々の話かと思いきや、さにあらず、一見平凡に見える女性たちの生き方の中に、一瞬の「侠気」を垣間見る、といった趣の短編集だった。

 出版プロデューサーとしての業績は、今回の記事で初めて知った。
 いくつかの雑誌の名が連なり、その中に、世界文化社から「家庭画報」を創刊、とある。

 マンガ以外の雑誌をほとんど読まない私だが、美容院で手に取る雑誌が2つだけある。
 ひとつは「流行通信」、もうひとつが「家庭画報」だ。

 どちらも、てるてる坊主拘束状態を、しばし忘れさせてくれる雑誌だ。
 綺麗な写真や洒落たエッセイが載っていて、ちょっとうれしい。

 ちなみに、私は美容院が大嫌いである。
 拘束衣を着せられ、メガネまで取り上げられて、刃物を持った他人が背後に立ち、あげくのはてに金まで払わされるなんて、言語道断だ。

 「家庭画報」は大判で、しかも上等の紙とインクをふんだんに使っているから、頑丈で重い。
 万が一のときは盾に使えるかもしれないし、表紙は刃物に匹敵するほど硬く、しなやかだ。
 というのは冗談としても、あの本を、膝に乗せずに読むのは結構つらい。
 近眼なので、メガネをはずした状態で膝に乗せると字が読めないのだ。
 筋トレもできてラッキー♪ とでも思わないと、やってられないぐらい重いのである。

 学生の頃、とある編集プロダクションのアルバイトをしていた時、5年分の「家庭画報」を収納していた棚が、その重量を支えきれずに落ち、狭い事務所の3分の1が「家庭画報」の表層なだれに埋没するという事件があった。
 下っ端で体力のあった私が復旧作業にあたったが、度重なる2次災害に見舞われ、打撲傷と筋肉痛が1週間続いたほどである。

 まあ、その重量と武器としての有効性はともかく、下手な写真集より美しく、上品かつ重厚な雑誌であることに間違いはないだろう。
 文章の端々にダンディズムが漂う、あの諸井さんが創刊したというのも頷ける。

 しかし、美容院とか歯医者さんじゃなく、工芸やデザインなどの仕事に関係しているわけでもなく、一般の読者としてこの雑誌を定期購読している「家庭」って、いったいどんなところなんだろう、と、いつも考えてしまう。

 そうだ、磯野家はどうだろうか?
 何と言っても、都内の庭付き一戸建て、いまどき贅沢な平屋御殿にお住まいである。
 加えて、隣家の主は小説家という文化の香りが漂う環境だ。

 波平さんの夏の賞与が出たら、今年はあの蜻蛉柄の帯をサザエに譲って、芭蕉布の夏帯でも新調しようかしらねぇ・・・なんて、詰碁を並べている波平さんの横で、季節のキモノの装いや1点モノの器が載ったグラヴィアの頁を繰っている舟さん・・・。
 
 うーん、なんかピンとこないなぁ。

 「磯野家」 と 「家庭画報」 は、私にとって 「画の中の家庭」 の双璧なんだけど、合わせ技にはちと無理があるみたい。
 納豆とフォアグラを一緒に食べてみましょう、っていう感じなのかな?

 あれれ? でも、それって、どっちも私が苦手な食べ物じゃん。
 結局どっちにも縁がないってことなのかもね。

 まあいいや、とりあえず、朝の残りのコーヒーでアイス・オ・レを作って、ベビーチーズとリッツクラッカーで、おやつにしようっと。

 ・・・・・・・

 つつしんで、諸井薫さんのご冥福をお祈りしたいと思います。




...

不向きな夏 - 2001年07月20日(金)

 「喝!」
 そんな・・・いきなり、握りこぶしに微笑みという微妙なスタイルで言われても・・・。

 選挙ハガキである。
 どうやら巷では選挙たけなわらしい。

 ・・・・・・・

 えー、みなさんお暑い中お疲れ様です。
 これより“第2回 ねりもの党 おでん院議員選挙 選挙対策本部会議”、略して“ネリタイ・2”を始めます。
 とりあえず、この陽気ですので、さきほど差し入れのあった保冷剤をどうぞ。 
 あ、そこ、数、足りてますか?
 まずは鮮度保持ということで・・・はい、はい、奥にありますからすぐ出します。
 はい、結構です。揃いましたね。
 では、お手元に配布いたしましたレジュメにしたがって進行させていただきます。
 本日の議長を務めさせていただきます選対委員長の「ちくわ」でございます。よろしくどうぞ。

 ち、ち、ちくわ君っ!

 はい? つみれ議員、ご発言は後ほどお願いしたいのですが

 いや、諸君、ゴホ、ゴホ、ウォッホン、この比例代表名簿は何じゃね?

 ですから、それは後ほど

 いかん、いかん、何故この当選6回の「つみれ」の名が載っておらんのじゃ!

 (つみれ長老、いよいよボケたな)
 (イワシ組合からの例の資金流用、あれがバレて散々叩かれたのを覚えてないらしい)
 
 いやじゃ、いやじゃ、いかん、やかん、おかん、どっか〜〜ん!

 (ヤバいよ、あの爺さん、端っこの方、カビが生えてるし)

 つみれ議員、ご着席ください! これ以上進行妨害されますと、ご退席をお願いしますよ。
 
 (あやや、泡ふいて倒れちゃった)
 (あー、連れてかれたよ。もうダメだね、ありゃ)

 みなさん、ご静粛に!
 では、まず各地区候補の状況分析から。
 海浜2区のはんぺん候補、いかがですか?

 はっきり言って厳しいですね。
 海産党の昆布氏が比例に回った分の票の行方が読めません。
 まさか、ぎりぎりになって、無所属のタコ氏に、海産党が公認を出すとは・・・
 ナマモノと乾物では、政策的に折り合いがつかないはずなのに、無茶しよりますな。
 
 そうですね、タコ氏の「私は“ナマ”ではなく“茹で”である」という微妙な発言、あれで気付くべきでした。
 選対本部の読み不足でした。申し訳ない。
 しかし、タコ氏に関しては、有権者の嗜好がはっきりしてますし、「真っ白なはんぺん候補を、タコの色移りから守れ!」という市民ボランティアグループの支援もあります。
 また、本日、街頭演説のアシスタントに、従来より2cm丈の短い白いミニスカートを本部より支給しました。
 はんぺん候補の選対では、演台の高さを5cm高くしてください。
 これで男性有権者の投票率が約2%アップするはずです。がんばってください。

 次に畑山1区、ゴボウ巻き候補。
 こちらは議席数2、イモ党のコンニャク氏の他に有力候補はいませんので、問題ないですね?

 いや、ちょっと待った。
 大豆党の若手、五目きんちゃく候補が「ゴボウ入ってます」というコピーの選挙ハガキを大量に発送しました。
 有権者の「福袋感」を刺激して、我が党の票田の切り崩しを図ってます。
 土曜日には絹豆腐代議士の「やっこ隊」も応援に乗り込んで来ます。
 緊急テコ入れ要請をします!

 了解しました。
 ・・・あ、君、カマボコ代議士の応援演説、スケジュール取れる? ちょっと小田原に確認して・・・

 ああ、カマボコ先生が来てくだされば助かります。
 季節柄、板わさ演説、あのひんやり感が有権者の足を止めてくれますね。

 ・・・ふむ、第一秘書の生ワサビ女史(信州産)も同行可能?・・・よし、それで行こう・・・
 と、いうわけです。
 巻物派は若手議員の餃子巻き君、ウィンナ巻きさんが、比例代表の方で頑張ってくれてます。
 ごぼう巻きさん、もう一息です。逃げ切りましょう。

 では、次、スジ候補に対する誹謗中傷の件ですが、関東選対のちくわぶさん、報告してください。

 どうも、ちくわぶです。
 関西の大物、畜産党候補の牛スジ氏が、二代目を関東で立候補させて、「ねりもののスジは邪道だ」発言を繰り返しています。
 「スジだのちくわぶだの、小麦粉を練ったヤワな輩を鍋に入れることは国を滅ぼす」とさえ・・・うっうっうっ

 ああ、ちくわぶさん、泣かないで。
 オリンピック招致の一件で、牛スジ氏はかなりご機嫌が悪いらしい。
 ことに、ウチの餃子巻き議員が名簿の上位に居ることが気に障ったんですね。
 まあ、牛スジ氏も人物ですから、それなりのところで納めてくれるはずです。
 ご子息の件は、「勉強じゃよ」とおっしゃってるみたいだし、本気で箱根の山を越える気はないでしょう。 
 
 ・・・っとっと。
 そろそろ時間がなくなってきました。保冷剤、どうですか?
 昨今、防腐剤や添加物の使用に有権者の目が厳しくなってますからね〜。
 あまり長時間常温で会議をして無事だと、怪しまれてしまいます。
 では、みなさん、代表名簿についは当然ですが変更なし、ということを確認して、会議を終了させていただきます。
 くれぐれも、鮮度に注意して、厳しい選挙戦を闘い抜きましょう!

 おー!

 ま、ま、ま、待て〜〜〜!
 えぇ〜〜い、わしを誰だと思っているのじゃ、あの若造、ちくわめ〜、謀りおって・・
 ごふっ、げほっ、こら、待て〜〜!

 
 “ネリタイ・3”につづく (ウソです)

 ・・・・・・・

 
 選挙もおでんも、夏向きじゃないっす。

 選ぶ気力も萎える夏に選ばれた人々が、立法府で何をするのか、ちょっと気がかり。
 そもそも、参議院って、その存在自体を問われていたんじゃ・・・??

 ・・・・・・・

 「おかーさん、あの“日本アゲイン”ってポスター、変だよねー」

 「ふむ」

 「どの時代に“アゲイン”するのか問題じゃん」

 「そりゃそうだ」

 「蘇えれ、っていう意味なら“リゲイン”だよね」

 ・・・・・・・

 おかーさんはキミに選挙権を譲りたいぞ。

 ・・・・・・・

 ※選挙ハガキ・ポスターについては、特定の政党や候補者を誹謗するものではありません。
  キャッチ・コピーに対する素朴な疑問ですので、その点ご理解くださいますようお願いいたします。
  なお、ねりもの党につきましてはフィクションです。
  実在する団体・個人とは一切関係ありません。
 



...

Over the rainbow - 2001年07月16日(月)

 虹が出ていた。

 柔らかいパステルを力まかせに引いたような発色、短いけれど強い弧を描いていた。
 
 しかし、空は暗い鉛色だ。
 幾層にも重なって、密度の濃い雲がたれこめている。

 たくさんの人がいる。
 秋葉原の総武線のプラットホームみたいだ。
 ある程度の秩序を保って列をつくり、入ってくる電車を待っているように見えるが、人々も一様に鉛色で、影法師のようだ。
 でも、なぜか向かい側にホームはなく、暗い空が広がり、そこに鮮やかな七色の帯が浮かんでいる。

 写真撮らなくちゃ。
 ああ、でも、すぐ後ろの部屋に、デジカメを置いてきちゃったんだっけ・・・。
 
 慌てて影法師の間を抜けて、カメラを取りに戻る。
 電池をチェックして、ホームに戻り、空を見上げると、虹が消えて行くところだった。
 不透明度100%の鉛色の雲が、あっという間に虹を呑み込んでいく。

 レリーズボタンを押すのと、虹の最後のひとかけらが消えるのが、殆ど同時だった。

 ・・・・・・・

 というのが、今朝の夢だった。

 ふむ、ホームの裏手に自分の部屋があるってことは、オレは駅長か? などと、自分の見た夢にツッコミを入れ、強烈な虹のイメージから逃れようとしてみたが、無駄だった。
 結局、午後も遅くなっても、虹は相変わらず居座っている。
 目蓋を閉じればくっきりと、目を見開いていても残像のように。

 ・・・・・・・

 『梯の立つ都市 永遠と冥府の花』 2001年(集英社)
 『光』 1995年(文芸春秋)
 『天池』 1999年(講談社)

 ここ一週間で単行本3冊を読んだ。
 作者は日野啓三という人だ。

 昔は当たり前のようにやっていたことだが、ここしばらくそんな読み方はしていなかった。
 こんな夢を見たのも、日野啓三の文章の影響かもしれない。

 特派員として、長くベトナムの戦地で取材した経歴を持ち、近年はガンを病み、再三にわたる手術・療養の中で執筆を続ける作者の文章は、硬質で透明で、描写はべらぼうに解像度の高い画像を見るように、しつこいほど繊細で、かつ、目がくらむほど鮮明だ。

 これだけ精緻な小説をひとことで括ってしまうのは乱暴な話だが、生きること、いのちの抱えている「荒涼」と、あらゆる種類の「闇」、そして、無であり全てでもある「光」を描いている作品群だと思う。
 特に、長編である『光』と『天池』には、「再生」というテーマが、声高でなく、あざとくもなく、低く静かに語られていく。

 ・・・・・・・

 本というのは不思議なものだ。
 まるで、本自体に意志があるように、読まれる時を選んでいるように思える。

 日野啓三の本は、3年ほど前、何気なく書店で手に取った上下2冊の短編集を買ったのが最初だったが、すぐに読むことはなく、カラーボックスの片隅に長らく並んでいたのだった。
 去年の夏、心身ともに解体寸前の状態で、新幹線の中で上巻を読み始め、シェルターのように保護してくれた友人宅のベッドの上で読み終えた。
 そのときはただ 「荒涼」のイメージだけが身に染みた。
 その後は、文字も読めない日々が続き、最近になってやっと下巻を読み終えたのだった。
 それから、少しずつ、他の作品も読んでみたいと思うようになり、昨夜遅く、『天池』の最後のページを閉じたとき、こんな声が聞こえたような気がした。

 「今、だったんだね」

 ・・・・・・・

 たしかに虹は出ていた。
 空は暗く、私にはまだ捉えられなかったけれど。



...

みんなびっち - 2001年07月04日(水)

 ユーゴスラヴィア代表の名前。

 監督も選手もほとんど「○△×□ビッチ」。

 


...

進路は南 - 2001年07月03日(火)

 7月だ。

 どうやら夏っていう高圧的、いや、高気圧的(?)なヤツが来るらしい。
 
 入道雲もくもく、お日様じりじり、陽炎ゆらゆら、蝉みんみん、である。

 季節の話題や暑さ寒さについて、表向きそれなりの応答はしているものの、相変わらずいまいちピンと来ていない。
 「そのうち何とかなるだろう」と思っているあいだに、四季が一巡したらしい。

 今のところ何ともなっちゃいないが、とりあえず腹は減るし、“眠い”という感覚を思い出しつつある。

 落とし前をつけるという意味では、「生死出づべき道」の課題レポートも提出できた。
 やっとこさスタート地点に戻ってきたという感じかもしれない。
 もう一度走り出せるかどうかはわからないとしても。
 
 明日はどっちだ?

 ・・・・・・・

 なんて、ちょっとジョー風にリキんでみたら、期末テストを明日に控えた娘の机にも「決意表明」が貼ってあった。

 ・・・・・・・

 おいおい、「どこに?」って、横にコンパスがあるじゃないか。

 はなげヨーソロー! 進路は南だ。

 学校の進路調査票に「南」って書いて、保護者印押しちゃうぞー。
 


...




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