えびたま

2013年03月23日(土) 「ときどき沼」の現場に

旧友と、そのご両親に会うために花巻に行って来た。
旧・大迫町。岩手出身だが、未体験ゾーンだ。

この未体験ゾーンというの、旧友が好んで使っていた言葉だった。
彼は今、山の中に眠っている。
最近やっと連絡をとる運びになったご両親に案内していただき
その近くまで行くことが出来た。

ご両親や、同行して下さった、旧友の大学の先輩の
お話をきくにつけ、
彼は決してわたしに弱音を吐かなかったことを思い出した。
弱音を吐くわたしに「気にするな、忘れてしまえ」と
励ましてくれたのを覚えている。
わたしが甘えていたから、彼はわたしには甘えられなかったのだろ。

「ときどき沼」という無国籍の作品がある。
人生の泥沼にはまった女が、旧友に再会することで
自分の今の状況を再確認し、そこから抜け出すきっかけになる。
かなり大雑把に言えば、そういうストーリーの話だ。

話のクライマックスは、山奥の沼地。
旧友の声に導かれて、自ら沼にハマる主人公の女。
助けを求める女に、旧友の声は「ごめんね、僕は助けられない」と言う。

わたしは、その頃すでにいなくなっていた彼に
「助けてくれ助けてくれ」と念じながら、この作品を作った。
彼は本当にその時、山の中にいたのだ。
あの話は、彼がわたしに作らせた作品だと信じている。
わたしが現実に助けを求めたとして、
きっと口にしたであろう彼の答えも、同じだったと思う。
あれが彼の別れの挨拶であったのだろう。

今は多分見守ってくれていると思う。
コアな居酒屋・あべひげのあべさんと一緒に、
無国籍の守り神になっているはずだ。
こうなってまで、甘えてすまん。


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