オミズの花道
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『 特攻隊のハナシ 』
2005年03月26日(土)


これ読んでみて、と渡された漫画雑誌。
読んでみたが・・・・絶句の一言である。

有名なお水漫画『女帝』は読んだ事があって、それでもちょっとその無理な設定と展開に苦笑いしていたのだが、今回のこれは本当に酷い。酷すぎる。

ヘルプで入ってお姉さんに言われてお客様とエッチしまくり、なんていう感じの。
この業界に年を食ってヘルプで入るとこんな目に合うのよ、みたいな。

あるかよ、こんなの。
もう救いようがないなぁ。

何でお姉さんに言われて性交渉せねばならぬ。
何でヘルプを売り飛ばす売り上げが居る?
まあ、でも・・・・こんなのが実しやかに描かれてしまう業界なのだね、所詮は。



色々と質問を戴いたのだが、その中でもやはり色に関する質問は多く、皆様やはり気になるのだなと改めて思った。

『そりゃ結構な金額を落としているのだから、時として手っ取り早くやらしてくれないかなと思うよ。この際、目当ての子じゃなくて特攻隊でもいいなと思っちゃうしね。』
なんて考えている男性は多いようだ。


水商売は飛び石だけど長いから色々な女の子を見ているけど、あからさまな特攻隊というのを私は見た事が無い。
居ても気づかないだけだという説もある。

老舗のクラブに勤めたときに、大ママが『昔は伝票に“お車代”として加算して、その子に後から渡したもんだけど。』って言ってたが。

大ママが言うには女の子の方から申し出がある場合が多かったそうだ。
相当な狸ババアだったから本当かどうかは解らないが、昔は生活が苦しい子が多かったので、そういう申し出も割りと頻繁にあったのだという。

それにしてもお車代ってなに(笑)。乗るから?乗るから?


だが、酔うと無防備になるというか、開放的になる女性は何人か見てきた。
というか、ずっと見続けている。

これだけ女性が集まるとどこでもそうなのか、店舗をどれだけ移っても、庶民店だろうが高級店だろうが、必ず無防備な女性は何人か居て、どう見ても危険なアフターにあからさまに行く子がいる。

別に人の事はどうでもいいからいいんだけど、そういうのに付け込むお客様に限ってこなれてなく、次回来店のときに『内緒だよ』とか言いながら、私を相手に赤裸々に語って下さるのだ。

別にその話をされたからってその子に態度を変える事はしないから聞いてもいいんだけど、何だか女の子よりその男性の方が馬鹿に見えてきて虚しくなる時がある。

何と言うのだろう、この業界というのは前述のような実しやかで描かれてしまう部分があるから、女性はこの世間の認識度を逆手に取り、曖昧なまま開き直れる部分もあるのだが、男性は飲みに来ててもあくまで昼間の顔が捨てられないから、『昼間はそこそこの人なのにみっともない。』と思われてしまうのだ。


よく若いヘルプさんが『水上さん〜あのお客さん、お席で私とやったって嘘を言うんです!この間アフターをドタキャンしたから!』と私に泣きついてくる。
覗き見趣味や野次馬根性の薄い私には、やったかやらなかったか、そんな真実などどうでもいい。

『早くて短くて小さくて全然物足りなかったですね♪・・・・って言ってやれば?そうしたら慌てて「お前とはやってない」って向こうの方から嘘だって言ってくれるわよ。男の人ってモノの大きさに異常にこだわって執着してるから、それが一番効果があるわい。』

そうアドバイスして、更に『この商売をしている以上、変な噂を流されても仕方が無いよ。貴女みたいにあからさまに席でそう言われても仕方が無いの。この商売のそこがどうしても嫌なら、もう辞めた方がいい。辞めたくないなら、頭を使って上手く切り返すこと。』そう告げる。
(経験上、この方法で自分から『嘘でした』と言わないお客様は居ませんでした。男性はなにかと大変ですな。)


やったやられた、でダメージを食らうのは昼間の社会においてであり、この業界はあまり関係ない。
そういうことを面白おかしく騒ぎ立てるのは、この世界でも素人の仕事しか出来ない人だからである。

別に現場に踏み込んで見てきた訳じゃないのに馬鹿じゃなかろうかと、ホステスや黒服の話に付き合わされた私は心の中でよく思ったものだ。
・・・・なんかもう、どうでもいいからそれ。


私は若い頃から御姉様方に可愛がられて来たから、アフターなどに一人で行くことは皆無であった。
そういう細かい事を振り返ると、あの時の自分はとても大事にされていたのだな、と改めて思う。

それどころか一緒にアフターに行っても、御姉様方は必ず私を家に送り届け、マンションのドアを開けて灯りが付くまで、タクシーの中から私を見守っていてくれた。
別に怖い思いをした事が無いのは、御姉様方のお陰だったなと今更ながらに感謝するのだ。


あの時代と違って今はそこが難しいのかなとも感じる。
どこまで手を差し伸べればいいのか解らなくなる時が多い。

その問題の根底は恐らく昔とは若干異なる雇用システムにあるのだろう。
この土壌が『特攻隊』にならざるを得ない女性を産むのかも知れない。

次回はその辺りに触れて書けたらなと思う。



ああ・・・・何だかますますタブーな話題に突入しそう。





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『 同伴ゴハンの落とし穴 』
2005年03月25日(金)


ちょっと用事があったので、久々に谷町線とやらに乗った。
昔はよく乗ったのだが。

JR天王寺の地下を通って地下鉄の駅に向かったのだけれど、阿倍野センタービルの地下ってちょっと面白いかも。
谷町線天王寺の駅近辺には、うちの近所の店も出店している。
ひゃ〜そうなんだ〜。何となく凄いなと思ってしまう。

人間の行動範囲って限られてるなあ・・・・。
通勤のみに動くと、こんな身近な発見さえ無いのだもの。


北新地に通ってはいるものの、梅田界隈を殆ど散策した事は無い。
人込みが苦手なのもあるし、開放感の無い蜘蛛の巣のような地下街の道を歩いていると、妙に疲れるからだ。
少々不便でも地上に出て狭い空の下を歩く。

ご飯物の雑文を扱っていた時はよく梅田界隈をウロウロした(させられた?)ものだが、最近はお客様とのご飯も新地の中が多くて他所に行く事は余り無い。


新地に勤めてて言うのも何だが、新地の中のご飯やさんは値段と物が釣り合わなくて、料理の『物』としては余り好きじゃない。
確かに美味しいのだが、同じ値段を出せば他所ならもっとグレードが高い、そう思うとついつい、申し訳無いなという遠慮がドッシリ圧し掛かってきて、美味しさから減点現象が起こってしまうのだ。

特に私は魚の美味しい地域で思春期を過ごしたので、新地の寿司や割烹の魚の状態には辟易してしまう。
鮮度にこだわり過ぎて仕事を疎かにするのは、都会の方が多いのかなとさえ感じるのだ。
・・・・それでは料理屋の意味が無い。


それに同伴ご飯は少々飽きてくる。(ああ顰蹙コメント。)
ここ何ヶ月、家でご飯を食べる事は殆ど無く、お客様と新地でご飯を戴いているのだが、そうなるとお客様の好みも偏ってくるし、重なる事が多いので、パターンが出来上がってくるのだ。

特に冬は河豚責めプレイかと思うくらい河豚が重なって、白菜以外の野菜を食べず、また雑炊ばかりで4日間白いお茶碗ご飯を口にしなかった、そんな事があった。
私は意外と関東のお客様が多く、どうしても大阪の冬なら河豚となるらしい。

それだけでなく寿司は寿司で重なるし、肉は肉で重なるし、イタリアンはイタリアンで重なる。
これが食べたいと言えるお相手ならばいいのだが、そういうお客様じゃなかったりすると3日間連続でgigiに通う事になったりするのだ。(何故だかgigiに行きたがるお客様は多い。)

去年同じような状態になり体調を崩した事があるので、私は私なりに家で調整していたのだが(要するに食べない)、移りたての頃は誰にも同伴を振れず、毎日毎日自分がお食事に行っていた。
変な話、実働日数より同伴回数の方が多かったくらいだ。(これをすると色々な意味で危険だからしたくない。自分の首が絞まる。)
現在の体調もそのせいかあまり良いとは言えない。


だが新地の店に行くとそのサービスの徹底さには感心する。
シケた店でも(失礼)彼等のお客様への対応は良く、ああこの値段はサービス料金なんだなと納得するのだ。

何店舗もある『おらんく鮨』でも、どこの店舗に行っても大して味などに差は無いのだが、本通りの四ツ橋寄りの女性店長の居る所に行ってしまう。
ここの女性店長は素晴らしい。ソツが無く機転が利いていてお勧め上手。まさにプロ。


これは昼間の仕事で出会った新地の中にあるあるチェーン店の偉いさんにお伺いしたのだが、チェーン店でも北新地に回される子は『出来る子』なのだそうだ。
手早く丁寧で正確が基本、尚且つ打たれ強い(笑)人間で無いと勤まらないのだとか。

・・・・そうだねえ、たまに本当にキッツイお姉さん居るからねえ。
年末なんか特に殺伐としてるよねえ。


え、誰ですか。キッツイお姉さんが水上だと思ってる方は。
私がキツイのは黒服連中相手の時だけですよ。



あ〜。
そう言えば昨日も怒っちゃったな・・・・。

イカンイカン。





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『 タオルを投げろ! 』
2005年03月24日(木)


モラルは無いが仁義は通す水上です。
おはようございます。


さて、先日の日記で『せっかくお店に来てくれるって言ったのに、向こうが折れてくれてるのに、何故水上は怒っているのか?何故自らゴングを打ち鳴らすのか?』そう思った方もおられるでしょう。

・・・・私にしてみれば、折れてなどいらんのです。

断って他所に行っていた方が、まだオッサンも救いようがあります。
そこで突っぱねていてくれれば『惜しい事をした』といつか私も思うかも知れません。

私の目の届く範囲で不様な行動をお客様が取るのはホステスとして許せないのです。
いやいやただ単に視界に入るなって感じ。あああ上手く言えません。だう。


長年この商売をしておりますとお客様にもパターンがある事に気が付きます。

こういう風に取っ掛りで『口座を変えろ』とか発言するお客様の場合、私がまず思う事は『ああ、このお客様とは長い付き合いは出来ないな。』と思う事です。

自分はどういう流れでこの店に来たか、誰に連れて来てもらったか、その人の顔を潰さない為にどう飲めばいいか、それを考えられない人は『縁』を大切に出来ない人であり、縁を大事にしない人とは所詮長いお付き合いが出来ないからです。


ホステスがお客様を値踏みする瞬間は、身なりや言動では無く、こういう立ち居振る舞いが見えた時に多いでしょう。

そういう意味で井上さんは私の中で使い捨て、のお客様でした。

こちら側がそう言ってしまうのは傲慢かも知れませんが、あちらはそれを覚悟の上でこういう発言や行動をなさっているのでしょうから、私が善意を持って彼に心を広く持つ必要なんてこれっぽっちも無い筈です。


かと言ってこのご時世、そうそう好き嫌いも出来ませんから、そういうお客様でもある程度の我慢はし、もてなしはキッチリと致します。

けれどもこの不景気をカサに、ラインを超える事を『当たり前』だとするならば、超える方もこちらに噛み付かれるのを覚悟の上でなさって欲しいものです。

ましてやその理由が女の子を口説き落としたい為のええ格好しいだとは、真っ当に対処するだけ馬鹿馬鹿しくなる。
落ちなきゃ来ないぞ、とか、口説かれなきゃどうだとか、経費使って言う事じゃございませんね。

女性社長が接待でホストクラブを使い、自分とヤラなきゃもう来ないぞ、ってホスト君に言ってるようなものでしょう?
そういう女性を男性諸氏はどう思いますかね?

ちょっと脱線してしまいましたが。


そういうイヤな行動をカマしてくるお客様に対しては、水上の場合、目には目をです。(行動がハムラビ法典)
汚かろうが他力本願であろうが、禁じ手封じ手でヘコまさないと気が済みませんな。


さて、当日。
人数は少々減ったものの、井上さんは9時くらいにご来店なさいました。
入り口でお迎えしたときは、いきり立って鼻の穴が膨らんでいるくらいお元気だったのですが、席に付こうとするなり、あるお顔を見つけてギックリ。

そう、新幹線で通って下さる社長が、どでんと奥の上座席に座っているのです。
この方、井上さんの会社の社長と長年の友人であり、この日井上さんが連れてきたメンバー殆どと顔馴染み。
皆様大学が同じで何名様かは同期。しかも同じ業界。
社長のお連れ様は業界でも名だたる、井上さんの会社の上得意ばかり。

社長のお顔を見つけて、井上さんのお連れ様皆様は乾杯もそこそこに、社長とお連れ様に挨拶しに行かれます。
彼等にとってこんなチャンスは滅多に無いですからね。



私がいらっしゃいませ、と井上さんに挨拶しに行くとやはり憮然とした顔。
そりゃ面白くないでしょうなあ。うくく。


井上・『お前、わざとやな?』

水上・『あら、偶然ですよ。社長はあんなに遠いところに住んでおられるのに。
    私如きが来てって行っても来て頂ける訳無いじゃないですか。
    今日はたまたま上海からの帰りなんです。
    和食を付き合ってくれと仰るので、滑り込みで料亭に行って来ました。
    美味しかったわあ♪』


井上・『お前、あの社長の女やろ。』

水上・『(出た出た。頭の悪いカマし方やのう、と思いつつ。)
    違いますよ〜どちらかと言うと私は社長の奥様の隠密と言いますかね、
    うちのお父さんが悪い事せんように見張っといてね。
    ・・・・と奥様に言われてまして。
    お蔭様で、うちならお墨付きなのでバンバン飲んで戴いております。』


と、ここで社長がシャンパンを抜き、井上さんの席に出すように言って来た。
この方は節約家で有名で、普段はこういう事はなさらないのだが、いざという席にはこういう風に惜しみなく散財する。
昔からの金持ちならではのお金の使い方だ。


(↓以下太文字が水上の嫌味)

水上・『社長はねえ、お見事なくらい飲み方の綺麗な方なんですよ。
    こうやって皆様にお会いできたお祝いのシャンパンを抜いて、
    誰あろう私に華を持たせてくれるんです。
    (華っちゅうのはこういう風に持たせるんじゃ、オヤジ。)
    
    男の飲み方、と申しましょうかね・・・・口説きは口説き、酒は酒です。
    社長も男ですから最初は私に色気をお持ちだったかも知れませんが、
    最初のお付き合いから今の今まで、
    それを盾にとることは一度も御座いませんでしたね。』

私がそう言い終わるか終わらないかのうちに、社長が通りがかり私と井上さんに声をかけてきた。
井上さんは立ち上がり、社長に握手を求めへコヘコしている。
私に二重三重の嫌味を言われた後だ。さぞかしムカムカしているだろう。



井上・『社長、今度また飲みに行きましょう、席を設けますので。』

社長・『ああ、ありがとう。だけど新地ならここにして下さいね。
    もう僕はこの子(水上のことです。)の所じゃないと寛げなくてねぇ。』

井上・『はあ・・・・。そうですか・・・・。(大人気ないオヤジだ。)』


社長が離れるとオヤジはブツブツ言い出す。
『この間電話したときは新地では飲まない、と言っていたのに。』と。

そうなのだ。
姑息にもこのオヤジは水上が本当にこの社長の贔屓なのかどうか確かめる為に、来店してすぐ社長に電話していた。

社長は馬鹿では無いし人を雇うのが仕事なのだから、私の性格も井上さんの性格も重々把握されている。
つまり、当事者の私や井上さんよりもこの社長の方が、私達二人の性格が合わない事を読んでおられたのだろう、井上さんの電話を受けてすぐ、社長は私に電話をくれた(笑)。


社長の『大丈夫ですか?』の問いに、『大丈夫ですよ〜私も大人ですから。』と答えておいたが、社長とはもう長い付き合いだから何となく解っていたのだろう。
何かあったらすぐ電話しなさいよ、と言われ、その時は何も言わずに電話を切った。

遠まわしに人の足元を掬おうとするオッサンのやり方にムカムカしながら。


水上・『社長くらいの方になると祇園や銀座や新地の何処で飲んでいるとか、
    そういう無用心さは持たないようにされてるんでしょうね。

    男性は元から自分の行動範囲を把握されるのは嫌でしょうし、
    飲み屋での事なんて、
    男の世界から言わすと取るに足らない事ですしね。
    たかが飲み屋、と昔から申しますでしょう。

一呼吸置いて更に私は続ける。

『ですけどねえ、同じように昔からされど飲み屋と申しまして。

 特に北新地は“新地村”と言われるほど狭い世界ですから、
 自然とあちこちの企業の殿方の噂は聞こえて来ますねぇ。
 繋げて行くと業界が繋がったり奇妙な事は日常茶飯事です。
 
 自分でも時にホステスという仕事が恐ろしくなる時があります。
 男性を貶めようとすればいつでも出来てしまいますからね。
 自分の良心で日々それを押さえてるだけですわ。
 
 貶める為に流した物、その噂の真実がどうであれ、
 男の世界では足を引っ張る為の立派な材料に、
 仕立て上げられますでしょう?
 
 そういうお話って、皆様結構お好きですしねえ。
 怖いですねぇ♪(←思いっきり無邪気に言ってみる)』
    

井上さんは『はあ・・・・。』とため息をついて、張り無い声で一言こう言った。

『怖いなあ、なおちゃん・・・・ワシの変な話は流さんとってな?』



カンカンカンカン!
タオルが投げられたと共に、爽快に鳴り響くゴング!!



オマエ→なおちゃんに呼び名まで変わったぞ!
もう完全にギブであ〜る!



すかさず、水上は答える。

『まあまあ、何をおっしゃいますやら。
 井上様のような素晴らしいお客様に、そんな事と〜っても出来ませんわ。
 そんな発想、ノミの頭ほども御座いません。(まだ言うか、このオンナは。)』


井上さんは、帰り際に現金で何十万もの札束で支払いを済ませながら、私に何かと話しかける。
今度は社長と一緒に来るね、と・・・・無理に作り笑いしながら。



あれから一ヶ月。
今では彼も大人しく来て、大人しく帰る。
と〜っても紳士的に好意的に飲んで下さっている。
女の子にも無理な口説きは無いし、嫌味も言わない。回数も減らない。


勿論、水上はまだまだ彼を信用していない。

ゆえにあと5年は現金払いで通す。
ううん、きっと最後まで現金払いで通す。
執行猶予など与えません。実刑実刑。


あ、確か社長から聞いたけれど、井上さんは今年か来年で定年だったな。
5年も必要ないか。つまんな〜い。

・・・・それでも現金払い。
ず〜っとずぅ〜〜〜〜っと現金払い。


相手がタオルをリングに投げても、ギブアップしても、ドクターストップがかかっても、担架で運ばれても、

タオルをキチンと畳んでお持ち帰りして、洗濯して綺麗にして、リングの掃除をして観客席を片付け、会場のライトを落すまでは許さない。




ああ、私のお客様になるって可哀想・・・・。





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『 飲み方を弁えない客・その2 』
2005年03月23日(水)


さて昨日の続きである。

井上さんはその後もなんやかんやと沙理ちゃんに絡みながら、何度か来店していた。
その間もグチグチ何やら言っていたらしいが、私としては直に喧嘩を売られる訳でもないので、席に少々の時間だけ付いたり、遠巻きの嫌味も相手にしなかった。



沙理ちゃんは良く出来たヘルプさんで、ある程度の段階までは自分で考え、より良い選択をしてくれる。

今回も彼女は、付かず離れずで井上さんを引っ張ってくれているのだろう、定期的に井上さんは来店していた。
それを沙理ちゃんは私に恩着せるのではなく、当たり前の事として、お仕事として考えていてくれた。
本当に数少ない貴重な子だ。


彼女は、私の言葉やお客様の言葉をストレートに伝えるのではなく、その言葉の裏に何があるか読んで、自分の言葉で喋る。

つまりそれは彼女が頭が良く、聞き手の気持ちになれる思いやりがあり、キチンと責任を取るつもりで発言をし、事に当たれるタイプだということになる。
昼間の社会でも彼女のような子に当たる事は少ないだろう。


この世界は美人で当たり前。
この街に居る半数が、彼女のように美貌を持ち知恵を持ち、尚且つおっちゃんキラーである。(昼間のお顔の責任は持てませ〜ん)

大切なのは彼女のように「美貌は当たり前、じゃあ次は努力!」・・・・そう考えれる事が大事なのだ。
美貌に甘えて自分を磨かない人間は、単発になるか上に行けないまま終わる。

野心を持つ持たないではなく、お金を落す値打ちのある女性になるかどうか。
そこなのだ。



沙理ちゃんはそういう意味で完璧であった。
私が何も言わずとも集客の努力は怠らないし、たいして私とコミュニケーションを取らずとも回っていたのである。

だが、ある日の事である。
沙理ちゃんが私に相談をして来た。


沙理 『水上さん、
    ○日に井上様が15名様で予約をしたいとおっしゃってるんですが。』

水上 『うん、時間は?席の希望とかはある?』


沙理 『それがですね、
人数を連れて行くからディスカウントしてって仰ってるんです。』
水上 『・・・・ふ〜ん。で、何て返事したの?』


沙理 『一応聞いてみます、と返答しておきました。
    値引きしてくれないなら他所へ行く、と仰ってますが・・・・。
    どうお返事したらいいですか?』

・・・・まったくしょうがねえオヤジだな。
こめかみに怒りの青筋が浮かぶのを押さえながら、私は沙理ちゃんに告げた。



水上 『ディスカウントは一切しません。
その代わり、私からシャンパンをおごります。
    それ以外は、ボトルが空けばボトルも戴きますし、
出ればビールも戴きます。
    これで飲んで戴けない様なら、
構いませんのでキッパリお断りして下さい。』

沙理 『えっ。断っちゃって・・・・いいんですか?』

不可解な表情で私に問いかける沙理ちゃん。
ああ・・・・純情で大好き。


水上・『あの人、口説きがキツイでしょう?』
沙理・『あ・・・・はい。』

言いにくそうに沙理ちゃんは答える。


沙理・『実は、今回も・・・・、
    “それだけの人数を連れて行ってお前に華を持たすんだから、
その事を良く考えろ”
    って言われてまして・・・・。』

水上・『だったら尚更ディスカウントはしません。
どうぞ他所に行って戴いて結構。
    井上さんには私がそう言ってたって、ストレートに言ってくれていいから。』

まだ不可解な顔をしている沙里ちゃん。
まあ・・・・無理も無いなあ。


水上・『あのね、沙理ちゃん。
    あの人は貴女を気に入って口説いているんでしょう?

    私が男なら“自分の好きな女の居る店で”“値切る”なんてしません。
    みっともなくて出来ません。

    それなら何の目的も無い、好きな子の居ない店に価格交渉します。』


更に私は続ける。


『経費をカサに着て安上がりに女を口説こうなんざ、言語道断です。

 貴女ももっと自分に値打ちを付けなさい。
 “私は値引きされるような女なんですか?”って聞いてごらん。
 
 あのオッサンは貴女だけじゃなく、私の事もナメてる。
 それが私には気に入らない。
 
 あの人が本当に経費が苦しくて、
 沙理ちゃんへの色気抜きで今回の接待を考えるなら、
 私も喜んで価格交渉に応じたでしょう。

 私は女の子を売り飛ばすような真似はしないし、
 貴女もディスカウントされるような女の子じゃない。
 
 それが解らないようなら、
 私の客で居る値打ちなど、向こうにこそ無い。』
 
 
沙理ちゃんは大きな目を丸々と見開き、なるほどと頷いた。

『そう・・・・ですよね。ああ、いま考えると悔しいです。
 呼ばなきゃいけないってのを逆手に取られてたんですね。』

そうそう。最初が肝心なのよ、こういうのは。


要するにオッサンの考えとしては、人数も人数だし私達は断らないだろう、断れないだろう、・・・と思っていたのだろう。
その『断れない』に付け込んで、浅ましくも自分の都合のいいように事を運ぼうとしてきた訳だ。


私にとってのデットラインはこういう行為であって、口説かれるとか絡まれるとかトラブルとか諍いとかは、あまりデットラインではない。
(酒商売である以上、それは特色と捉えている。)

だがこういう、人をナメたというか、人を人とも思わない行為が一番許せない。
そしてこれに乗り、折れるという事は、己も相手と同じく人をナメ、その人の人格を無視する事になるのだ。
そんなのまっぴらゴメンだね。



さて、それから沙理ちゃんは前述のような内容を伝え、返事を待った。

オッサンは折れた。
百均に売っている傘より脆く折れた。
ディスカウント無しで、そちらに行くと言う。


それがまた水上の怒りに油を注ぐのである。
オッサン。余りにもみっともなさ過ぎである。


こうなったら、飲み方を知らないオッサンに一片の情も必要ない。
キッチリ躾けて差し上げましょう。


私は木槌を引ったくり、第3ラウンドのゴングを自ら鳴らした。
嬉々として鳴らした。






・・・・そういう訳で、この続編はまた後日。





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『 飲み方を弁えないお客様 』
2005年03月22日(火)


3連休だったのに。
さあ遊ぶぞと思ったが取り合えず原稿を片付けねばいけなかった。
うにゅにゅ。

うああん。まだ片付かないよぅ・・・・。


にゃんこはめきめき大きくなってます。
もともと成猫は6〜7キロの個体になるそうで。
10キロも珍しく無いんだとか。
うお。

今、ぐんにゃりしてぐるぐる言って膝の上に居ます。
まだ2ヶ月なのですが、もう1キロあるのってどうなんだろう。

キャットフードはアイムス子猫用、その他にササミをゆがいたり、軟骨を柔らかくしてあげたり、成長に良さそうなものをあげています。

夜は必ず一緒に寝ていたりして。
立派な三段ケージを買ったのに、昼間とお料理の最中、出かけるときにしか使わなかったりしますが、縦運動の好きな品種らしいので、まあそれなりに役に立ってます。
キャットタワーも物色中。



オミズの方は、飲みなれてないお客様に久々に会ったので面白かった。
これはちょっと書いておきたいなと思う。

この方、よく私の日記に出てくる『新幹線で通ってくれる奥様ぐるみのお客様』の枝の枝、という関係になる。
仮名で井上さん、としておこう。

いわゆるメーカーさんの支社長というポジションで、経費もそこそこ持っている。
まあ私にしたら良いお客様なのだが、何しろ取っ掛りが悪かった。
その取っ掛りとは・・・・最初枝客と一緒に井上さんが来られた時に、これでもかと美人をはべらせ、文句無く接待を完了したのだ。
勿論、掴むためである。

だが美人をはべらせたのが逆に災いして、その中の一人に井上さんは入れ込んでしまい、なんとその子に自分の口座を移動しろ、とか抜かしてきやがったのである。

お客様の意向がどうであれ、私の意向がどうであれ、口座の移動は夜の業界では通らない話。
今更こんな事を言う人がまだ居るのかと苦笑したが一蹴した水上である。


もともと終身口座制度(なんじゃそら)というものが水商売にはある。
Cという店において、Aという女性の顧客のBさんは、Aがその店を辞めない限り彼女の口座である。
Aが店を辞めて、BさんがC店にそれでも来店した時、初めて口座の移動が発生するのだ。(簡単に言うとこんな感じです。)

私自身、この口座制度とやらは首を傾げてしまうのだが、システムはシステムなのだから致し方ない。
そもそもこれは店側に言わせると、売り上げの数字の把握と、金銭の責任をクリアにする都合の良さなのだろう。
が、女の子同士で要らぬトラブルや、他口座席で手を抜く、そんな煩わしい事の原因にもなるので、私自身はそういう意味であまり必要性を感じない。
まあ、この話はまたおいおい書くとして・・・・。


それでこの井上さん、一蹴した事でむくれてしまった。
私に向かって根性が悪いだの、何だのと言ってきた。当たってるけどね。

だがここで一番気を使い遠慮したのは、井上さんに気に入られてしまった美人の沙理ちゃんである。
彼女は20歳のバイトさんで、口座持ちじゃない。

彼女にしてみれば『オッサン、余計なトラブル起こさんとって〜な。』であろう。
オネエサンに睨まれて(睨まないけど)困るのは自分なのだし。

いつも井上さんが帰るたび、
『水上さん、ごめんなさい・・・・。私本当に要らないんです。』
と泣きそうになっていた。
気にせんでええっちゅうねん。


さて、私自身の感はと言うと、彼女が口座持ちなら譲ったろうと思う。
少々売り上げが変わったとしても、それくらいなら差し障りはない。
つまりそれほど数字的にはショボかったのである。

彼女が売り上げなら、リスクと共にそれなりの報酬がある。
だから、他人から貰ってでも口座を増やす値打ちもある。
だがヘルプである以上、どれほど集客力があっても日給が変わる訳ではない。

むしろ私が安易に口座を分け与えるならば、その行為は逆に彼女の首を絞める事になりかねないのだ。
日給は据え置きなのにリスクだけを背負わす訳にはいかない。

だが井上さんはあまりにもしつこく私に交渉して来るので、こちらとしても釘を刺さざるを得なかった。


『口座の移動は出来ませんよ。
 大体そんな手段で女の子を物にしようだなんて。
 逆に嫌われちゃいますよ。
 応援してあげるなら次の段階(店)でしてあげるべきです。
 井上さん、お忘れですか?
 ここに貴方を連れてこられたのは○○の社長です。
 あの方は○○の社長(新幹線)の枝なんですよ。
 つまり、私にとってメインはその方なんです。
 男同士で、また同じ業界で、
 あまり悪い話になるような事はどうなんでしょうね?』と告げた。

平たく言うと、
『せっこい口説き方してどないするんじゃ、オッサン。
 大体たかが支社長のクセしやがって、(定年間近)
 大もとの社長、アンタの所の社長と友人の、
 その人お気に入りの私にナニ抜かしとんねん。
 チクッたるぞウラウラ。』

ですかね。


性格悪いですね水上。
相変わらずです。

だけどねえ、私にしたら定年間近の某メーカーの、ある程度のポジションの男性が、こんなみっともない行動を取る事自体がもう、オミズの限界を超えてたんですな。
すいませ〜ん。我慢出来ませんでした。

井上さんは『融通の利かん。』とかブツブツ言ってましたが、その日はそのままお帰りになりました。


この方、これで大人しくなった訳ではございません。
水上の頭の中では、何故か第2ラウンドのゴングが鳴ってましたので、そんな予感はありましたが。

長くなりますのでその話はまた次回に。





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『 どうしたら未収を食らわずに済むか 』
2005年03月18日(金)


先日の日記で夜の業界のちょい詳しい内情を書いたら、何だかんだとリクエストを戴いた。
飲みに行かれてる方から、もしくは駆け出しの同業者さんから、店を割り出そうと詳しく聞いてくる人やら(笑)、この業界の女性に恋をしている人やら、様々に。

でも皆様に共通で言われてしまった事は、『最近本当の意味で「日記」になってて、聞きたい事が聞きにくかった。』とのコメントでした。
うん、ごめん。書きたくない時期もあるんで。ごめんね。
これから少しずつ書けたらなと思っているので勘弁してください。


さて今回はそのひとつ、未収問題である。

いい加減で適当な性格が売りの水上と言えど、お金のこと(だけ)はキッチリしていて、今までお客様に飲み代を踏み倒された事は一回も無い。
つまり、未収ゼロである。
土が付いた事は一度も無いのだ。

勿論その月の流れ、もしくはその会社の締め日によって多少ずれ込む事はあるが、それでもせいぜい一週間伸びるだけで、立替期間も2〜3日で済む。
そうなると実質、自分のお給料から引かれるなどの作業は無くて、店の閉め日から給料までの10日間の間に、大概の事は片付いてしまう。

自分で言うのも何だが、月の請求が何百万ものこの世界で『未収ゼロ』は奇跡に近いと思う。
ミナミは現金やカードが殆どなので、未収額も『何十万』かで済むのだが、接待の主な北新地では食らう未収の額も半端では無い。
よく『ホステスがン百万を回収できずに飛んだ』そんな話を聞くが、そのン百万の未収金を作るのに2週間もあれば充分な街なのだ。

よくもまあ私のような単細胞が、今まで無傷で渡って来れたものだと思う。
確かにこの仕事は一見華やかで収入も少々は高い。稼ぐ気になればとことん稼げる仕事であろう。
だけどハイリスク・ハイリターン、そう呼ばれるのは、何も色気の問題だけでは無く、この未収金問題によってそう呼ばれるところが大きい。
私の周りには居ないし、都市伝説と同じレベルの聞に過ぎないが、未収を立替出来ずに風俗に職変えする女性も居ると聞く。(本当かどうか解らないが。)

私とていつ未収を食らって借金を背負わねばならないかも知れないから、あまり大きな事は言えないが、同業者から一番多かったこの未収問題の質問を、最初に取り上げてみようと思う。
本当なら未収サバイバー・・・・って言ったらいいの?そういう人の話の方が参考になるんだろうけど。


まず、一番大事なのは荒稼ぎしないこと。
店のシステムに踊らされて、もしくはお客様に持ち上げられて、無理に飲まさない事である。

私のやり方は地道で効率の悪い方法だから、最初は実にならなくて焦燥感に捉われる事もあるが、ハイリスク・ハイリターンの世界において必ず勝つには、これが一番の手段なのである。


具体的に言えば、

1)口説きのお客様は絶対に現金払いにすること。

私のようなイカツイ(お客様弁)ホステスでも(たまには)口説くお客様はおられて、口説きに乗らないと来ないぞとか飛ぶぞとか、そんな脅しをかけられる事もままある。
そういうお客様は、最初から最後まで口説きがかかっている間中、キッチリ現金やカードで『しか』飲まさないようにするのだ。
これならばいつ切っても切られてもなんら不自由は無い。

口説きに乗らなくて『付き合ってくれなきゃもう来ないぞ。』と脅されても『やだ〜そうなんですか〜しょうがないですね〜。』と山口萌ちゃんみたいに鼻から声を抜き、惚けていればそれでいい。後はどうぞ勝手に飛びやがれ、ってなもんですな。

だいたい『落ちなきゃ来ないぞ』なんて恐喝するような奴と本当に付き合ったって、長くは続かないんだから付き合うだけ損だ。
遊び慣れてねぇな。まったく。ぼやきです。ごめんなさい。


2)メイン客の枝とはいえ、むやみにツケにしないこと。

これはメインのお客様との関係を守る為だ。
枝のお客様が未収をしたとしても、メイン客が立て替えてくれる訳でもないし、言っても気まずくなるだけだし、そんな事で今まで積み重ねてきた信頼を崩してはいけない。

私はふらっと枝客が来ても、初回〜三回目は必ず現金で飲んで貰い、その間に会社訪問などをして、その人の会社での仕事ぶりや、扱いなどの社会的背景を探るようにし、請求書で飲める人かどうかを判断するようにしている。


3)請求書のつまらないミスは絶対にしないこと。

実はこのトラブルも多い。
皆様少ない経費を調節して来てくださるのだから、明らかに先方の経理に迷惑をかけるような、不自然な請求書を送ると支払いにストップがかかる事がある。

水商売にありがちな『いかにも架空の伝票』を出すのではなく、ウーロン茶の1本、おつまみに至るまで気を配り、口座であればチェックしなくてはならない。

実は最近の水上、お店に出ても自分は経理じゃないのかと思うほどレジの傍に居る事が多い。
伝票には必ず目を通し、その都度レジのお姉さんに指示を出している。

昼間の会社でもつまらないミスは沢山あるのだから、二重三重にチェックして出来るだけつまらないミスを減らす努力は怠らないようにしなければならないのだ。

大きい会社は大きいだけに融通が効かず、伝票の不備で差し戻しになると翌月締めに繰り越され、お客様にも余計な時間を取らせてしまうし、こちらも「本来ならばしなくてもいい立替」をしなければいけなくなる。
自分が困るから支払いを早くして下さい、はホステスの勝手な言い分で『だったら最初からキチンとした物を送れ』と言われても仕方が無い。

もっと怖いのは、その時にはキチンと払ってもらっても、『行くに相応しくない店』と判断され、企業のブラックリストに乗ってしまう場合がある。
これが一番厄介で、いくらお客様が来たくても『経費が使えなくなるから来れない』という結果になるのだ。

いや〜、正直言うとこれが一番怖くて嫌な問題ですね。
まだ色恋の方が防ぎようがあります。


4)売り上げノルマに振り回されないこと。

これぞホステスのジレンマ。
これから逃れる確実な手段はありません。

だけど、この辺が私の一番いい加減なところなんですがね、イチローだって3〜4割バッターなんですよ。あの偉大な選手でも。
確率とか数字とか成績ってのは、そういうものなんじゃないですか?

そりゃあ今は水上も調子はいいですが、いつかはクタりますって。クタらなきゃ嘘でっせ、奥さん。
でもね、ノルマに振り回されて焦って飲ませて未収倒れなんて、稼ぎたいのか借金したいのか、いったい何をしたいのか解らなくなるでしょう?

自分が借金を抱える理由がノルマ、それっておかしくないですか?
私の場合、そう思ってのんびり構えてるようにしてます。そうすると不思議と回っていくものなんですね。
多分、ギスギス感が消えてお客様の方が私に構いたくなるんでしょう。(男の人って面白いね。)

これに関しては沈む女性を何人も見ていますが、ノルマまであと○万円だからドンペリ開けて貰おう!とか、そういう無理をしちゃってたり、女性同士の競争心を煽られて妙に張り合ったり、そういうののツケが後から回って来たりしてるんですね。
そういう第三者が(店ね)介在した頑張り方って、どうなんでしょうかと思ってしまいます。

私だって数字が足りないときは焦りますが、その時に心がけているのは、この方なら信頼出来る!と思う人に『しか』甘えないようにするんです。
そして調子の良い時にキチンとお返しする。
こういうのは考えると全然儲かりませんが、致し方ないですな。


多分、私は良いタイミングでクラブ復帰したのだと思います。
復帰したのが不景気の初めならば、ボコボコ大きい企業が倒産!の煽りを食らっていたでしょうし、またスナック→ミニクラブ→クラブというルートを辿らねば、今のお金の流れを見極める術も無かったのでしょう。

ただ単に、運が良かっただけです。
それは日々、切実に思います。


今回メールを戴いた中で、印象的なメールを戴きました。それは、
『水上さんは時給が1000円でも、水商売をしますか?』
というものでした。

・・・・その答えは応でもあり、否でもあります。

仕事の内容に関しては、応です。
ただ、常に付きまとうこの金銭的なリスクを考えると否と答えます。


この仕事をしていて一番辛いのは、20歳になったばかりの若い女性が何十万もの未収金を食らい、泣く泣くタダ働きのような状態になる、を目にする時です。

私はたまたま、若いときにリスクを背負わず好条件で働けました。
好景気でしたからね。

だけど20歳そこそこの彼女達が今、不景気なゆえに私と同じような条件を背負わされ、かと言って私のようなババの知恵も無く、良い様に店にも客にも食い物にされる様を見ているのは、本当に辛いのものです。

いくら私が『この仕事も楽しいと感じて欲しい』と思っても、その材料が彼女達には無い。




荒稼ぎせず、マイペースで。
乗せられず、見栄を張らず。

彼女等にそう願うと共に、
日々自分にも言い聞かせている水上です。







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『 30歳ホステスの選択権 』
2005年03月15日(火)


にゃんこ可愛い。
ちゅうしに行くと、爪の出てない肉球でシパパパと頬を猫パンチ。
や、柔らか〜い。幸せだぁぁ。

今もゴムマリのように跳ねている。
憩うぞ〜憩うぞ〜。
エロオヤジみたいな水上である。


さて昨日、夜遅く電話があった。
前の店の同僚で、ラウンジに行った子だ。
彼女の繊細な神経ではクラブはキツイらしく、私が前の店を辞めると同時に、彼女も今のラウンジに移った。

年齢は30歳。
う〜ん、私に言われたくは無いだろうが微妙なお年頃だ。


何があったのか聞いてみると、予想通り今の店が合わないらしい。
と、言うより雇い主に『貴女はこの店に合わない。』と言われたらしい。

ほうほう、それはどういう理由で?と聞くと、
1)クラブ上がりの子はこの店の雰囲気に合わない。
2)クラブ上がりの子は待機中にも頑張りすぎて他の子にプレッシャーを与える。
ざっと言うとこういう事らしい。

信じられないが、こういうことをサラリと言ってしまう馬鹿が未だにこの世の中に居るのだな。その事にビックリだ。クラブに恨みでもあるのか、この婆は。


勿論彼女は反論した。
馬鹿には何を言っても無駄だと諦める私より、進歩的な奴かも。

−1)に対しての反論−
自分はどちらかと言うと派手系ではなく地味系で、
クラブでも家庭的なタイプで通っていた。
ここの雰囲気とずれるとは思っていない。

−2)に対しての反論−
待機中の電話やメールの何が悪いのか?
自分の日給は自分で出す、その考え方はおかしいのか?

ここで弁明させて戴くと、彼女自身この話が出た時に辞めるつもりで話をしていたので、別にしがみ付いている訳ではない。
ただ、自分の価値観や積み重ねてきた物を否定されたようで悔しかったのだと思う。


へえ〜待機中でも電話やメールをしなくていいのか、そんなに忙しい店なのか、結構な事だな〜と思っていたら、なんと連続ボウズ様の日が続くという。
ありゃりゃ〜そりゃあきませんがな。

しかし悠長な店だね。スポンサーが付いてるのかな。それにしても悠長すぎだろう。いかな30年続く老舗と言えど、不景気とはいえど、スポンサーもキレるハズ。
っていうかスポンサーまだ生きてるのかな。


確かに彼女の言い分は正しい。
うん、正しいんだけど・・・・ホステスならば見なければいけない真実が見えていない。

ラウンジのオーナーがクラブ上がりを嫌うのは未収金の問題なのだ。
高い店から安い店に移ると金銭感覚が鈍るホステスは多い。
故に、お客様にガンガン飲んでもらって、挙句の果てに飛ばなければいけなくなる。

そこが嫌われる・・・・というか敬遠されるのだ。
そしてそういうゼニカネの問題をストレートに言えるオーナーは、大阪といえども中々居ない。

悲しいかなこういうパターンは多く、彼女のように解雇通知を食らう事は多い。
そして彼女自身も、30歳という年齢がネックになっている事に気が付かない。
その悟りが無ければ、ラウンジであれクラブであれ、どちらの店に行っても彼女は解雇通知を食らい続けるだろう。


彼女がクラブ勤めに戻るとするなら・・・・。
30歳以上の女性がクラブに行きたければ、当然売り上げを要求される事になる。

普通売り上げと言えば30歳でなくともそれなりの数字が要求される。
ベスト20の店に行くならば若くとも小計で100万以上(概算総売りで300万以上。小計の計算方法は店による。)は必要だろう。

つまりお客様に20日の間、最低でも300万円以上飲んで貰わなくてはいけない事になる。
まあ1日に15万、と考えれば解りやすいですかね。

これはこの業界では「売り上げならば『出来て当然』なレベル」で、30歳以上なら「これ『以上』が当然」になる。
そうならないとスカウトも眼中に入れてくれないくらいの、ギリギリ最低ライン数字だ。本当にギリギリの。
(ここで触れている小計は、セット料金の高い店ならばもっと数字が上がります。)

30歳以上だけど売り上げでなくても良い!と言うふれこみがあれば、またそういう雇用条件であれば、そこはもはやクラブという名前を借りたラウンジやミニクラブに過ぎない。

原則的にオールヘルプで通用するのは23歳が限界。
高級クラブであればあるほどこの厳しい現実は常にある。
美人であれ何であれ、売り上げが出来なければクラブには解雇される。
もしくは罰金罰金でタダ同然にこき使われる事になる。
新地で沢山飲まれているお客様こそ、この現実を良く御存知の筈だ。

これは逆もまた真なりで、数字さえ叩き出せれば30歳でも良い雇用条件で、クラブに長く勤められる事になる。
ビジネスなのだから数字命と言われれば当たり前の事なのだが、これがこの仕事の残酷な一面だろう。


彼女がラウンジ勤めを希望するならば・・・・。
不本意かもしれないが、最初は縁の下の力持ち的な役割を率先してするべきだと思う。この世界で生き残って接客業を続けたいならば、そうするしか無いのだ。

何故ならばラウンジで気合を入れてる30歳のホステスは、お客様から見ればやはり『縁の下に回れないでしゃばり』的な目で見られる。
集客力があればそれでも問題は無いが、お客様にとってラウンジで『あの子はチーママにもなれない30歳ホステス』、そういう目を変える事はなかなか出来ない。
御自分も社会的に地位を築いてきたからこそ、そういう視点になるのだろう。

いくら集客力があっても、初っ端から力でねじ伏せるようなやり方より、その店に馴染んだ頃に徐々に集客率を上げていく方が良い。
その方がクラブからラウンジに以降する時にはスムーズに行くと思う。


私はその旨を告げて、
『そういう辛い思いをしても、どうしてもこの仕事がしたいかどうか。
 もう一回それを考えて欲しい。』
と告げた。


私自身この仕事を辛いと思った事は少ない。

一般に言われる辛い事・・・・例えば、口説かれる時はどういう風にかわしてその付き合いから色気を抜くかとか、また飲ませ方はどうすれば自分が未収をかぶらずに済むかとか、怪しい人に脅されたときはどうキレればいいかとか、・・・・そんな出来事の全ては私にとってどこか面白かったのだ。

すいすい泳ぐように楽しんでいる自分が居て。
必ず第三者の自分が居て、自分がどう乗り切るか見ている。
(つくづく嫌な女である。私という女は。)

楽しんでいるのはその人で(責任転嫁バリバリ)、実際表面上は泣いたり怒ったりはしているのだけれど、かといって辛い・・・・と思う事は少なかったように思う。

むしろ情を失った時、以前に書いたと思うが・・・・暖かいお客様を亡くした時、その時には本当に辛くてこの仕事に嫌気が差した事がある。
暖かさを知ると、感じなかった寒さを感じるようになる、そう言うと解りやすいだろうか。


あ、もうじき待ち合わせのお客様が来るので。
今日はこの辺りで止めておこう。
それでは。




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『 曖昧模糊の孤独 』
2005年03月14日(月)


もう猫ってば。可愛すぎ。
原稿中にぐるぐる言わないで。遊んじゃうから。
っていうか片手打ちになるから効率悪い。

何だか犬も欲しくなって来たな。
バーニーズとか、でっかいのがいい。
でも滅多な事を言うと、本当に段取りされちゃうから止めておこう(笑)。


よく『犬と猫どちらが好き?』と聞かれるが、私は両方好きだ。
事情が許せば両方飼いたいと思っている。
そう答えると必ず『ああ、なおちゃんならそう言うと思った。』とか、『なおちゃんらしいね。』とか言われる。

幼い頃は同じ質問をされると、優柔不断な風に思われるのではないかと思っていたが、二者択一など普段の生活では無理に使わなくてもいいのだ、と解った瞬間から自分がとても楽になった。

よく『ハッキリ決めなさい。』とか『どちらかにしなさい。』とか言われるが、後から考えるとそれはその言葉を発した人側の都合であって、私の都合ではないと気付いたからだ。


勿論、相手を優先しなければならない大事な瞬間は必ずあるから、その時には自分の方向性を選択せざるを得ないが、別に『何が好きで何が嫌いか。』などという安易な質問に、いちいち選択を迫られる必要なぞ無い。

私を知りたいから、人となりの輪郭を掴みたいから、もしくは同調したい・されたいから、それは相手の希望であって私の望むものではない。


小さいレベルで物を言えばこういう事からなのだが、こういう小さい事で相手を量ろうとするのが人間心理であり、表に出た姿勢で判断されてしまうのが、人間関係というものなのだ。

つまり、『どっちも好き。』と優柔不断(笑)な姿勢を『貫き通す』という事は、単体の孤独も背負う事であり、面倒臭くて時間がかかる事でもある。


だけど普段は職場やお客様に選択を迫られる事が多いのだから、好き嫌いくらいは優柔不断にさせてくれよと思う水上なのでした。





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『 忙人の余裕 』
2005年03月11日(金)


もう猫可愛すぎ。
ご飯食べておしっこしてウンチして遊んで寝るだけ。
遊びつかれてにゃーにゃー鳴いて、抱っこすると瞬間で眠っちゃう。

山猫の血って本当に入ってるのかなあ?
すっごい人懐こくってらぶりー。

私に何かして欲しい時は『にゃあぁぁぁ〜。』と長鳴きして呼ぶ。
時間的にご飯なら、用意している間私の足にしがみ付いて離れないし、眠いなら手で掬い上げた瞬間うとうとしちゃう。
先日はゴロゴロいう間もなく、手のひらの上で寝てしまったくらいだ。

ブリーダーさんのお話によると、この手の猫は早めに母猫から離さないと人間に懐きにくくなるらしい。
こんな風に無防備に眠る姿を見ているとそうは思えないのだが。


昨夜遅くに真田さんから電話があった。
相変わらず忙しい人で、今日は一日で主要三都市を回った日だったらしい。

年代の割には古風な人だから泣き言は少ないのだけれど、さすがに疲れた声だったから心配になる。
『今週は二回大阪を素通りしたよ。
 会いたいのに中々上手く行かないな・・・・。』
そういってため息をつく。

最近の私達は・・・・顔を合わすのが減った訳ではないのだが、私が席に居る時間が短いので余り話せない事が多い。

ましてや真田さんは接待で来る事が殆どなのだから、彼は彼で接待先に気を配るし、私は私で彼のそんな様子や接待先の方の様子を読み取って、女の子の配置変えをしたり、ボトルや抜き物の段取りをしたり、時間の配分やお土産の用意、伝票の目通しや次の店の段取り、時にはタクシーの手配などをこなす。
(もう最近黒服に期待するのは止めたのです。)

そんな調子だから店で会話を交わす事は殆ど無く、お迎えの時とお見送りの時に少し話すくらいだ。
後は電話と携帯メールとパソコンメールだけ。


ちょっとつまんないなあ、と実は思う。
私はいつまでも現場で居たいのに。
最近は人を使わざるを得なくて、お話したいお客様とも全然話せない。

『滞りなく行っておりますでしょうか?』と合間に聞いたりすると、『なんやなおも偉くなったもんやな。全然傍に居てくれへんやないか。あんまり出世せんでええから、たまには遊んでや。』などと言われたりする。
私が一番そうしたいんですよ、と嘆くと『まあええよ。またご飯でも行こうな。』と慰められる始末。

大ママと朝まで飲んだ時に、現場が好きなのに、と愚痴ったら、『そんな余裕のある事よう言えるな。』と笑われた。
余裕なのかな。我侭だと言われると思っていたんだけど。

大ママ曰く今の私は、テーブルをプロデュースする段階ではなく、店全体の視点になったこそのジレンマなのだという。
これにはまだまだ上があって、今は自分のお客様の席に『より良い女性を回して下さい。』と店側に我侭を言えるが、もうじきそれもままならない状態になって行くらしい。

そう考えると何だか嫌になって行くなあ。
私は接客業が好きでやってるのに、この仕事の一番楽しい部分を味わえないなら、リスクを背負ってまでこの仕事をやる必要は無いんじゃないか、とさえ思ってしまう。
周りにこの本音を聞かれたら不真面目すぎてそれこそ顰蹙なんだろうけれど、やはり現場の楽しさを思うと・・・・考え無しに好き嫌いを呟いてしまいそうだ。


でも同年代のホステスはこれをして当たり前なのだし、いや出来て当たり前で、私はまだ遅いくらいなのだな。
つくづく不真面目な姿勢の自分が情けない。
現場に居れない状況の中でも、何か別の楽しみを見つけて行かねばならないのだ。

心を亡くすと書いて忙。
最近やたらとこの漢字が身に染みる。






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『 甘えん坊の黄金率 』
2005年03月09日(水)


子猫が我が家にやってきた。
猫を飼いたいと言うと、皆様で手配して下さる。
ありがたい。


本当は新地に住み着いている黒猫ちゃん一家か、キジ猫ちゃん一家か、白黒ブラザーズを拾っちゃおうかと思っていたのだが、どの一家もほのぼのと幸せそうで、どうしても極悪非道な猫さらいにはなることが出来なかった。
白黒ブラザーズは猫にしては私好みの和風の顔立ち・・・・と言うか端正な顔立ちの一家で、是非養子に迎えたいと思っていたのだが。

新地に住む猫は、都会にしては少ないその交通量と、種類も量も豊富な残飯、そして24時間回る室外機の温風により真冬もそこそこ暖かいので、野良猫にしては他所より少しはましな生活環境かもしれない。
見かけると彼等の頭の良さに少しビックリしてしまうのだが、ビルの屋上の排気ダクトの交差する部分に住み着いていたり、某料亭の裏のベランダに置かれた冷蔵庫の放熱に暖を取っていたりする。

威風堂々と夜の街を闊歩する彼等を見ていると、人間に拾われて快適で幸せな一生を送らせてあげたい、そんな風に思うのは人間の勝手な価値観なのだな、とも思ってしまうほどだ。

知り合いの同業者はキジ猫一家の猫を拾って、今も大事に育てている。
雨の中、母猫とはぐれてミィミィ泣いていたのを見かね、連れ帰ったのが始まりだそうだ。
『ホステスが猫を飼うと言うと、どうしてもチンチラなんかの長毛種を想像されちゃうのよねえ。』と彼女は笑っていた。

かくいう私も今回『猫が欲しい』と言うと、何故か毛足の長い猫を薦められる事が多くて、思わず苦笑してしまった。
実家で長年毛足の長い猫を飼っていたので嫌いではないし、むしろ長毛種独特のあのおっとりさは好きなのだが、彼等はマメな手入れが必要で、時間の無い私向きではない。
ブラッシングもそこそこで、毛玉が沢山出来たりしてしまうだろう。


今、横で小さい毛糸玉がポンポン跳ねている。
うちに来て一日目二日目は警戒心が強く、私に向かって背中の毛も立ちっぱなし、爪も出っ放しだったのだが、今じゃもう一緒に寝ないと眠ろうとしないくらい甘えん坊になっている。

まだ頭が重いのか首をプルプルするとこけてしまったり、カーテンに飛びついて爪が取れなくなってミイミイ泣いていたり、とにかく山猫族とは思えないくらいのボケっぷりで、外観の柄とのギャップが可愛い。
くつろぐときは必ず体の一部を私にくっ付けていないと気が済まないらしく、静かになったなと思うと私の体のどこかが温くなり、グルグルという響きが体の中を伝って来るのだ。

子供はどんな動物でも可愛いと言うが、この時期は特に愛される為だけの存在だなと思う。
保護欲を掻き立てる顔の比率や体の比率は、人間の赤ん坊と他動物は同じだそうだ。
何かで読んだが生命の黄金率と言うそうで、異種間の養育・・・・狼が人間を育てるなどは、この黄金率のなせる業らしい。


この甘えん坊はいつまで甘えん坊でいてくれるのだろう。
大きくなっても今みたいに遊んでくれるかなあ。
それにしてもなかなか飲み込みが早く賢い子だ。
何でも食べるし、躾もしやすい。

これからは心配事も増えるだろうが、きっとそれ以上に心強く支えてくれる。
長い時間を共に過ごすには良い相手だ。

まだまだこの子の人生は始まったばかり。
長生きして欲しいな。






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『 薄情者の情け 』
2005年03月05日(土)


猫を飼おうと思う。
多分、今週中に。

私の生家にはずっと何かしらの動物が飼われていて、共働きだった両親に代わり私達姉妹が、それぞれ動物の面倒を見ていた。
犬、猫、鳥、その他小動物それぞれに可愛く、良い思い出が沢山ある。


その環境で育った私も当然のようにずっと動物を飼いたかったのだが、賃貸住宅ではトラブルの素だし、飼う子によっては高い場所ゆえの事故もあるから避けていたのだ。

何よりも『家族』である彼等をコソコソ飼うのは嫌だった。
もちろんこれは賃貸で飼っている人への批判では無い。
私の方が『目の前の生命より自分の生活事情を優先する』冷たい女だし、彼等を家族だと本当に思うならコソコソしようがどうしようが養って食わせていくのが順当だろう。

少々割高になるが、ペットOKのマンションなども考えた。
だが皆考える事は同じらしく、高い階層の物件ならば割とあるのだが、住みたい階層の低い物件が無く、あっても値段が折り合わず諦めていた。


最近少々落ち着いて、犬を飼おうか猫を飼おうか考え、猫に決めた。
犬は賢くて可愛くて、永遠に人間の友人だけれども、賢すぎて情に厚すぎる。
それが仇になると思ったからだ。

私に万が一の事があり、父母なり姉妹なり他人の手に渡ると、犬は環境の変化にとても気を使い、淋しい思いをするだろう。


猫はとことん情に薄い訳ではないが、その環境が気に入れば、主人は私でなくとも良い、やっぱり・・・・そう、薄情者だ。
昔、毎日学校のそばまで迎えに来る猫を飼っていた事があるが、そんな個体は珍しいのだろう。
殆どは快適な環境と満たされた食料があれば、旅行などから帰ってきても申し訳程度に体を摺り寄せて、また自分の場所でくつろぎ始める。

泥棒が入ろうがどうしようが鳴いたりしないので、怪我をさせられる事は無いだろうし、犬のように果敢に挑んでいく事も無い。
その気楽さがちょうどいいくらいだなと、今の忙しい生活状況の私は思う。


沢山可愛がろうと思う。
写真を沢山撮って、沢山遊んで。

名前ももう決めてある。

私は沢山の柔らかさと、
涙を舐めてくれるザラザラを貰おう。

ぬくぬく、も。





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『 親不孝者の幸福 』
2005年03月03日(木)


よく解らないまま新規のお客様に贔屓にして頂いている。
週に一回の同伴、お高いお店でのゴハン。嬉しい。
地の東京の方で、こちらに単身赴任中。
たまにアフターも行くのだが口説き一切無し。うん、楽。

週に一回の確実同伴を握っているのは凄く助かる。
自分のノルマは何とかなるが、ダブルやトリプルになった日などは、他にも振り分ける事が出来るので口座持ちもだがヘルプの女性に回したりして(彼女らも同伴ノルマがあるので喜んで貰える)客席の盛り上がりにも役立つのだ。
ギブ&テイクはお仕事の潤滑油ですな。
いやいや、今回はそういった殺伐とした系の話ではなく。

この方、可愛い盛りのお子様と週末にしか会えない淋しいパパ。
少し酔いが回ると携帯を取り出し、週初めに毎回追加されたお子様の写真を見せてくれる。
他人の家族写真やビデオを見せられては苦痛に思う時期もあったのに、何時の間に私はこんなに心が広くなったのだろうか、今ではお客様が見せてくれるその写真が楽しみになり、お客様御自身のにこやかな表情が私自身の安らぎにさえなる事があるのだ。

他人を理解したいと思う自分の心の仕組み、そのコツを掴むと、この仕事は楽になって行くのだと思う。
特に今の私は、自分のお客様の席でありながら挨拶もそこそこに立たねばならず、そのまま帰してしまったりする事も多い。
一つの席に20分居るか居ないかの中で、常々申し訳ないなと心に引け目を背負い、だがどこのテーブルもその状況の中で、お客様の方からふっと・・・・そういう無防備な姿を晒して下さると、私自身も緊張感が緩んでほっとするのだ。

携帯写真の中の彼のお嬢様は、お遊戯会なのか可愛いタヌキの扮装をしていた。
とろけそうな笑顔を覗かせながら、そのお客様はつぶやく。
『子供って小さいうちに一生分の親孝行をしてくれてるなって思うよ。
 こんなに可愛いんだもの。もう何にも要らないよ・・・・。』と。

うちの父親もそう思ってくれてるといいんだけどなあ、と思いながらお見送りをする親不孝者の私。
そういえば父も海外に単身赴任をしていた時期があった。
政情不安定なその国に赴くのに、やはり私達三人姉妹の写真を必ず持って行って、同国の人間と見せ合いながら酒を飲んだのだと聞く。

男の人はつくづく大変だなと思う。
家の中では見せなかった父の姿を、お客様が教えて下さる。

肩に当たる風が少しだけ暖かくなって来た。


もうきっと春。





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『 お久しぶりでございます 』
2005年03月02日(水)


日記もここまでほうりっ放しだとさすがに書きにくくなるなあ。
なんて感じの水上です。
皆様どうもご無沙汰しております。

放りっぱなしの最中も何度かメールを戴きまして、お返事しなければならないのにそのままでした。
本当にごめんなさい。
この場を借りて深くお詫びします。


で、何故こういう事になったかと申しますとですね・・・・。

まず、引越しが終わったのが9月の末でした。
なんやかんや忙しい中、休日をぬいブラインドやら家具やらを揃えたりなどしていたら、あれよあれよと結構な月日が経ってしまいまして。
あと、平日は書類を揃えたり市役所に行ったり、銀行や郵便局でも忙しかったし。

で、荷解きがこれまた大変でしてね。
私は昔から引越しが多い家庭で育ちましたので、あまり余分な物は持たないようにしてるんですけど、それでも女も34年やってますと何やかんや荷物があります。
ん〜お家を買うって大変・・・・。とにかくもう引越しはしたくない。

そして別に引越しが原因では無いのでしょうけれど、タイミングよく冷蔵庫やら洗濯機やらが壊れまして。
(引越し屋さんはとても丁寧にしてくれたので、おそらく寿命かと)
どうしても毎日必要な家電ですし買い揃えたら、情けない事にお貯金がすってんてんになっちゃったんですね。
こりゃあイカンと本業の文筆業を集中して取ったり、もう一つバイトを増やして預金通帳の数字を元に戻したり。
そんなこんなで9月〜10月は日記なんて書く時間どころか、睡眠時間も危ういくらいだったのです。


更に10月の初旬に大きいクラブからスカウト話が来ました。
雇用条件も店構えも良かったし、日給も現在より30パーセントアップ(その代わりノルマも少し増えるんですが)、お客様のアクセスも便利、と全てベストでした。
・・・・まあ、お金や条件はともかく伝説のママのおられる、一度は行きたい店だったんでこの際思い切って移店する事にしたのです。
つまりお家も職場も変わった訳ですね。


ここで私なりに考え、決めたのです。

『今度のお店は新地の中でもベスト10に入る店。
 箱も大きけりゃ、女の子も常時30〜40人は働く店。
 生半可な根性では立ち向かえない。
 ある程度の地位に昇るまで遊びの部分は出来るだけ控えよう。
 移店して3ヵ月が「過ぎてから」が本当の実力。
 今の自分の本当の力がはっきりするまで頑張ってみよう。』


・・・・と。

そういう訳で時間の無さもありますが、どちらかと言うと自分の意思で日記を故意に書かなかったのです。
パソコンは勿論、携帯メールまでくれて心配してくれた方々、本当にご心配かけてごめんなさい。
それから、ありがとう。


さて、そうやって集中した結果はどうだったかと言うと、お蔭様で良いサポートを戴いてそのお店で4ヶ月、連続で1位〜2位を達成でき、また、良い御新規様と巡り合う事も出来ました。

自分では本当の実力とは思えず、幸運だったと思っています。
それなりの箱の店にはそれなりの女性陣が居て、その方々が私のお客様をどんどん引っ張ってくれたし、またクリスマスや年始やオバケも絡んで集客がしやすかったのが幸いだったのでしょう。

勿論、流れを読んで事を回すのも実力のうち、仕事のうち。
今回のことを幸運だと言うのは謙遜しすぎだよ、とも友人たちには言われました。

それは解っています。
解ってはいますが、不思議な事にそれが上手く回れば回るほど他人の力を大きく感じ、数字が出来上って行けば行くほど自分の力を信じれなくなって行くのです。

自分の幸運に対して、無邪気に気分良くなれないのは、私がもう若くない証拠なのかも知れませんし、自分の今の限界を超えた数字に怖くなったのかも知れません。


大型店に移る怖さは、ミナミから移る怖さとまた違います。
口座の重複があれば売り上げに影響が出ますし、綿密な下調べと店側への打ち合わせが必要です。
そういった意味でも今回は、新地の中の流れとお客様の動向、その他諸々の事がとても勉強になり、実りの多い移店だったと思います。

何よりも噂のママにお会い出来た事、またその方を仕事においての同士だと確認出来た事、共通の目的を持てた事に感謝する日々でした。


同時に、いかに今まで自分が手を抜いていたかが良く解った期間でもあります。
どんな仕事でもそうなのですが、努力してるつもりでもまだ足りず、何時までも何処までも天井の無い仕事だなと、接客業については改めて考えさせられました。
勿論、だから面白いんですけれどね。


少し落ち着きましたし、これからは日々の事は勿論の事、自分がまだまだ未熟だと思った部分なども、少しづつ書いていこうと思います。

皆様どうか、またよろしくお願い致します。





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