オミズの花道
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『寝ちゃうと終わりな妙』
2002年09月23日(月)
今の店を辞め、他所に勤めるにあたって、何人抜けるか考えてみた。今の店と云うのはとにかく特殊な所で抜ける方など居やしないのだが。
特殊、というと。う〜んつまり、客層が殆どオーナーの客で、ママの客では無いんだよね。オーナーの彼女の家に皆が遊びに来てる感覚かなぁ。パーセンテージで述べると98%がそうでしょうな。
店は色んな客層が来て当たり前だと思っていた私には、勤め始めて一ヶ月目でもう潮時が見えていたのだった。居心地が良いのでついつい居ついてしまったけれども。
先日新しい店の面接の後で、ママに釘を刺された。
『うちの店のお客様を抜くのは駄目です。』と。
まあねえ。そう言うでしょうねえ。取り敢えずはねえ。
私はしおらしく、『私にその実力は無いです。』と答えておいた。
信用なんざされてないだろうけど、大人としての態度はこれしかない。
甘いってば。いかなガメ難い(ガメる=パクる)客層とは言えど穴はあるもの。3人は頂いて行きたいですね。3人とも色気タップリで困ってますが、いつもの手段で取り込みます。誠意は尽くしまくります。色気に罪悪感を相手が持ち始めるまでね。
女の場合、実は寝ちゃうと終わりだったりする。
難しいようでカンタン。
『華であれ。』
2002年09月18日(水)
客に呼び出されお迎えに行った。本当にコイツってば我が儘。許せん。書いてやる。
同伴で定時に入れるならウハウハなのだが、こいつってばもう店に入っているホステスに迎えに来いと言って外でダラダラ飲みやがる。オーナー命令だから迎えに行くのはしょうがないけれど、ルール違反なんだよ。うちはデートクラブじゃねえ。解ってんのか。
しかも早く帰って来い命令も含んでいるから気持ちも焦る。行きましょうか、の私の台詞を無視して熱燗を頼んだ時は殺意さえ浮かんだ。
あのなあ、うちらは店で飲ませてなんぼなんですよ。ふざけんな。
笑いながら、
『私をマズイ立場に追い込んだらいけないんじゃないですかぁ〜?』とボケてやった。
すると、
『良い立場にしたら何か特典でもあるの?』と聞き返してきやがる。
ぷっちぃ〜ん。軽くキレた音だ。
そう、こいつ生意気にも私に恋をしている。わざわざ休日を狙ってデートをしようとして来たりして、普段からかなりうっとおしい。
『特典の前に嫌われるんじゃないですか。』
凍りつく空気。さあこれからだぞ。用意はいいか若造め。
『ホステスに好かれたかったら店で立ち回りやすくしてあげてナンボですな。
君を普通の女性として見たい、とか。
店の子として関わりたくない、とか。
そういうのって私にはかえって侮辱なんですよ。
仕事が出来てないって言われてるのと同じ。
オミズの女は持ち上げてくれて美しく自分を磨いてくれる男が好きです。
常識の世界の考えとはかけ離れているでしょうがね。
反して、貴方をお客様として見たくないというホステスも私に言わせりゃクソですな。
愛する男からに「さえ」ふんだくってこそ華です。
自分の男に「飲み方の華」を「持たせて」こそいっぱしのホステスです。
外でどういうお付き合いをしてるにせよ、ね。』
沈黙の源寿司。
大将の手が止まる。
丁稚の動きがぎこちない。
隣にいるリーマン二人連れまでもが注目。
『そういう発想って凄いな。染まりきってる。』若造社長、ささやかな抵抗だ。
『では。
例えば社長が会社の中の女性とお付き合いしていたとします。
その方をとても好きだったとします。
でもだからと言って仕事において甘えられたらどう思われますか?
仕事を放って私を見て、そう彼女に言われたらどう思われますか?
他の人より稼がない、会社に恩恵をもたらさない、
なのに関係に甘んじて給料アップを要求されたらどう思われますか?』
隣のリーマン二人、耳がダンボになっている。
『そんな女性よりも、会社の為に稼ぎ、貴方を潤してあげたい。
そう思う女の方が愛しいと感じるのではないですか?
自分を本当に好いてくれている、そう思うでしょう?』
そろそろまとめよう。
『私たちも同じですよ。
店に入ったら「仕事」なんです。
感情とは一切関係ない。
持ち込んだらプロで無くなる。
だけれども、それを圧してなお、
その一線を相手に踏み越えさせたかったら、
気持ちを開かせる自分の「努力」は必要です。
それはどんな業種でも一緒なんじゃないですか?
私が働くのは色恋の世界だから見えにくいでしょうけれど。』
さあ、トドメだ。
『水の概念に染まりきってるのはむしろ貴方の方です。』
いかな私とはいえ、ここまで論破することは滅多に無い。職務として「してはならない事柄」はそれなりに把握している。解っていたからこそ今まではそれなりに可愛く振る舞い、猫もかぶって来た。若造社長にしてみれば頭の悪い子がいきなり田嶋女史になった気分だろう。
だけどケジメは必要。私は客でも同業者でも、いや自分の男でさえも(今は居ないけど)、自分の仕事の邪魔をする人間は絶対に許さない。
御銚子を取り、酒をそれぞれのお猪口に分け、くいと飲み干し、にっこりと笑って若造社長に聞く。
『どうされます?まだ熱燗飲まれます?』
『いや、もういいから。行こうか。』
『はい。』
店に入るともう私を目当てに通う客が二組鎮座している。案の定二組のご機嫌を取り戻すのが大変だった。
そこそこに若造社長も楽しませ、見送る。
にっこりと。
にっこりと。
さあ、後日どう出て来るかが楽しみ。
オトコノコはもまれてナンボ、ですよってな。
『落日の朱』
2002年09月15日(日)
今日はお客様が近所にいらしたのでお昼ご飯とお茶をご一緒した。
この人、某有名企業の来年は部長と云う方である。若さにそぐわない出世ではあるが、器の大きさが魅力的なんだろう。男惚れするタイプであろうし。
まあこのご時世なんでどうなるか解らんけれどね(笑)。
さて今日はご自分の母校の選抜高校野球予選の応援にいらしたのだという。
先週お店にいらして戴いた時に「近くに寄るからね。お茶でも行こう。」と約束していたので、試合の帰りにわざわざ寄って戴いたのだ。
試合の結果も「勝利」と良好。天気も良し。ドライブ日和。何よりも大好きなお客様とのご飯は楽しい。私には楽しくて仕方が無い一日だった。
先週の接客の時に、キラキラした青春時代のお話をお伺いして、今の後輩達に対する愛情も沢山話して戴いた。
今日もやはりそんな流れで、母校の後輩がいかに頑張っているか、大阪で生き残る事がいかに意義のあることか、そんな話をしていた。
だが気がつくと、私はふっと違和感を感じている自分を自覚した。
「・・・・なんだろう?これ?」
同時にその感覚が、これまで何度か味わったことのある感覚であることにも気がついた。
「この人はなんだろう?」
私はその違和感の解明に努めた。話に頷きながら。ヒントを探す。そして感じる。
私がその違和感を感じるとき、やたらと後輩に対する愛情が覗く時だと掴める。
その時点で私は表に意識を戻す。
ああ、体育会系の方に良くある・・・男同士の凛々とした世界への愛着かしら。
そう思って相手との会話のキャッチボールに戻る。
食事も終わり、車を走らせているうちに河川敷のグラウンドが見えてきた。リトルリーグの試合を行っているらしく、色とりどりのユニフォームが飛び跳ねている。
頭でっかちなくせにきちんとユニフォームを着て一生懸命に駆け回る姿が、
何とも愛らしくて微笑ましい。
私はふっと「息子さんいらっしゃるんでしたっけ?野球はされないんですか?」と尋ねた。
彼は一瞬考え、答える。
「してた、んだよ。余り言ってないから・・・君の店の子は誰も知らないだろうけれども、丁度あれくらいの頃・・・・五年生くらいの時に交通事故で亡くしてね。」
絶句、だった。
ごめんなさい、それしか言えなかった。
いいよ、そんな謝る事じゃないじゃないか、そう言って戴いても涙が出た。
その瞬間、あの違和感の正体が掴めた。
きっと彼の息子は、生きていれば高校生くらいなのだろう。だからあんなにも高校球児達に対して思い入れているのだ。そして、気がついた。私がこの人に対して感じていた違和感のもうひとつは、器の大きさだった。
若さにそぐわない器を構えている人間は、とても辛い思いをしている人が多い。それはとても割が合わなくて、残酷なことだけれども。
私なら一生未熟者でいいから、大切な人には生きていて欲しい・・・・。
夕日が落ちる中、私は彼を丁寧にお辞儀をして見送る。
「お店じゃないんだからお辞儀なんてしなくていいのに。」そう笑われる。
だけど、そうせずにはおれなかった。
・・・・いつまでの縁かは解らない。だけれども精一杯、縁がある間は精一杯、心を尽くそう。
このお客様にも。
『スカウトされたワタシ』
2002年09月11日(水)
胃がムカムカする。ここ何日か色んな事があって大変だった。
丁度6日の金曜日の話だ。
店で一人で片づけをして、さあ始発で帰ろうとしたとき、近くで店を出しているニューハーフのミカちゃんに出会った。
「あ、ミカちゃんだ〜。お疲れ〜。」
「あ、お疲れ様です。」
見ると、隣にはとっても綺麗なお姉さんが居る。
ミカちゃんのお誘いを受けて、仕事上がりの私は、そのお姉さんと三人でお茶を飲むことになった。
この人、名前は晶子さんという。勿論同業者で、ミニクラブに勤めているらしい。
白いスーツが良く似合い、小顔で気風のいい粋なオネエチャンだ。
座るなり晶子さん、私の容姿を持ち上げる持ち上げる。
おいおい、何を狙ってるのかしら?何?ここは私が払うの?・・・・とこちらが赤面するくらい絶賛する。
晶さん、いきなり「今どこで働いてるの?時給は?勤務条件は?」と聞いてくる。
一通り私が述べると、晶さんはいきなり「うちに来なさい。貴女はそんな時給で働く子じゃない。」と告げた。「いいわね。来週の水曜日、面接よ。」
・・・・何てストレートな。こういう人・・・・私は大好きだ(笑)。
そして名刺を交換し、時間を決めて別れる。
さあ、これからが大変だな・・・。そう思いながら始発で帰路につく。
この時点でもう私の胃は引っくり返っていた。
クラブ・・・・ミニクラブか・・・う〜ん。
さて、キャリアの話なのだけれど。
私はその昔、北新地で皆が知るだろうクラブに在籍していた。
だから仕事内容などは臆する事無く立ち回れるだろうと思う。
んが、しかしである。それはバブル時代の話な訳で。
今は空前絶後の鍋底景気。いや、バランスの悪い時代。
ヴィトンのバックに金は出すが、飲み代にゃスーパーケチケチモードな時代。
『うらうら〜〜〜猫も杓子も遊びちぎってヨッパゲで〜〜い!!』
・・・・のバブル時代とは話が違う。
今は昔よりも数倍、いや数十倍やりにくい事だろう。そしてまた北新地とミナミの違いも大きく在る。キタと違いミナミは「韓国クラブ」の多い土地柄だから(この話はまた次回にでも)。
私などに勤まるだろうか・・・・。お客様を呼べるのか?
それから5日の間悩みに悩んだ。
悩んで悩んで悩み飽きて「やはり現状ではままならん」結論に達し、
自分が将来の目的の為に働いていること、その為には転機を迎えているのだと再認識して、社長との面接に望んだ。
社長はこのミナミで37年生き残っている人だそうだ。
鋭い目つきだが、認めて受け止めてくれるであろう人。
条件もかなり譲歩してもらった。差ほどの負担はかけられず収入は二倍と二千円アップ。
まあ、それもやってみなくてはどう転ぶか解らないが。
私はその時点で心を決めた。何よりも、私には時間が無い。たらたら働いて収入だけで生きる訳にはいかないのだ。
後は今の店のママに言うだけだ。
面接を終えた足で今の店へ向かう。
ああ、胃が痛い・・・・。
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