ケイケイの映画日記
目次過去未来


2018年08月18日(土) 「ミッション:インポッシブル フォールアウト」




公開早々に観ました。充分に楽しみましたが、別にそれほど書く事もなかったので(笑)、放置していましたが、愛しのトムちんの当たり役ですもの、少しだけ書きたいと思います。監督はクリストファー・マッカリー。

奪還するはずだったプルトニウムが盗まれ、爆発防止に臨むことになったイーサン(トム・クルーズ)、ルーサー(ヴィング・レイムス)、ベンジー(サイモン・ペッグ)の三人。捕らえたソロモン(ショーン・ハリス)を手札に、犯人の名前だけを手がかりです。CIA内のMIFの立場は悪く、今回はお目付け役として、CIAからウォーカー(ヘンリー・ガヴィル)も、チームに随行する事になります。

このシリーズは全部、ストーリー性は甘いのですね。スパイ物なのに、プロデューサーを兼ねるトムちんの嗜好で、必ず愛だの友情だのが入るのがお約束。今回も敵に捕らわれたルーサーの命を助けた隙に、プルトニウムが盗まれると言うお粗末さ。本当にね、毎回全員生きているのが不思議です(笑)。

いつもなら又かと苦笑するんですが、今回は心ならずもイーサンと別れてしまった元妻ジュリア(ミシェル・モナハン)が再登場。愛だの友情だのが、人類愛にまで昇華しておる。愚直なまでにトムちんの信念を貫く様子を見せられて、今回感動すらしてしまった。いやー、ほんと、継続は力です。重ね続けてミルフィーユ状態で味わいが増しています(笑)。
(笑)。

このシリーズはアクションの見せ方に工夫があり、毎回楽しませてくれますが、今回は気合が入り過ぎて、全部のパートが少々長い。全部ちょこちょこ切れば、時間も二時間に収まり、すっきりすると思います。

とは言え、古いタイプのスパイ扱いされていたトムちんたちが、その古い技で相手を欺く様子など、小気味良いです。ラストのラストまで、尻尾まであんこ状態でハラハラさせて貰い、大満足です。

トムちんは相変わらず体張って頑張っていました。とても56歳とは思えません。何をびっくりしたかと言うと、30代後半のガビルと並んで、さほど年齢差を感じなかった事です。すごく精進しているんだろうなぁ。でもこれで怪我した事が頭を過ぎってしまい、イーサンにハラハラするのではなく、トムちんにハラハラするのは、如何なものか?このシリーズは、トムちんがスタントを極力使わず、自分で演じるのが売りですが、もう一作くらいで、後はアクションは誰か他の人に任せた方がいいと思います。

ルーサーとベンジーとのチームワークも磐石で、結局ファンに愛された二人が残ったのでしょう。ルーサーは今回チームのお父さんみたいで、今まで以上に好きになりました。ひょうきんなベンジーも、後半大活躍します。

他に前回から再登板のレベッカ・ファーガソンとショーン・ハリスもとても良かった。レベッカは、前作登場時は、アクション女優だと思い込んでしまうくらい、切れの良い回し蹴りを見せてくれましたが、今回それが観られてすごく嬉しい(笑)。あれよあれよと言う間に、ハリウッドのメインで大活躍の彼女ですが、引き出しはまだまだありそうで、嬉しいです。

ハリスは前回のクールな切れ者のムードとは正反対の、終始髭面のうらぶれた囚人姿。でも目が狂気なんだな。役柄云々じゃなく、ハリスの俳優としての底力を見た思いです。

同世代のブラピやジョニデが、私生活の破綻で失速気味の中、三度の結婚の失敗にもめげず、順調に仕事をこなしているトムちん。ボンドみたいに交代しないで、ずっと当たり役イーサン・ハントのままで居てくれていいから、次のシリーズでアクションは辞めて欲しいなぁ。だってトムちんの映画、これからも観たいもん。


2018年08月05日(日) 「カメラを止めるな!」




いやー、面白い!サイコー!単館二館で上映していた作品が、口コミが広がり、あれよあれよと言う間に拡大公開です。あまりの人気沸騰で、大阪は9月中旬にミニシアターで上映のはずが、一昨日からナンとTOHOシネマズなんばで公開。無名のキャスト・スタッフのインディーズ作品と言う観点から考えたら、大快挙です。監督・脚本は上田慎一郎。

人里離れた廃屋で、ゾンビ映画の自主映画を作っている撮影隊。撮影はなかなか進まず、凝り性の監督は、主演女優にダメだしを出し続け、ついにテイク42!少し休憩する事になりましたが、その間に本物のゾンビがクルーを襲ったから、さぁ大変!阿鼻叫喚の地獄図が始まります。

と、ここまでだけ知って鑑賞に臨みました。確かに37分の長回しは見応えがあり、ところどころ稚拙な部分や???の部分も、300万くらいで作ったなら、まぁ仕方ないよ、女優さん可愛いし、無名だけどみんな演技上手いしと、それなりに満足していました。でもこれでこんなに大人気って?

これ以外は何も言えません。ごめん(笑)。わかっても楽しめますが、私のように、やや肩透かしの方が、絶対その後が楽しめます。

この手のプロットは、確かに今までありました。その時も話題になりましたが、それは巧みな展開に対しての賞賛。この作品はそれ以外に、映画に対する愛情がいっぱい詰まっている。いい物を作ろう、観客をびっくりさせよう、いっぱい楽しんで貰おうとする、作り手の気概をひしひし感じるのですね。

何より、作っている時、この人たち心底楽しかったんだろうなぁと、こちらにも伝わってきます。それって観客にとっても嬉しい事ですよ。だから、あんなに劇場に一体感が生まれたのだと思います。こんなに笑ったの、久しぶりの気がします。

そう、笑えるゾンビ映画(笑)。そして最後にちょびっとほっこりしますよ。その後に、作り手さんたちみんなに、ありがとう〜、私も映画大好きなんだよ〜、これからも頑張ってね!と言いたくなる作品。是非是非お確かめ下さい。


2018年08月01日(水) 「ウィンド・リバー」




雪山で起こったミステリーとだけ頭に入れて観ましたが、これ、傑作じゃないでしょうか?理由は後述致します。監督は脚本家のテイラー・シェリダン。

ワイオミング州にある、雪深いネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバー。そこで害獣駆除に就く白人ハンターのコリー(ジェレミー・レナー)。ある日仕事の最中に、レイプされた形跡のあるネイティブアメリカンの若い女性の死体を発見します。それは亡くなった娘の親友ナタリーでした。地元の警察からの連絡を受け、FBIから派遣されてきたのは、新人のジェーン(エリザベス・オルセン)一人。ジェーンはレイプ殺人で立件しようとしますが、検視官は犯人からの逃亡で死亡したのは明らかだが、直接の死因は-30度の冷気を吸い込み続けたため、肺からの出血が原因だと言います。これではFBIからの応援は頼めず、ジェーンはコリーと地元警察の支援を受け、犯人を見つけだす決心をします。

恥ずかしながら、先住民族が、このようにあちこちの保留地という名の僻地に追いやられている事を、知りませんでした。どこかで見知っていたかも知れませんが、忘れています。一帯はアメリカ政府の管轄外のようで、無法地帯のようです。尊重しているように見せかけ、体よく追い払っているのです。衝撃でした。傑作だと思うのは、何も知らずに観に行った私に、先住民族の哀しみや怒りが、深々と心に届いたからです。

ろくな仕事に就けず、男は捨て鉢になり、麻薬の売人になる。女はレイプされるのが通過儀式のような世界。殺されても失跡しても、国はその数をカウントさえしない。ジェーンが家宅捜査に入ったネイティブの重要参考人の家は、不潔で禍々しく、得体の知れない怖さに満ちています。あの家には、置き去りにされた絶望が、満ちています。凍てつく寒さは、一面の雪景色に清廉な美しさを放ちながら、でも容赦なく人も殺すのです。そんな土地で暮らさなければならない人たち。

最果ての地のようなここに住む白人は、皆訳ありなのでしょう。コリーのように、ネイティブの女性を愛し結婚。共に暮らす男もいれば、一刻も早く抜け出したいのに、許されない境涯に捨て鉢になる男もいる。人を殺す寒さに悶々のとする男たちの娯楽が、レイプだなんて。怒りを通り越し、私まで絶望する。この作品は、本当に絶望感に満ちている。

一筋の光明がジェーン。当初は彼女に落胆したコリーや地元警察も、真摯に事件を解明しようとする彼女に、心を開いていきます。これが男性だったら?中堅以降の捜査官だったら?おざなりな捜査で終わった事でしょう。新人の女性だったから、被害者のナタリーの無念さに寄り添い、懸命に捜査に向かったのではないでしょうか?そこに監督は未来を見出している気がします。

ジェレミー・レナーは、インテリを演じても、ヒーローを演じても、個人的にはもっさり感じて今ひとつでしたが、今回は見違えるような適役。野性味のある大人の男性を、重厚さと憂いを共存させて好演。ひよっこFBIの初々しさを醸し出していたエリザベス。土地に溶け込み共感していく姿に、ジェーンの成長が感じられ、好演でした。

「大切に育てた高校生の娘は、目を離した隙にいなくなった」と語るコリー。それはたまには子供抜きで、夫婦水入らずを楽しみたいと思った、当たり前の事が起因です。ナタリーの父マーティンは、娘の死に耐え切れず、死のうとします。その時、部族伝来の死に装束的なペイントを、顔に塗りますが、「本当のやり方は知らない」。とうの昔にそんな文化は滅んでいるのに、彼らの人権は、昔の如く蹂躙されている。

今を生きるアメリカで、先住民族の人権を回復するには、どうすればいいのか?幾通りもの差別が問題視されるアメリカで、見落とされているネイティブアメリカンの人権。それをアメリカだけではなく、世界中に発信した監督の功績は、大きいと思います。こんな作品こそ、オスカーにノミネートして欲しかったなぁ。




ケイケイ |MAILHomePage