仕事じゃなきゃ来ることもなかっただろう山の頂で、 かすみがかった海と海岸線をまちを見渡す。 古里じゃないけれど、戸惑うくらい懐かしい気持ち。 まだ少し冷たい風が、強い日差しで熱くなった頬を冷やす。 ビルの谷間に鮮やかな夕焼けを見つけたとき、 雨の日のアスファルトの匂いを嗅いだときと同じように、 子どもじみた気分になった午後。
どれだけ肌を重ねても、届かない部分がある。 それを埋めたくて、時折、ひどく渇望して求めるのか。 どれだけ満足の声を聴いても、心がすうすうして困る。
職場でパソコンの画面を眺めてぼんやりする夜。
意識の表面が薄い膜で覆われてたような1日。 コーヒーと煙草の数だけが、刻々と増える。 仕事への情熱なんて、 遠い昔、否、最初からあったのだろうかと疑わしくなる。
私にはない部分、それは例えば、 彼女の、自分に嘘がないストレートな態度や、無邪気さ、 そういう部分をいとしく思うと同時に、少し憎んでもいる。 変わってほしいという訳じゃないけれど、 私が情調不安定なときは、彼女の言動一つずつが、 心の端っこをすり減らしてる気すらする。 こうやって澱のように溜まった疲弊が、 いつか、彼女への愛情を見えにくくしたりするんだろうか。
彼女が私の手を離して背を向ける想像が、 救いのように思えてしまうとき、 絶望のしっぽを垣間見る。
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