全く予想だにしなかった人から突然仕掛けられたとして。
…恋愛と言うものに期待さえしなければ。
すぐにその『要求』を理解して、酔えてしまう私は本当に とてもカルい女なんだろうか。例えば送ってもらう車の中。 家に着いて鞄から鍵を取ろうとする私の、右手をほんの少し、 手の甲で控えめにそれを制止しようとする行動だけで。 例えば車の助手席で、運転席側から抱き留められたとして。
すぐにそれに甘んじてしまうのは、カルいからか、単に淋しいからか。 もう、断わるのも面倒くさいのよ。…だって、普通程度に好きな相手なら。
愛の量と質の見合わないキスなどに何の価値もないが、 39になる男が、私の手の動きひとつで左胸の鼓動を早めると言う事実が、 私には単純に不思議でならない。これが彼らお得意の「大人のずるさ」か、 それとも、男の我侭なのか。その、鼓動の速さが、とても哀しい。
恋愛と言うものなどに、期待などしないのならば。 どんな行動も単なる駆け引きやゲームと大差がない。…そして、
そうやって、私に勇気を出して触って来れるくせに、誰も、私に「好きだ」 とは言ってくれない。期待されているのは、カルい女であるだけか。 そんなことにだけ期待される私が、本当に哀しい。
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