どんなに長い愛の言葉より、どんなに深い徳ある言葉より、 私は名前を呼ばれるほうが、ずっと、心にじん、と来る。
私は本名も「奈々」だけど、つまり、いつだってみんなが 本名で呼んでくれる、という事が結構嬉しいのである。
「ナナ」「ナナ」って、30回くらい言われたら、それだけで ころっといくかもしれない。それくらい、名前は大切なもので、 生まれて、親から名前を与えられるということは、ここにある 自分の命を、この世に宣言されたという事と同じ意味なんだよ。 だから、そんなふうに誰かからもらった名前を、誰かに知られて 呼ばれるなんて、それはもう、自分の全てを預けたも同然なんだ。
色んなお話で、名前を呼ばれて答えたら瓢箪の中に吸い込まれ ちゃうとか、名前を知られたら呪われちゃうとか、色々あるけど、 要するにある人を特定してその人だと判別する為に一番大事な “言葉”というのが、まさしく名前という訳だね。…だから、 誰かの名前をちゃんと呼ぶっていうのは、実はものすごく呪術的 な要素が強くて、名前そのものが呪文の一部みたいになるのだと 私はそう思う。
だから呼んでね。
…昔の武士や侍が、戦う時に必ず自分の名前を名乗りあってから 戦うのもカッコよくて、憧れちゃう。やっぱり、名前は大事な ものなんだね。
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