一橋的雑記所
目次&月別まとめ読み|過去|未来
そんな感じで一つ。
そう遠くない未来に。
強い風に吹き散らかされた黄色い葉を踏み締めながら。 何処へ向かうでもない爪先を見下ろしながら。 季節に似合わない温もりに満ちた街路を歩く。
今の自分が俯き加減に歩くのは。 夜になればまた人の目を引くであろう電飾が。 其処此処のオブジェや植え込みに巻きつけられ。 陽光を集めては弾いてきらきらと目を刺すからで。 決してこの胸の中に鬱屈するものが残されている訳ではないと。 少しだけ言い訳じみた思いを。 軽いため息に乗せてそっと、道端に吐き出す。
輝かしい夏が過ぎ。 慌しい秋が終わって。 気がつけばまた、冬の中に自分は、身を置いている。 そんな当たり前のことを当たり前に繰り返す内に。 少しでも、自分は、ましな人間に為っていけるのだろうか。
無意識に左の掌で包んだ右の手首には。 冷たい鎖の感触も、それと引き換えに巻き付けられたあの腕時計も今は無く。 自身の肌の、頼りなげな温もりだけが残されている。
愛されたことを。 愛したことを。 どれほど深く心に刻んだところで。 それだけでは人は生きては行けないと分かっていても。 繰り返し、繰り返し。 出会いと別れを重ねながら。 何処までも自分は、求め続けるのだろう。
あの夏の日を。 あの雨の日を。 あの桜の日を。 あの秋の日を。
そして、あの、冬の日を。
それから、あの、春の日を。
失った心の欠片と共に、いつまでも何処までも。
それを幸せだったと心から振り返る事の出来る日が訪れるまで。 いつまでも、何処までも。
ゆっくりと歩を進めるこの足取りの下で。 季節に遅れて散り始めた黄色い葉が微かな音を立て続けている。 そう遠くない過去に繋がるその音の記憶を手繰り寄せながら。 そう遠くない未来にいつかそんな日が訪れることを。 心の何処か奥深いところでそっと、祈り続ける。
神でもマリア様でも、過ぎ去っていった面影にでもなく。 自分自身に向かって、祈り続ける。
2004.12.22.
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