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diary
2004年01月05日(月) ねないこだれだ
夜が嫌いだ。
電気を消して、真っ暗になった部屋を横切って、ベッドまで辿り着く。
冷たいシーツと毛布の間に滑り込んで、目を閉じる。
チク、タク、チク、タク
枕元の目覚時計が、次第に大きな音で啼き始める。
チク、タク、チク、タク
寝返りを打つ。まだ冷たいシーツに足が触れて、ぴくっと身体が動く。
そして、今度はゆっくりと、脚を伸ばす。
ひんやりとした感触。
チク、タク、チク、タク
夜行列車の過ぎる音が、遠く聞こえる。
がしゃん!
時計より遠く、列車より近くで、何かが壊れる音がする。
続いて罵りあうような、鋭い声。
チク、タク、チク、タク
時計よ、もっと大きな声で啼いて。
あたしは毛布を引き上げて、頭からすっぽり、隠れてしまう。
罵声は続いた。
身体を堅くして、あたしはもっと深くに潜り込む。
また、硬いものが割れる音。
Umm…
軽いハミング。
耳を塞いで、出来るだけ小さな声で、
出来るだけそれしか聞こえないように、
あたしはうたをうたう。
ママが子守歌をうたってくれなくなってから、あたしはこうして、ひとりでうたをうたうことを覚えた。
歌声がないと、眠れなかった。
前に眠れなくて、うたをうたってもらおうと、階下に降りていったら、酷く叱られて、おしりをぶたれた。
だから、ひとりでうたうようになったのだ。
バタバタバタ…
乱暴に階段を駈け登る足音がして、あたしは身を更に硬くして、口を塞いだ。
部屋のドアがほんの少し開き、廊下の光が漏れた。
ドアはすぐに閉じた。
「ねないこだれだ
わるいこどこだ
たべちゃうぞ
たべちゃうぞ」
パパのうたった子守歌。
あたしはしっかりと目を瞑った。
もう夜はたくさんだ。
今日が過ぎても、また明日の夜がくる。
それなら、もう目が醒めなければいいのに。
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サキ
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