鍋をたたく...鍋男

 

 

D tenor / C tenor - 2010年05月12日(水)


常々、 C tenor という楽器と高い音に関する苦情をたくさんお聞きするので少し整理しました。皆様の参考になれば嬉しいです。

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C pan もありですよ

もともとトリニダードではSingle Tenorは Dが普通だったというだけの話しです。
テナーはちゃんとhigh Cが鳴った方が使いよい
ひくいC はセコンドやダブルテナーに任せればよい
という事で、シングルテナーはDからの楽器が多いわけです

三オクターブ目の一番小さい音に関してはちゃんと鳴らしてない楽器が多いんですね
もちろん、びっちり作ってある楽器もあります。でも鳴らないのが多いのは確か。
それは作り手の「手抜き」とも取れますが↓こういう考え方もあります

曰く「オクターブ上の音がちゃんと鳴っていると、下の音を叩いた時によく響く サスティンも豊かになる。実際に演奏しなくても音が存在するだけで下の音を楽に演奏する事ができる。下の音がちゃんと鳴っていると上の音も大きな音が出る。お互いに反響管や反響板のような役割をしているといえる。一枚板の上に複数の音を配置しているスティールパンという楽器の一番の特徴でもあり、独特の響きが出る根本でもある。
三周目の音に関しては、パノラマの曲でもほとんど演奏されないが、その音がそこに存在することに意味がある。」
つまり「演奏する為の音ではなく、響きを作るための音なので、実際に演奏する音ほどきっちり作り込む必要はない」という考え方。

こういう考え方がありますよ、という事で、私はこう考えている、という事ではありませんので、間違えないでね。
逆にいうと、 C tenorであっても、ちゃんと鳴らせばhigh Cも出るのです。うちで出しているC tenorは三周目もちゃんと叩けば鳴るようにしてからお出ししています。

スティールパンラボ・キュレップの理念
「トリニダードの文化をできるだけ忠実に皆様にお伝えする」から少し はずれる事になります。トリニダードの製作者、チューナーの意図からずれたチューニングをするわけですから。
しかし、今現在の日本では C keyの曲が多く演奏される事も考えると、 C tenorが普及している事もいたしかたありませんし、やはりhigh Cが欲しいのもプレイヤーとして自然な欲求であると思うのです。

基本、三周目の音は使わなくても演奏できるようにオクターブ下にずらして演奏されることをおすすめしますが、キュレップでお買い上げいただくのであれば、 high Cに関しては満足いただける音を作って差し上げる事を約束します。
(最低音が Dであるもう一つの理由は、 トリニダードの楽曲がG,D, Aなどのキーが多い事に由来すると思われます。もちろん、 FやCなどの曲もたくさんありますが、多くのカリプソニアンがギターやクアトロなどの弦楽器で楽曲を作る事を考えると自然な事と思います。
G keyの時に低い Dはやはり欲しい音です。
 -ドミナントのルート-
それに比べると、low Cはそんなに必要のない音と言えるかも知れません。
 -サブドミナントのルート、もしくはドミナントの7th-
キーが D, Aの場合は、C音はスケール内にも存在しません。
パノラマスタイルといわれる楽器の最低音を見てみましょう
Single Tenor --D
Double Second -- F#
Double Guitar -- C#
と、軒並み#系の音が並んでいます。これは偶然ではないですね。
あ、音域を増やしたソロプレイヤー用の楽器ではもっと低い音から始まっているのもたくさんあります。混同されないようご注意下さい。)

正直、トリニダードで楽器を買うのであれば、シビアに選ばないと なかなかいい C tenorには会えません。
日本の大手の業者が C tenorを多く発注するので、最近では C tenor を作る技術もかなり蓄積されてきました。いいパンが多くなってきたのも事実です。
ただ D tenorの方が確実に歴史は古く、作りやすいという事も事実です。
二枚も大きな音を作らなきゃいけないので、その分確実に深さを出して面積をかせがなきゃいけない。
 →同じ分量の鉄から作られるとすると、どうしても薄くなるので、響きがぺらくなる。
音と音のすきまもできるだけ効率よく、せまくしなきゃいけない。
 →調律がしにくい。
などの問題も少しずつ解決しています。 D tenorでもぺらい音のはいっぱいありますしね。

何回も言いますが「三周目は鳴らないのが当たり前」と言っているわけではないですよ。「トリニダードの職人がそういう作りをしているのには理由がある」と言っているのです。うちでは鳴るようにしてから出してます。(うちの楽器なのに鳴らないという方は鳴るように演奏していないという事です。私が演奏すると鳴るわけですから。)

三周目は演奏する音ではない、と仮定しましょう。でも high Cは欲しい。
であれば、当然 C tenor ではなく、 D tenorになりますね。
これはおわかりいただけると思います。

三周目がきっちり鳴る楽器なのであれば、また常に頼めるいい調律師がいるのであれば、
C tenorもいい楽器だと言えるでしょう。

問題は
こういった事をふまえずにに「 C tenor がスタンダードである」とか、「三周目がならない」とか言ってる人です。だまされて買っちゃった人はほんとかわいそうですし、各音を同じ叩き方、同じスティックで均等になるものだと信じてる人もかわいそうです。

うーん、どうしたらいいんでしょうね

とりあえず、うちに持ってきていただいたら、持ち主の了解を得た上で、音の鳴りを作ることはしています。またスティックのチューニングの指導や、叩き方についても教えて差し上げています。

それくらいしかできないよなぁ
 


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