tuining 概論-1/ハンマー - 2002年04月06日(土) スティールパンはどうやってチューニングするの?と聞かれることはしばしば。 糸巻きもネジもなくて、そもそもなんでこんなきれいな音が出るのか、ぱっと見ではよくわからないよね。 そんな楽器なので、その疑問はしごく当然。 てっとりばやく言うとハンマーで叩いてチューニングします。 こういうとまた「野蛮な楽器」というイメージにつながらないかと心配になります。 実際には叩く位置が数ミリずれただけで全く逆の効果が出て、それを戻すのにまた何十回とハンマーを入れなければいけなくなったりするという、とても繊細な職人技の仕事です。 テナーパン、セコンド、ギター、チェロ、ベースとパンにはたくさんのパートがありますが、ハンマーは各楽器の音程に合わせて違う物を使います。音程の似通った物については、同じハンマーを使う場合もあります。 私の場合はテナー用(450g)からベース用(3kgと4.5kg)まで、主に使うのは5-6種類、それ以外にサブとして5個のハンマーを持っています。 ハンマーはホームセンターで売っている物で充分ですが、そのままでは角が立っていて、演奏面に傷をつけてしまうので、使えません。角を取り、アールをつけます。その時にでこぼこがあると、当たる角度の微妙なずれでスムーズな曲面を作れませんので、ハンマーの削り込みにはとても気を使います。 逆にハンマーはチューナーにとって手の一部のような物。作家にとっての万年筆、プログラマーにとっての自分のコンピューター、パンマンにとってのスティックのような物。使い慣れた物はとても大事にしています。 私の場合は、さらに打面へのあたりを均等にするために、アールをつけたハンマーに、紙テープや、ゴムを貼り付け、使っています。アールをつける具体的な話については、私の別ページ「ミニパンの作り方」で紹介してますので、ここでは割愛させていただきます。 最後にひとつだけ注意を。 素人の方、(パンチューニングについての素人の方)が細かい理論もわからないまま、闇雲にハンマーを入れることだけは、絶対さけていただきたく思います。もともとがいいパンでも、不具合なへこみを一つ作ってしまっただけで、音質は戻らなくなると考えて下さい。へこみは小さくできても元の状態に戻すことは不可能です。音質を戻すのにはそれなりにテクニックがありますが、時間も労力も大変使います。そういうパンを今までいくつか、依頼されて、大変閉口しました。それ以来、ご自分でハンマーを入れたパンは、基本的にチューニングの依頼は受けておりません。 随時チューニングについてご紹介していきますが、決して「自分でチューニングしたい方へのテキスト」を目的として書いている物ではありません。これを読んでご自分でやってみようとはなさらないで下さい。理論と実践は異なる場合の方が多くあります。 このテキストは逆に、「パンのチューニングはギターやピアノのチューニングとはまるっきり異なる、特殊技術である」との認識を深めていただき、皆さんに正しい知識を持ってもらおうという目的で書いております。ちゃんと勉強せずにハンマーを入れて後悔されている方々が、事実いらっしゃいます。これ以上そういう方を増やさない為に。 -
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