取材心得 - 2002年02月13日(水) 取材をする人の心得みたいだな。取材を受ける側の心得です。 通常、新聞社などの原稿は、発行前に外部の人間の目に触れることはない。 テレビ、ラジオならまだ自分が話したことなので、極端に情報がネジ曲がることがない。それでも、プロデューサーの意図通りの言葉をピックアップして、編集されれば、「変なことを言う私」をブラウン管で見てしまう可能性は、ないとは言えない。幸い今までひどい目に会ったことはなかったです。これは「さいわい」なのだろうと思う。 活字はさらに怖い。記者の言葉で書くからだ。それは私の言葉ではなくなっていることもある。どちらにしろ、メディアというものは、嘘をつかないという事を前提に、見聞きされているものだから、出す情報に少しでも歪みがないように気を使っている。 スティールパンを演奏し始めの頃から、幾度となく新聞の取材を受けた。最初のうちの記者さんの「あたり」が良かったのだろう。みなさん、とてもいい記事を書いて下さった。 そんなことにもある程度慣れたころ、ある大手新聞社の依頼でお話をさせてもらったときの事だった。 「セミプロといわれる方たちと一緒にやって、自分の考えてる音が、その時のメンバーではどうしても出ない。たまたま高校の先輩や同級生とセッションしたときに、いとも簡単にその音が出てしまった。今まで、ぜんぜん気にしてなかったところに、人材がいた。それからはいい音を出すために、彼等とやることにしています。」という話をした。 記事になっているのをみたら、「同級生や先輩と組んでる仲良しバンド」という表現になっていた。前半のわたしの苦悩はまったく書かれていない。もうすでに演奏で稼いでいたので、こういう書き方をされるとほんとうに困ってしまう。アマチュアスピリットにあふれた演奏を売りにしている、悪く言えば、下手でも仲良しでやってるから、応援してね、ギャラはなくても演奏できればどこでも行きます、というバンドにとられかねない。 それ以来、それこそ肩書きで信用せず、大手だろうが、なんだろうが、できるだけ、一度目を通すことにさせてもらっている。無理なときは取材自体をお断りする。それが仕事だといういい勉強になった。 楽器に関して言えば、もっとシビアになってしまう。 例えば「シングルテナーパンは、28音の音域を持つ」という文章があったとしよう。僕のスティールパンは28音だが、実際には29音のものも多い。30音あるものもある。そこで、記事に書いてもらうときには、字数制限もあるので、「約2オクターブ」「2オクターブあまり」という表現にしてもらう。 重箱の隅をつつくような話だけれど、まだまだ目にする機会の少ない楽器なので、活字にするときは慎重にしたい。そこを記者さんにどれだけ解ってもらうかが、一番大事だ。 私の文章は、「だいたい」とか「ほとんど」とか、どうも曖昧さを残して、歯切れが悪いと、自分でも感じている。これは、自分自身のこと以外は明確に表現することを避けているからだ。ある意味「逃げ」ているのだけれど、きっちりとした取材をするためには、時間が必要。書くのが本職でないので、ある程度は許していただきたい。 それでも、日記なり私のWebSiteの方でおかしな記述、表現がありましたら、遠慮なく、私、鍋男までご連絡をいただけるとありがたく思います。 もとい。 「月刊 廃棄物」という業界紙の取材を受けた時は大変だった。リサイクルと環境保護に力を入れている彼等の中では、「ゴミ」「再生」という言葉は非常に大きなキーワードだ。注目するあまりに、美しくとらえすぎるきらいがあった。 タイトルがすごい。「カリブで生まれたゴミ楽器」だったかな。40ポイントはあろうかというでかい字で、「ゴミ楽器」だ。これはまいった。 「ゴミである使用済みのドラム缶から、こんなに美しい音色の楽器が再生されている。まるで魔法のようだ」というような事をいいたかったのだと思う。 しかし、記事を読まず、タイトルだけを見ると、「役に立たない楽器」と解釈できる事、っていうか、普通そう読むだろって事に気付かない。「ゴミ」という言葉のイメージが業界内で美化されているのだろうか。 ちなみにこの時の記者の方はボランティアの方で、職業記者の方と同じようには考えていません。あくまで例として。 最初から校正をさせてもらう条件で取材を受けたのだけれど、Faxのやりとりを10回あまりしなければ、いけないという、誠に手間のかかることになってしまった。で、私もボランティアだしね。 もひとつ、ちなみに、特殊な例をのぞいて、テレビでも新聞でも、ほとんどの取材では、ギャラは発生しません。出演依頼と取材の依頼は、まったく別物ととして扱われます。 もともと、どんな記事でも、記者の主観も多少入っていると思って読むんだけど、こういう経験があると、どうも深読みをしてしまう。それもそれで厄介だ。何事もやりすぎはいけませんね。 -
|
|