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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年02月21日(月) 自助グループとは? 竹内達夫先生のお名前は存じていたものの、直接知己を得る機会はいままでありませんでした。
ところが昨年11月にIさんの結婚記念のパーティでお目にかかって以来、書簡のやりとりなどあって先生の考えに触れる機会が増えました。先日の秋本病院での研修会でもお話しをうかがうことができました。
竹内先生は医師にして依存症の当事者でもあります。全断連の顧問をされているので、断酒会の応援団の先生だとばっかり思っていたのですが、十年ほど前に保健所所長を定年退職されて以来、様々な領域で活動されているそうです。断酒会に限らず自助グループ文化全般に造詣の深い先生です。
先生のお話によれば、自助グループについては、国際的な定義は定まっていないものの、コンセンサスは得られつつあるそうです。
自助グループの4要件
・直接対面
・直接交流
・相互支援
・小規模
これからすると、直接対面することのないネット上の活動は自助グループとは呼べなくなります。(それから、メンバー同士の直接交流をいましめる某グループもだめなのかな)。
小規模という定義からすると、回復研では、何百人と人を集めて体験発表を聞く集会をやってますが、この集会だけしかやってなかったら自助グループとは呼べないわけだ(メンバーがやっている小規模な勉強会は当てはまるかな)。先生はこの「小規模性」というのを強調されていました。
ところで、自助グループという言葉は self-help group の日本語訳なのですが、最近「自助」という言葉を回避して相互援助グループ(mutual aid group)という言葉が推奨されています。
ミューチャル・エイド(相互支援・相互援助)という言葉は、2007年のホワイト先生の講演でアメリカでの新しい考え方の紹介として初めて聞きましたが、その後いろんな人の口に上るようになっています。今回も先生からその話が出ていました。
なぜ「自助」という言葉がふさわしくないのか?
「自助自立の精神」とか「自助努力」という言葉があります。自助努力を求めるという言葉は「自分で何とかしなさい」という意味です。自力・独力ということです。
しかし自助グループに来る人というのは「自分では何とかならなかった」人たちです。自助努力で問題解決できなかったからこそ来たわけです。そういう人たちの集まりに対して「自助」という言葉はふさわしくありません。支援・援助が必要な人たちがそうした支援・援助を授かる場所です(また同じ人が他者に対して支援・援助を与える場所にもなります)。
ただし「自助グループ」という言葉すらまだ世間に定着していない段階で、それを新しい言葉に置き換えることには戸惑いもあります。当面は自助グループという言葉が主に使われることでしょうが、「自助(相互援助)グループ」のような括弧書きも始まっています。
長い目で見れば、アディクションの分野でセルフ・ヘルプ(自助)という言葉は廃れていくのではないかと思います。
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