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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年11月18日(木) 特別なニーズのために ビッグブックを使ったステップのやり方に出会うまで、僕にとって依存症は「難病」でした。断酒は可能であっても、またいつ飲んでしまうかも分からないリスクが大きい病気だと捉えていました。また、AAでは後から来た仲間を手助けしろと言われるのですが、どうやって手助けして良いか確実な方法を知りませんでした。とりわけ最初のスポンシーでの手痛い失敗以来、僕はスポンサーになることに臆病になっていました。
ところが何の運命のいたずらか、2003年に始まった「(関東)ビッグブックの集い」という集まりに巻き込まれていくことになります。これが僕とビッグブックのやり方との接点でした。2004年には表形式での棚卸しを2回人に聞いてもらっています。2005年にはスポンシーと一緒にビッグブックを読み合わせての分かち合いを試みたのですが、この時は彼を回復に導けず、後にスポンサーシップを解消しています。JoeMのやり方を学んだ僕は、2年後に同じ人にこのやり方を試し、これがうまくいったのです。
それから3年、数人にこのプログラムを手渡すことができました(中にはまだ途上の人もいます)。限りある時間の中で自慢できるような実績ではありませんが、僕は手応えを感じています。自分はこのやり方を深めていけばアルコールに対して安全だし、問題を解決した人たちの共同体も成長していくでしょう。ビッグブックの集いは2008年に活動を終えてしまいましたが、それ以外のいろんな流派?の人も含めて、いまやたくさんの人たちがビッグブックのやり方でステップをやり、それを伝え、実績を積み上げています。
12ステップにはアルコール依存の問題を(他の依存の問題も)解決する力があると確信するようになりました。僕は7年前、8年前とは違った気持ちでAAをやっています。
そのように気持ちが変化すると同時に、スポンサーとしてステップを伝える以外の能力も必要であることに気がついてきました。例えばステップが途中で止まってしまう人がいます。その原因を「やる気の不足」で片づけてしまっていいのでしょうか。特別なニーズを抱えている人がいるのではないでしょうか。
僕としては(依存症の問題を抱えていたとしても)なるべく普通の生活をしたいと思っています。同様に他の人たち(スポンシーとか)にも、なるべく普通の生活ができるようになって欲しいと思っています。働いて、家族と一緒に暮らし、社会の中で責任を果たしていって欲しいのです。もちろん、現実には制約があるし、最初はミーティングだステップだと、普通とは違った生活かも知れません。とりわけ1年目には集中的にミーティングに通って欲しいと思います。すべてが人並みになるわけではありません。
ステップを使って回復したとしても働くことが難しい人がいます。それはステップでは解決できない特別なニーズをその人が抱えているということです。それはメンタルな健康問題かも知れません。発達障害だとか、ひきこもり、トラウマかもしれません。もちろん、その専門家になる必要はありません。いろんな問題についてよく理解し、スポンシーがその問題を抱えていたらアドバイスをし、その分野の専門家にうまくつなげてあげられることが必要なのです。
「スポンサーの役目はステップを伝えることだけだ」と言う人もいます。それでもいいのかもしれません。依存症以外に問題を抱えていない「純粋なアルコホーリク」ならば、ステップを受け取るだけでいいのでしょう。それがボリュームゾーンにちがいありません。
しかし、AAには依存症以外の問題を抱えた人(double disorder=DD、重複障害)も結構たくさんいます。専門家のケアを受けている人も少なくありません。僕が最近発達障害に注目しているのも、それがいままで見過ごされてきたのではないかと考えているからです。大人の発達障害を診断できる精神科医は日本にはまだ少ししかいません。だから非定型うつ病、躁うつ病、人格障害などと誤診を受けてきた可能性があります。あるいは病名もつけられず、単に回復しない(するつもりのない)依存症者としてきたり、ステップをやってもその効果が現れない・現れにくい人として扱われてきたということも考えられます。
ビッグブックのステップが始まる前にもAAは存在し、そこでそれなりに多くの人たちが回復してきました。そこで回復できなかった人には「やる気がないから」というレッテルが貼られてきました。そういう不適切なレッテルを貼った人たちには、自分たちのやり方が万能であるという価値観を心のどこかに持っていたに違いありません。
ビッグブックのやり方が広がって、より多くの人が回復できるようになりました。しかしそれですべてがカバーできたとは思えません。こんどはビッグブックのやり方をしている人たちの中に、「自分たちのやり方が万能である」という価値観が忍び込みつつあるようです。こっちはこっちで、回復できなければ受け取る側に問題があるかのように捉えられてしまうことがあります。(そういったケースのフォローアップを2件やった)。
歴史は繰り返す、ということでありましょうか。
僕もこの3年間の間に1件明確な失敗をやらかしています。それをスポンシーの資質の問題として片づけては、僕は進歩できないと思います。それともう一つ、発達障害については、僕はニッチな分野を相手にしているのだと思っていました。しかしこれは意外なボリュームゾーンかもしれないと考えを改めているところです。
自分のスタンスはどうあるべきかを考えながら書いたので、いつもより長い時間がかかりました。
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