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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年04月21日(水) 刑法39条 刑法は犯罪に対する罪を決めていますが、同時に様々な理由で刑を減免しています。なかでも目立つのは責任能力がないものは罰しないという規定です。
一番分かりやすいのは14才未満の少年の罪を問わない刑法41条の規定。極端な例を挙げると、ロシアで両親が泥酔している間に3才の姉が新生児の弟を殺してしまう事件がありましたが、3才の少女の罪を問えないことは常識的に理解できます。
すでに削除された刑法40条は、いん唖者に対する減刑を定めていました。聾唖教育が未発達だった時代には、聴覚障害者は言語の獲得が難しく、そのため精神的に未発達な人が多かったのがこの条文の理由ですが、教育の発達した現代では聴覚障害者だからといって一律に減刑の対象にする必要がなくなったというわけです。
刑法39条は、心神喪失者は不処罰、心神耗弱者は減刑と定めています。最近は重大な事件が起こると、弁護側の主張の中に「心神喪失による無罪あるいは減刑」が含まれていることが珍しくなく、判決が責任能力の有無をどう判断するかが注目されます。それに関してよく聞く話が、精神障害者の犯罪のほとんどが不起訴になるという噂です。実際僕もその噂を信じていたのです。
うつ病の当事者として体験発表を依頼されたことがあり、その時に控え室で昼食を食べながら精神科医の先生の話をうかがいました(ようは雑談を脇から聞いていただけ)。話題は精神障害者の犯罪についてで、その9割が不起訴になる現状を嘆く話でした。もちろん、先生は9割が不処罰になることをけしからんと言っているわけではありませんでした。ほぼ自動的に不起訴になる仕組みでは、正式な裁判によって無罪(犯罪の事実がない)ことを証明する機会を奪ってしまう、障害者の裁判を受ける権利が侵害されていることを問題として取り上げていたのです。
実はこの9割という数字は、犯罪白書に心神喪失・心神耗弱と認定された者だけを母数にした数字として9割と掲載されたものでした。ところが、この9割という数字が精神障害者全体に拡大されて一人歩きしてしまったようで、僕も誤解していました。
精神障害者「不起訴9割」は誤解
http://homepage2.nifty.com/whitehole/db/4book/020703yomi.html
全体の起訴率が58%に対し、精神障害者の起訴率は46%。
殺人と殺人未遂に限ってみても、全体が58%、精神障害者は50%。
確かに一般に比べれば起訴率は低くなっていますが、極端な差があるわけではありません。
ひょっとするとあの時の先生の話も、精神障害者全体ではなく、心神喪失・心神耗弱という認定を受けた人だけに絞った話だったのかもしれません。(だとすれば僕がバイアスのかかった聴き方をしていたわけです)。確かに単純に不処罰とするのではなく、犯罪の事実があったのかどうか裁判で事実認定をしたあと、有罪であった場合のみ減刑する仕組みが本来であろうと思います。
実は以前AA関係の知り合いが泥酔して暴行事件を起こし、依存症での入院履歴もあったおかげで不起訴になったことがありました(依存症以外の病気はなかったはず)。その後彼は規定によって強制入院となり(医療観察法の施行前だったものの)数ヶ月で退院というわけにはいかず、久しぶりに顔をみた頃には拘禁症で見る影もない状態でした。結局外で暮らすことができずに病院に戻ってしまいました。もし彼が懲役に行っていたら結果は違ったかも知れないと思うのです。
というわけで、特に結論を導くでもなく終了。
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