心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年04月10日(土) 曖昧で宙ぶらりん

ビッグブックを使ったステップミーティングに慣れてくると、『12のステップと12の伝統』(12&12)という本を使ったステップミーティングに違和感を感じるようになってきます。なんかステップについて話しづらいのです。

もちろん、普段のミーティングで自分がちゃんとステップの話ができているか? というと、そこは正直心許ない部分もあります。が、それはともかくとして(華麗にスルー)、12&12のミーティングでステップの話をするのは難しいのです。例えばステップ6の文章の先頭には、「これは大人と子どもを分けるステップです」とある聖職者が言った、と書いてあります。

それを読むと、僕の頭はいきなり「大人って何だろう、子どもってなんだろう?」と考え出してしまい、自分にはこんな子どもっぽい部分があります・・みたいな話をしてしまいます。けれど「大人とは何か」は、そのすぐ次の段落に書いてあります。自分の欠点すべてを神に取り除いてもらおうと、繰り返し繰り返し勉める人が大人なのだと。だからそれについて話をすればいいわけですが、つい焦点を外してしまうわけです。

それは道具を替えたため、新しい道具(ビッグブック)に自分がなじんでしまい、古い道具(12&12)の使い方を忘れてしまった、というわけではなさそうです。僕は12&12で何年もステップミーティングをやってきましたが、あのころは「何にも分かっちゃいなかった」。つまり12&12を使いこなせていなかったのです。

僕の経験から言えることは、薄っぺらな16ページのミーティングハンドブックの次に、いきなり12&12でステップを学ぼうとするのは無理があるってことです。

ステップはビッグブックで、伝統は12&12で学べるにしても、概念の本はあまり読まれていません。確かにあまり用がない気がしますが、ここは読んだ方が良いとお勧めしたい箇所がひとつあります。それはビルが「妥協による前進の必要性」を説いているところです。

アル中というのは、曖昧なものや矛盾しているものが嫌いで、ゼロか100かの両極端、何かと白黒ハッキリつけたがります。理想を100%実現したい、しかも今すぐ。理想が5%や10%しか実現できないなら、そんなの意味がないからやめちまえ、となります。例えば働くんだったらマトモな仕事(正社員とか)、それが無理なら全く働かない。時給数百円の仕事を日に2~3時間することから始めてみよう、とはならないわけです。

宙ぶらりんで曖昧な状態に耐えられない、というのは精神状態の悪さでもあり、発達障害的でもあります。アル中になる前から発達障害を抱えた人が多いのか、アルコールを飲み続けた結果発達障害類似の状態になったのか。

それはともかく、両極端に走りがちなアル中さんたちが集まって何かをやろうとすれば、イライラが募ることになります。実はAAの委員会で僕はイライラが募っていました。物事がスムーズに進まないことに苛ついていたのです。けれど一日を振り返って気がつきました。物事がスムーズに進むという「僕の理想」が今日の委員会で(=今すぐ)実現しないことにイライラしていたのだと。次回に持ち越しになった話もありましたが、ともかく議論に進展があったことに目を向けられないのは、確かに自分本位の考え方です。

宙ぶらりんで曖昧な状態に耐えたくないので、今すぐ白黒ハッキリつけることで心の安息を得ようとする。そうした自己中心性を取り除いて欲しい、と願うことから始めるしかありません。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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