心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年12月09日(水) 自助グループは必須か?(その2)

僕はある種の人たちに対しては「自助グループに行け」とうるさく言わないことにしています。自助グループは人と交流する場所なので、精神状態が悪く人との交流でさらに悪化してしまう人の場合には行かない方がいい場合もあるからです。うつ病や統合失調の具合が悪い場合、性被害などの重いトラウマがある場合です。そちらが悪化して入院した、自殺したとなると断酒どころではありません。

ただ、飲酒によって生じた抑うつ(アルコール性抑うつ)の場合にはそういう配慮は必要ありません。これは断酒後1年以上続くこともあります。となると、アルコール性抑うつと本来のうつを鑑別する必要がでてきますが、それほど難しくはありません。本来のうつの人は、「うつだからミーティングに行けない/行けなかった」という話はまずしません。これはアルコール性抑うつの症状を自助グループに行かない言い訳に使っていると思ってほぼ間違いありません。自殺しちゃうほど危ないのは、「会場にいるだけでとても辛いのですが、いつか良くなると思って毎日通っています」と言う人のほうです。辛いことでも行かねばと思って続けてしまうところが、いかにもうつなのですが、これを見落とすといきなり自殺されてしまったりします。

過去に自殺未遂のあるケースはリスクが高いのはわかるでしょう。それから、アルコール性抑うつの場合には抗うつ剤の効きが良くないので、他の薬が使われます。となると、抗うつ剤を飲んでいてその効果が出ている場合は、本来のうつ病について気をつけた方が良いことになります。うつ病が悪い場合には自殺する気力も出ませんから、自殺はある程度良くなってから、例えば働きだしてから起こることが多いのです。「元気になってきたあたりが危ない」ということは肝に銘じておいて欲しいことです。

医者もそういう事情を勘案して、自助グループに行かせる・行かせないの判断を下しているでしょう。医者だって患者に自殺されたくはない。アルコール依存症は死に至る病気とはいえ、一回の再飲酒で死ぬ確率はそれほど高くありません。「行かなくて良い」と言われる人の場合、再飲酒のリスクより、自殺を防ぐベネフィットのほうが大きいわけです。そういう人に無理に自助グループを薦めるのは禁忌で、症状が改善したときに改めて判断されるでしょう。

そちらの症状が改善すると、医者が自助グループを薦めるようになります。これをご本人は症状が悪化したと判断されたからと勘違いして医者ともめた例がありました。良くなっているのに追加の治療が必要だといわれて不本意だったのでしょう。しかし、良くなったからという根拠があってのことです。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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