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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2004年05月23日(日) 予備校 下の子供は保育園の年長さんです。
でも、まだオムツが取れていません。
親は早く取りたいのですが、本人が取らせてくれないのです。
昼間はオムツをしていません。夜、お風呂から出てくると自分でオムツをし、その上にパンツをはいています。どうやら夜中に起きてトイレに行くのが面倒らしく、オムツをしていれば朝までぐっすり眠れるという魂胆らしいのです。気温が上がって、ものの乾きが良くなる夏場には、オムツなし作戦に出る予定です。
アルコール専門病棟に大人用オムツは欠かせません。
禁断症状(離脱症状)のひどい人は幻聴や幻覚を見るのですが、それが何日も続く人がいます。いくらカギのかかる保護室に入れておいても、中で暴れていると怪我をすることがあります。しかたないのでベッドに沈静帯で固定されてしまいます。そこで必要になってくるのがオムツです。
病院がオムツを用意してくれるわけじゃありません。でもそんな状態で本人がオムツを買出しにいけるはずもないので、看護婦さんが病院の売店から「ツケ」で買ってきてくれるわけです。
長い人だと一週間以上も保護室の中で叫びつづけているので、「人間の生命力ってすごいなー」と感心してしまいます。
保護室から病棟に戻ってきた人のベッドのしたには、余ったオムツが置かれています。本人は恥ずかしく、そんなものがベッドの下に存在していることすら許せないのですが、看護婦さんは処分することを許してくれません。なぜなら「もったいないから」であります。その屈辱と後悔が、本人に「二度ともう飲まない」と固く固く誓わせるのですが、次の外泊の時には酔っ払って病院に戻ってきちゃうわけで、オムツは無駄にならないのであります。
当時は保護室の中で叫んでいるのを狂気だと感じていました。しかし「二度と飲まない」という固い誓いを簡単に破ってしまうことが真の狂気であることに気が付くのは、ずいぶん後であります。
僕は病院でオムツの世話になったことはありませんが、飲んでいた頃は布団の中で寝ながら小便してしまったことは一度や二度ではありませんので、あまり人のことは笑えません。
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