心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2004年05月21日(金) 長文

二年前の夏に汗水たらして働いていた自動車工場が閉鎖になるというニュースが飛び込んできました。いい金づるお客様だったのに残念であります。リコール隠しのニュースは無関心で見ていましたが、世の中はいろんなとこまで影響が及んでいくものですね。
ビールに「妊婦に悪影響」と表示するのも、所詮はメーカーの責任逃れという話がありましたが、そんなものなのかもしれません。

僕は飲んでいた頃、国民年金を払わないどころか、健康保険すら払ってなくて、保険証持ってなかった時代もあります。まあ医者に行けないのも自業自得だったんですが、一番金がかかった自殺未遂の時には、せっかく保険証を持っていたのに使えませんでした。

会社の同僚が昨年から僕と同じ精神科医にかかっているのですが、「ちっとも良くならない」という理由で自主的に治療をやめてしまいました(うつ病者は基本的に病識がない)。薬もなくなったので、そのリバウンドが来て仕事になっていません。周りの皆に「他の医者でいいから行きなさい」と無理やり薦められ、リバウンドだけ抑えてもらいに行ったつもりが、結局治療を再開することになりました。「今度の医者はすいていて、ゆっくり診てくれるのでいい」そうです。

僕がこの精神科医にかかるようになったのは、もう十年近く前です。その頃は確かに待合室はすいていました。最近は混んでいることが多くなり待ち時間が長くなっています。人気が出たのか、精神科に対する偏見が減ったのか、世の中が殺伐として病気の人が増えたのか、理由は僕にはわかりません。

別の同僚は面白半分に「オンラインうつ病診問」を笑いながらやっていたのですが、最後に「あなたは仮面うつ病の可能性大です」と出て真っ青になっていました。まあ、頸肩腕症候群と一緒で一種の職業病であります。

最近は疲れているのに夜眠れません。昨日も眠れたのは朝4時ぐらいだったでしょう。時期が関係あるのか、妻もうつで朝起きられません。小学校に行く子供の面倒は義母がみてくれています。どうしても今日しなければならない仕事があるわけじゃないので、過労気味なら休んでもよかったのかもしれません。でも、休みたくはなりませんでした。別に日に休みたいから。
ぼうっと仕事せずに座っていても一日は終わるのですが、なぜかきちんと働いてしまいます。でも、頭の中に鈍い塊があるような感じは取れません。
こんな状態でミーティングに行くのは馬鹿げていると思ったので、まっすぐ家に帰りました。そこで妻がまだ寝ているのを見つけ、子供たちが「パパご飯」と言って寄ってきた時に、僕の中のなにかがブチンと音を立てて切れてしまいました。

義母の「夕飯はカレーを用意するから、子供に食べさせてあげて、子供をお風呂に入れてくれるわよね」という言葉に、「あー、はいはい」と素直に答えることができません。
普段だったらお安い御用ですが、今日の僕には無理でした。こんなことならミーティングに逃亡していたほうが良かったという後悔がよぎります。
そういえば今日は医者に行く日だったのに、すっかり忘れて帰ってきてしまいました。急いで行ってみると、普段だったら混んでいる駐車場に車が一台もありません。クリニックのドアは閉まっていて、診察終了時間が30分繰り上がったことを告げる張り紙がしてありました。
帰る道すがら、この数十分の間に、なにか事態が改善していないか期待したのですが、何も変わってはいませんでした。

僕は何もかも放り出して逃げ出したくなりました。でもどこにも逃げ場はありませんでした。感情の二日酔いと、ワーカホリズムと抑うつが、たった何週間か数日のあいだに、僕をがけっぷちまで追い込んでいたのです。ステップ4・5で気がついたのですが、僕は追い詰められるといつも酒の中に逃げ込んでいました。酔いつぶれている間に、誰かが事態を収拾してくれるのを願っていたのですが、たいてい物事は悪い方向からもっと悪い方向に向かっただけでした。
長年の習慣がぶり返していれば、病気もぶり返していたでしょう。ただ何かが「そっちの道は危ないよ」とささやいてくれたので、僕は違う方向に向かって逃げ出しました(やっぱり逃げるんかい)。

「パパは疲れているから」と言って僕は子供の世話を放棄して寝てしまいました。カレーを持ってきた義母に大声で起こされたとき、僕が取った行動は「寝ている妻を強引にゆすり起こす」でした。眉間に深いしわを寄せた彼女が用意してくれたカレーを食べてまた寝てしまい、次に起きたときには、入浴後の子供たちが布団に向かうところでした。

「助かったよ、ありがとな」と言ったとき、妻は怪訝な顔をしていました。あの時僕の心を去来した感覚を、彼女に説明してみても多分理解してはもらえないでしょう。
明日はゆっくり休んだほうがいいという提案をもらっているので、ミーティングには行きません。日曜日は疲れる予定が入っていますし、月曜日は医者に出直さなくてはいけないので、ミーティングには行かないかもしれません。
だから文章にしてここに下ろしておきました。少しは楽になりました。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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