心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2003年05月13日(火) 巧妙な「そいつ」

それはほんの数秒間の出来事だった。

大月のジャンクションを過ぎたあたりから、「そいつ」が後方にいたのはわかっていた。だが、そいつの挙動があまりに大人しかったために、私は油断をしたのだろう。大月付近はトンネルが多い。ヘッドライトを点けっぱなしにした間抜けも珍しくはない。

普段だったら先を行くB4を追いかけてコロニーを作るところだが、今日の私はあまりにも疲れきっていた。それでも走行車線に収まるほどのんびり屋にはなれない。完全に気を抜きはしないで、ちらりちらりとルームミラーに目をやりながらも、「そいつ」が近寄って来ないことで、私の不安は次第に融け去っていった。

笹○トンネルの入り口手前には、「制限時速70Km」と大書きされた看板が立っている。
そいつを無視して減速せずにつっこむと、まずR450のゆるやかな右カーブを回っていった。「そいつ」は完全に視界から消え去った。数秒後長い直線に出ると、前方の追い越し車線は見渡す限り空いていた。アクセルを踏み込もうとする前に、もう一度だけルームミラーに目をやると、赤色灯を旋回させた「そいつ」がすぐ後ろにへばりついていた。たぶんこの瞬間を狙っていたのだろう。

私はそれでもめげずに、最後の努力を試みた。ブレーキを踏み、左の混みあった走行車線の車の隙間に鈍重なグラシアを押し込む。しかし私はさらにミスを犯した。ブレーキを踏みすぎてしまったおかげで、前に車一台ぶんのスペースができてしまった。「そいつ」はすかさずそこへ滑り込むと、「速度違反」「指示に従え」とLED表示で私に指示を下したのだった。
○子トンネルの何と長いことだろう。

「103キロ、33キロオーバーですね」

(左に飛び込む前にあわてて計りやがったな、走行車線の速度じゃねえか)

私の生まれてはじめての交通違反は、点数は3、反則金は2万5千円という結果だった。
はるか後方から近寄ってくる存在には慣れていたのだが、今回は敵も巧妙だった。
だが、私もこの経験を次回に生かしていくだろう(反省まるでなし)。

それにしても、あの人差し指をべったりと突かされる経験は、何度体験しても嫌なものだ。
(他に何やったんだよ、オイ)


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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