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路地の記憶 - 2001年11月11日(日) 子供の頃から、遠くへ続く道や鉄道が好きだった。これをどんどん進むと、京都まで行けると聞くと行きたくなった。 私にとって、どこかへ行く事自体で癒されていくようだ。 英昭と初めてケンカをした日は、新潟まであてなく出かけた。電車に揺られながら、どっちが悪かったかと悶々と悩んだ。そして、終着の駅でもまだ収まらなかった私は、水上で1時間の電車待ちをして、もう少し先まで行って見ようと思った。 彼はおろか、親にもなにも言わずに出てきたから、今晩中には帰らなければならない。お金もない(18切符一枚)。だけど、まだ帰れなかった。 水上で、初めての雪を見た。根雪だったけれど、すくってみた。町の人も誰もいないし、目だった暇つぶしの場所もなかったが、あっという間に1時間は過ぎていた。 次の電車は新潟まで続く長い列車だった。期待していた雪は降ってこず、後に引けない気持ちだった。 駅で買った時刻表を開いてみると、越後湯沢で降りて、反対の列車に乗らないと今日はもう帰れないらしい。どきどきしてきた。というのも、その頃にはもう、「雪を見ない限りかえらない」という決意ができつつあったからだ。列車は越後湯沢の駅まであと2駅。まだ雪は降ってこない。列車はゆっくりと動き始めた。 トンネルを抜けた。拍子抜けするくらい、そこは雪国だった。 ふとあの名作が思い起こされ、ふっと楽になった。きっとあの人も、こんな気持ちで窓を見ていたのではないだろうか。人影のない町に雪はふり、ほんの5分前とは全く違う光景が広がる。 ・・・笑ってしまうのだが、越後湯沢の駅はまん前からスキー場だった。そこには列車の窓から見えた幻想はなく、ユーミンの曲がエンドレスで流れていた。カラフルなウェアを着た地元の子供たちが、ホームに集まってきた。 私は彼らと一緒に、上りの列車に乗った。 上野の駅につくと、昨日まで、いや、ほんの5時間前の事はすっかりどうでも良くなっていた。 -
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