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2001年09月29日(土)    +++金木犀+++



  今年初めての花が咲いた。
  うちのマンション(アパートみたいだが。)の 入り口には
  金木犀の木が 何本も植わっている。
  花盛りの時には 2階の我が家も 金木犀の香りでいっぱいになる。
  
  ここへ越してきてから 金木犀のアレルギーまで 出てしまうくらいに
  甘い香りが漂うのだ。
  
  震災前 実家にも金木犀の木があった。
  10月の声を聞く頃になると 子供部屋の下から ここと同じように
  甘い香りが 入ってきた。
  
  金木犀の香りは 学生服の冬服の準備を促すようだった。
  そして ある年から 金木犀は一人の人を思い出す 哀しい香りとなった。

  高校1年の体育祭の日のことだった。
  まだ その頃は 吹奏楽部にいた。中学時代の先輩が多かったため
  中学生の頃から 出入りしていた私は 一つ上の先輩を姉のように
  慕っていた。

  どんよりした曇り空の下で 校庭にいすを並べ 応援や雑談に花を咲かせ
  運動音痴の私も 楽しい気分に浸っていたその時 先輩に呼ばれた。

  「Yちゃん お父さんに刺されて 病院にはいったから。」
  思わず耳を疑った?なんで?刺すってどう言うこと?
  
  「かなり 危ないらしいから 体育祭終わったら 部室に来るように」
  そう言い残して 先輩は他のクラスに伝言しに行ってしまった。

  放課後 集まった私達に先輩は言った。
  「Yちゃんは 看病疲れで辛い状況にあったお父さんが 一家心中しようと
  して 亡くなった。」と・・・。

  信じられなかった。すぐに おうちへ行ったが 警察のロープが張って
  あって入れなかった。ロープが 真実を告げていた。

  告別式が終わったあと 近所の公園に行って 思い出話をしながら
  泣いた。金木犀の花が いっぱい咲いてた。
  この花が咲くと 私はY先輩のことをきっと思い出すだろう。と
  その時 心によぎってから もう22年になる。
  毎年 毎年見上げては 先輩を思い出す。

  これは 後日談なのだが・・・。告別式の夜 ラジオを聞いていたら
  「今日は ありがとう」って声が聞こえた。
  なに? って思ってたら 友達から電話があった。
  「今 Y先輩の声がしてん」と・・・。こわかったけど 優しい先輩が
  気を使ったのだね。って 話した。

  その後 私は同じ学年の部員と仲が気まずくなったのと BANDに
  のめりこみ 吹奏楽部をやめた。
  
  すっぱり縁が切れたという感じはせず
  少し 後味は悪かった。
  
  次の年 高校2年のクラスメイトを見て 驚いた。
  その険悪になった 友達と同じクラスになっていた。
  しかも Y先輩が 使っていた2年7組の教室で・・・。

  偶然と言えば偶然かもしれないけど・・・。
  仲良くして欲しかったのかも知れないと思った。
  いさかいを好まず いつも誰かの間に立って 物事を静め様と
  していた先輩らしいなぁと思った。

  22回目の秋・・・。
  私は 元気です。
  先輩 しあわせですか?そっちは 過ごしやすいですか?
  今年も 金木犀は 花盛りになりそうです・・・。






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