TENSEI塵語

2004年12月27日(月) 襲いかかる死

昨日インド洋の海底で大地震があり、津波に襲われた死者の数が、
今夜の夕刊の報道では12000人以上に昇っていた。
戦争でもテロでも日本の天災でも、めったに聞くことのできない数である。

地震でも台風でも、交通事故でも通り魔事件でも強盗殺人事件でも、
このような類のどんな報道に接したときでもそうだが、
こういう突然の災難で命を奪われるときの思いというのはどんなものかと、
気が遠くなるほどの計り知れなさに襲われる。

職員室で新聞を眺めていたら、同じ国語科のB氏が通りかかって、
去年のちょうど今ごろプーケット島で泳いでいたのだとしみじみ言った。
彼は、去年2年生の担任で、来年は行けそうもないからとむりやり旅に出た。
もし彼が去年1年生の担当だったら、今年出かけていたのかもしれない。
そして、我々は彼の安否にハラハラしていたのかもしれない。

どんな報道に接しても、遠い話に思われる。
確かに、50年近く生きてきても生死の境というほどの体験が思い出せない。
けれども、私が気づかなかっただけで、ひょっとしたら、
ある物体から2、3センチ離れていただけで死を免れたのかもしれないし、
ほんの2、3秒の違いで、死に襲われずに済んだだけなのかもしれない。

今回の12000人以上の犠牲者のほとんども、
自分に死が近いなどと考えもしていなかっただろう。
死は遠い将来にきっと来るだろうということは知っていても、
楽しみの時間のさなかに突然訪れるなどとはまったく予想もできないはずだ。


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