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天竜



 例えばこんな良い話

私はセビージャが好きなので、ライバルベティスの話はあまりしないのですが、あまりに素敵な出来事があったのでご紹介。

ベティスのユース育ちの生え抜きにホアキンという選手がいるのですが、彼は言ってみればベティスのアイドル的存在で、プレーも一流だし、人柄も素晴らしいし、とっても人気のある選手。でもベティスというクラブの経済事情からどうしても他のクラブに売らなければならないことになり、彼は自分が他のクラブへ移籍することでベティスにお金が入るのであればと承諾。サポーターにもちゃんとさよならを言い、二年前に小さな頃から自分を育ててくれた故郷とベティスに別れを告げました。
ホアキンが移籍した翌年、ベティスは一年を通してずっと降格争いを続け、ホアキンは地元に帰るたびに家族に「ベティスは降格しないよね、大丈夫だよね」と訊き続けたそう。

で今季、ホアキンが移籍したバレンシアとベティスとの試合が、ベティスのホームであったのですが、スタメンで出場した彼を、ベティスのサポーター通称ベティコ達は激しいブーイングで迎えました。彼にボールが渡るたびに高い口笛が鳴らされ、なんだか観ているこっちが悲しくなるくらい。
彼は試合前に、「自分を育ててくれたベティスは心のクラブ。だけど、今は素晴らしい待遇をしてくれているバレンシアのために戦うよ」と言っていたのですが、彼のこの苦悩はベティコたちに伝わっていなかったのかなと。

試合は、ベティスも奮闘したのですがバレンシアに先制点を許し、そのまま後半38分、追いつこうと攻めるベティスの隙をついてバレンシアのカウンターが決まり、まるで「お前が決めろ」といわんばかりに味方から渡されたボールでゴールネットを揺らしたのはホアキン。

得点が決まった瞬間、ホアキンは自ら顔を覆い悲痛な表情に。その一瞬でどれだけ彼が多くのジレンマとプレッシャーの中でピッチに立っていたのか痛いほど伝わってきました。昨シーズン、自分が抜けたことで降格争いを続けたベティス、今季はまだ一勝すらできてない彼らが今季も厳しい戦いをしていかなければならないことは目に見えているわけで、それに追い討ちを掛けるゴールを決めたわけですから、その心情ったらなかったでしょうね。

でも、俯くホアキンに向かって大きな拍手と声援を送ったのはバレンシアのサポーターではなく、なんと今までずっとブーイングをしていたベティコ達でした。「下を向くな。お前の気持ちはわしらが一番よく分かっとる」と言わんばかりのスタンドに詰め掛けたベティコ達の笑顔がとても印象的で、私もあんなに暖かい拍手は久しぶりに聞きました。ホアキンも彼らの拍手を聞いて堪えきれず半泣きに。例えクラブを離れても、敵としてブーイングをしても、やっぱりベティコ達にとってホアキンは大切な心の選手なんでしょうね。

その後、ホアキンが交代でピッチを去るとき、ベティコ達はスタンディングオベレーションで彼に最上の敬意を払いました。そんな彼らにホアキンは手を振り、何度もこぶしで自分の左胸を叩いていました。どこにいようとも、心のクラブはここなんだと、そう言いたかったのでしょうね。

例えばこんな良い話。サッカー編でした。

2007年09月24日(月)
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