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天竜



 3-way

千載一遇のチャンスだと思ったんだよ、僕にとってはね。現状に格別これといった不満があったわけじゃないし、このままでもいいかなと正直思わなくもなかったんだ。だけどね、一回しかない人生だから、一度くらい無茶をしてもいいかなという気持ちもあったんだ。
いつも行ってるスポーツジムのサウナでね、たまたま近くに座った子がいたんだよ。まだ若いと思うよ、君ら二人と同じくらいかなあ、もっと若かったのかも。怖くて最後まで歳は訊けなかったんだけどね。ちょっとうらやましいなと思うくらい締まった体しててさ、手足は長いし、顔はちっちゃいし、今時の子ってのはなんであんなスタイルがいいんだろうね。食べてるものが違うのかなあ…。まあ、いいや。でね、その子が喋りかけてきたんだよ。「このジム、よく来るんですか?」ってね。それから仕事のこととか、住んでる場所のこととか、そんな他愛もない話をして、これから用事がなければ一緒に飲みに行きましょうってことになって。
おっと、違うってば。その時はまだ他意があったわけじゃないよ。気さくな子だったし、まだ東京に出てきたばっかりで友達があんまりいないって言ってたからさ。
ジムを出てね、近くにある居酒屋に入ったんだ。夜の八時くらいかなあ。そんなに呑んだわけじゃないけど、すごく楽しかったよ。彼もぜんぜん酔っ払ってなかったし、店を出たときも普通ににこにこしてたから。
まあね、確かにこの時点で気付いてはいたんだよ。そもそも、サウナで声を掛けてくる男なんて、八割九割がゲイの子だから。
この後、誘うべきか、ここで別れるべきか悩んだね。悩んだよ、そりゃもうすごく。一線を越えるかどうかって瀬戸際だからさ。あはは、まあね、君みたいに度胸があれば悩む必要もなかったのかもしれないけど。僕、もういい年だったし、付き合ってる女性もいたしね。
でも結局、我慢できなかった。こう、三十年間抑えこんでいた欲望がいっきに爆発しちゃったって感じ。僕のアパートに連れて行ったんだけど、キスしてから最後イクまで、一回目はほとんど覚えてないくらいでさ。恥ずかしいよ、めちゃくちゃ早かったと思うし。それで少し落ち着いて、今度はちゃんとベッドまで行ってしたよ。彼は僕なんかよりずっと慣れてたし、下手糞だったと思うけど文句も言わなかったし、本当にいい子で助かったよ。
それから? ああ、それから彼とはニ、三回会ったかな。でも、僕の方がいろいろ忙しくなってジムに行けなくなったから、それで終わっちゃった。
おいおい、なんだよ、生々しいって言うなよ、君らが訊きたいって言うから話したのに。でも、やっぱり良かったと思うよ、あの時こっちの世界に踏み込んでおいてね。持って生まれた本質ってのは、やっぱりそう簡単には変えられないもんだからさ。

なんかいつもと逆の立場だからちょっと違和感があるね。カメラはやっぱり回してる方がいいな。え、明さんと? あはは、してない、してないよ。お互いにタイプじゃないからね。うーん、一回くらいしてもいいかなと思うけど、まあ、大変だろうね色々と。
そろそろシャワー浴びたいんだけどいい? あ、その前にカメラ返して、はいはい最後はキスで終わらないと、回すよお二人さん。

2007年06月21日(木)
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