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天竜



 君の悪意

気付かなければ良かった、知らなければ良かった。
君のしなやかな指の関節、伸び上がる涼しげな口角。
羽毛のように柔らかな瞳と、鋭利な刃物のように時として誰かを傷つけるその声の先。
腕を伸ばせばたやすく抱き締められる距離で、君は悠然と笑い僕に切り札を投げつける。
「友情」か「愛情」か。
その答えを持つべきは君。
その答えを待つべきは僕。

気付かなければ良かった、知らなければ良かった。
君が震える過去、君が恐怖する未来。
求める腕も、縋る涙も。
絶望を語るその唇で愛を囁くその唇で、君は僕を変えようとしている。
何気ない素振りで触れる冷たい手のひらに込められた君の悪意。
三歩前を歩くときに見せる無防備な背中に込められた君の失意。

「友情」は君を甘やかすもの。
「愛情」は君を追いつめるもの。

痛みを抱えたまま振り返り溜め息をついた君の上に、雪が舞う。
気付かなければ良かった、知らなければ良かった。
そんな君の姿を世界から隠してしまいたくなる、この衝動の理由を。

愛という、その言葉の意味さえも。


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久しぶりのポエマー天竜。リハビリのようね。

2002年11月10日(日)
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