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天竜



 悩める男

ああ、友よ。

僕は君に打ち明けたよね。
自分がゲイであることを。
これ以上、友である君を騙したくなかったから勇気を出して言ったんだ。

そうしたら、君は笑いながら答えたよね。

「ばーぁか。今さら何言ってんだよ。んなこと知ってるっちゅーの。それよりさあ、お前腹減らない?今日から吉野家280円だぜ。おごるから付き合えよ」

ああ、友よ。
あの時ほど、君ってやつを尊敬したことはなかったぜ。
それに、あの時の牛丼の味も一生忘れやしないさ。

ああ、友よ。
しかし。しかしだ。
どうして、君は昨日から僕のアパートに居座っているんだ!
父親と喧嘩した?
頼むよ。君はもう来年年男なんだぜ。
いい加減、大人になってくれ。

それに、頼むから僕の前で、そう平気そうな顔をしてパンツ一丁で歩き回らないでくれないか。その白い背中が目の毒だ。
そうそう。そうやって静かにソファにでも寝転がってテレビでも見て…
…ああ、友よ。
頼むよ。片足をそうやってこれ見よがしに上げてくれるな。半分見えてるじゃないか。
パジャマを貸すから、履いてくれ。着てくれ。隠してくれ。

ああ、友よ。
いくら何でもこれは生殺しだ。生き地獄だ。
僕がゲイであることを知って、君は僕をおちょくっているのかい?

ああ、友よ。
飲みかけのビールを手渡さないでくれ。

ああ、友よ。
そんな笑顔で僕を見つめないでくれ。

僕の理性は今がけっぷちなんだ。
きっと、あと数分でここから転がり落ちる。
カップラーメンだってウルトラマンだって三分が限界なんだ。
僕は乾燥したメンマでも、正義の味方でもない。

ああ、友よ。
頼むから酔っ払ったと言って、僕の胸に倒れこまないでくれ。

ああ、友よ。

君の笑顔の真意を。
君の行為の真意を。

どうか僕に教えてくれないか。

明日の僕たちが見るだろう、朝日の色を。


2001年08月02日(木)
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