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■ 悩める男
ああ、友よ。
僕は君に打ち明けたよね。 自分がゲイであることを。 これ以上、友である君を騙したくなかったから勇気を出して言ったんだ。
そうしたら、君は笑いながら答えたよね。
「ばーぁか。今さら何言ってんだよ。んなこと知ってるっちゅーの。それよりさあ、お前腹減らない?今日から吉野家280円だぜ。おごるから付き合えよ」
ああ、友よ。 あの時ほど、君ってやつを尊敬したことはなかったぜ。 それに、あの時の牛丼の味も一生忘れやしないさ。
ああ、友よ。 しかし。しかしだ。 どうして、君は昨日から僕のアパートに居座っているんだ! 父親と喧嘩した? 頼むよ。君はもう来年年男なんだぜ。 いい加減、大人になってくれ。
それに、頼むから僕の前で、そう平気そうな顔をしてパンツ一丁で歩き回らないでくれないか。その白い背中が目の毒だ。 そうそう。そうやって静かにソファにでも寝転がってテレビでも見て… …ああ、友よ。 頼むよ。片足をそうやってこれ見よがしに上げてくれるな。半分見えてるじゃないか。 パジャマを貸すから、履いてくれ。着てくれ。隠してくれ。
ああ、友よ。 いくら何でもこれは生殺しだ。生き地獄だ。 僕がゲイであることを知って、君は僕をおちょくっているのかい?
ああ、友よ。 飲みかけのビールを手渡さないでくれ。
ああ、友よ。 そんな笑顔で僕を見つめないでくれ。
僕の理性は今がけっぷちなんだ。 きっと、あと数分でここから転がり落ちる。 カップラーメンだってウルトラマンだって三分が限界なんだ。 僕は乾燥したメンマでも、正義の味方でもない。
ああ、友よ。 頼むから酔っ払ったと言って、僕の胸に倒れこまないでくれ。
ああ、友よ。
君の笑顔の真意を。 君の行為の真意を。
どうか僕に教えてくれないか。
明日の僕たちが見るだろう、朝日の色を。
2001年08月02日(木)
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