たりたの日記
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2003年10月11日(土) そうして目の前に もう一枚 白い紙を 置く

谷川俊太郎さんの詩集「みみをすます」は文庫をやっていた時代、また子育ての間にずいぶん音読してきた好きな詩集だ。
その中に「えをかく」という詩がある。


まずはじめにじめんをかく


というフレーズでこの詩ははじまり、地面、空、おひさま、星と月、と、様々なものが描かれてゆくのだが、その長く続いた詩の最後はこのように終わる


そして
もういちまい
しろいかみを
めのまえにおく

まずはじめに
じめんをかく


声に出して読んでいると、ここのところでいつも胸が詰まった。
聞いている子ども達は、わたしがここのところへきて泣きそうになるのを妙だなあと思ったことだろう。
けれど、今でも、このフレーズのところで心は強く振れる。

生きるってことは、とってもすばらしいことには違いないが、
みな、それぞれに、とてつもない不安を抱きながら、果てしなく続く荒野のようなところをたったひとりで進んでいる、と、そういうイメージをわたしは持っている。
その通奏低音の上に美しい自然や愛する人たちや楽しい出来事のつらなりがあって、わたしたちは自分に与えられた白い紙の上に、思い思いの絵を描きながら進んでいるのだと。



心太(ところてん)というサイトの「心太処」というコンテンツの10月号に「ストロング・ウエイ」というわたしの書いた文章を掲載させていただいた。

このサイトの心太日記は様々なジャンル、年代(10代〜60代)の24人の方々が日替わりで書いているユニークな日記だ。また、編集人ワタナbシンゴさんのライブ情報をはじめ、そのサロンに集う方々の活動が紹介されていて、「ボーターに立つサロン」というキャッチの通り、様々な立場の人達の活動や考えを知り、そこに繋がることができる。

ワタナbさんから掲載の依頼があった時、注目していたそのサイトで書かせていただけることをうれしく思った。またふだんは自分の世界の中だけで書いているわたしは、この場所を離れて書くということで新しい体験をすることができた。

「人」について書くその場所で、いったい誰のことを書こうかと迷い、ワタナbさんとのやり取りの後、最終的には連れ合いとの出会いのところから始まる物語を載せていただいた。それは、限りなくわたしの実体験に近いものの、実際のできごとは書いていないことの方が圧倒的に大きいわけだから、これはやはり物語だろう。

実際、書きながら思ったのだ。これまで過ごしてきた、様々なことがらや気分をとても書ききれるものではないと。しかし、言葉を綴りながら、書ききれない多くのことも、気持ちの上で、その中に閉じ込めた。
それだからだろうか、その文章を書き終えることで、わたしはひとつの季節の節目を作ったような気にさえなった。
それは、連れ合いと出会ってから共同作業としての子育てを終える今までのひとつづきの時。
それをともかくも白い一枚の紙に描き、その隅っこに自分の名前を入れた。

「出来ました!」
と、手を上げて、その絵を壁に貼ってもらう。


そうして目の前に もう一枚 白い紙を 置く。





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