たりたの日記
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はなはだしい方向音痴のわが身はわきまえているが、それでもひとり旅が好きだ。その土地と親密になる深さはひとりの時とそうでない時とはずいぶん違う。またひとりだと、おもいがけない出会いがあったりもする。
金沢までは上越新幹線で越後湯沢まで行き、特急に乗り換えた。隣に乗り合わせた方は栃木で障害児のための教室を開いていらっしゃる方で、これから金沢大学で行われる研修会に出席するということだった。障害を持っている子供たちから多くを学んだ、人生を変えられたと語る彼女に地道で真摯な働き振りが伺えた。そして静かな情熱も。わたしは明日、弟の家族を訪ね、重度の障害を持つ甥に会う。日々障害を持つ子供たちと関わる身ではないが、そこにしかない輝きはわたしにも見える。子供達のこと、教育のこといろいろ話す。良い旅路だった。一期一会。でもこの方にはまたお会いするような気がする。
金沢には午後一時に着く。ホテル一泊付きの旅券(おかしな話だが、この方が、往復の交通費より安くなるのだ)を使ったので、今晩は駅前のホテルに泊まり、弟のところへは翌朝行く予定だ。ホテルに荷物を預けこの辺りを探索することにする。都合のよいことに北陸鉄道が企画している「金沢散歩」なるものがあり、500円で1日乗り放題の専用ボンネットバスの周遊券が売られている。そのバスでひと回りすれば、観光スポットを押さえることができるしくみになっている。バス停でバスを待っていると、見知らぬ方から声をかけられ1日使えるものから、これをお使い下さいと使いさしの周遊券をいただく。わたしがあっけに取られている内に、その方はさっさと駅へと行かれてしまった。もう一度後ろ姿に向かってお礼を述べその券を使わせていただくこととする。
レトロ調のそのバスの運転手は若い女性で、バスには徳田秋声にちなんで「秋声」という名前が付けられていた。他に、「犀星号」と「鏡花号」があるらしい。「秋声号」で兼六園まで行き、3時間ほど、美しい日本庭園の中ですごす。兼六園を出て、やってきた「犀星号」に乗り、犀星の記念碑前で下車、記念碑の詩の一節を読み、彼が愛してやまなかったという犀川の川べりをしばらく歩き、犀星橋を渡り、彼が育った雨宝院を訪ねる。さらに片町まで歩きバスに乗る。もう最終バスの出る6時に近くなってきた。香林坊の武家屋敷後はまたの機会にしようとホテルに戻る。
いくつかのホテルからそのホテルを選んだのは、大浴場、サウナ、露天付だったから。豪華な食べ物や部屋は必要ないけれど、サウナと露天があるなら、何時間でもひとりで楽しく過ごせる。ゆっくりお風呂に入って旅の疲れを癒し、3月からこっちの仕事上のストレスもついでに解消し、明日、明後日と甥っこたちと遊ぶためのエネルギーを充分補給するのだ。
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