詩のような 世界
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ここは
寂れて海の家なんか1つもない海岸
3人の大学生風の男の子たちが
上半身裸で砂浜に転がっている
少し離れたところには
部活帰りだと思われる
ジャージ姿の女子中学生たちが10人弱
喋ることもなくそれぞれがマンガに夢中だ
腐りかけた木の椅子に座っている少年は
携帯電話を握り締めてうつむく
時々海に目を向けるのだけど
その瞳に映るのは青い穏やかな水面ではなく
長い髪を揺らす少女の影だった
私は砂浜に突き出た小岩の上で片足立ちをし
両手でバランスをとりながら
それらの光景を王様になった気分で見下ろした
浜の住人は誰1人、滑稽な王に気づかない
そのうち自分は存在していないのではないか
と真剣に考え始めた
そして愕然とした
私は自分の世界すらもっていない
彼らのように
自分としてその場にいることができていない
ということがわかったからだ
彼らにとって私は
初夏の海には場違いな
空っぽ頭の不安定にぐらつくかかし
大切なものが波にさらわれてしまったから
ここに来たのに
片足は痺れだし
それは時の知らせなのだと悟った
そろそろ探しに行かなきゃ
どこか遠くへ流された自分を取り戻しに
無様な王様、無意味なかかしとはお別れ
余裕の顔はもう捨てて、余裕などなくなるほど
命あるものとして
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