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2012年06月13日(水) バンバーグ先生講演会

10日は東大でMichael Bambergの「ナラティヴ分析の挑戦―アイデンティティ研究への一視点」に出た。バンバーグ先生は、ナラティブ・アプローチをとる人のなかでは珍しくというのか、ビデオデータ、それもインタビュー以外の会話場面についてのマイクロ分析をする人である。ポジショニング分析というのか、会話のなかで自分を何者として、どのようなレトリックを用いて語るのかといったことが分析の焦点になる。以前みせてもらった分析では、思春期をむかえる少年たちが、男同士で語りあう際に、どのように自らのジェンダーアイデンティティを表出するかといったことが会話分析的におさえられていた。能智先生の紹介によるとエスノメソドロジー・会話分析にもふれたことがあるとのことで、なるほどねと合点がいく。
 バンバーグ先生は過去に何度も来日して講演されているから、正直、話の内容は特に目新しいものではなかったが、わかりやすくまとめられて納得いくものであった。バンバーグ先生はインタビュー場面にこだわらない姿勢を強調しておられたと記憶しているが、たぶん、個人の内界に、確固たるアイデンティティがある(ない)といったイメージも、これまでの研究が質問紙ないしは、1対1のインタビュー場面から得られたデータをもとにしていることに支えられているのではないだろうか。おそらく人はどのような場面で、どのような聴衆を相手に、どのようなことを志向して、どのような言葉を使って自らのアイデンティティを語るのかということには一貫した答えは設定しづらい。そういう多種多様なアイデンティティ表現の、ごく一部であるインタビューという場面だけが特権化してとらえられるべきではない。


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