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2006年04月23日(日) バフチンと心理学

4/22は、Iscar-Japan,Dee,質心、グルダイ共催の「バフチンと心理学」ワークショップにでた。バフチン研究の第一人者である桑野隆先生による講演と、それに引き続いてバフチン概念をつかった心理学研究者によるチュートリアルセミナー。発表者はやまだ先生、宮崎先生、筑波の田島さん。

バフチンの思考は膨大で、和訳、英訳されていない草稿類もあわせるとまだまだ知られていないことが多い。とはいえ、僕は『ドストエフスキーの詩学』『小説の言葉』『マルクス主義と言語哲学』などをかじったにすぎないので、大きなことはいえない。

それでも、バフチン研究の第一人者である桑野隆先生のことは知っていて、対話論はなじみのあるものだ。ご講演では、バフチンの著作を年代的にならべて思想の変遷や特質といったものをわかりやすく解説していただいた。僕のようなサボリには実にお得な企画である。

「自分の立場がくずされるかもしれない可能性にひらかれ、応答責任をひきうけつつ発話に加わっていく」といったように、バフチンの対話性概念は、単に対象について語る飾り言葉のひとつではなく、研究者の立場を再考するうえでも、とても重要なことを言っているということを再確認。

対話は自分の立場をひきうけて、完全にはわからないものとして他者に接していくという点。そして、それゆえにcreativeな理解は自分自身の内からでてくるのではなく、他者との対話のなかで、他者の「見えない」もののなかからでてくる(視覚の余剰)という指摘は、拙著の「見える/見えない」という論の下敷きにもなっている。

つづくチュートリアルはお三方とも面白い発表だったが、とりわけ僕は宮崎先生のご発表が面白く感じた。なんというか、自分のなかにたくさんの内言をひきおこす発表だった。僕が生徒指導についてこれまで考えてきたこととも近いような気がする。とかく何か教える、従わせるというのはよろしくないこととしてとりあげられているわけだが、そんなことはないぞということだ。

全体として、最近、学会にいってもエネルギーを感じることがなくて寂しかったのだが、ひさびさに元気がでた。


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hideaki

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