監督・原案・脚本・製作 ポール・ハギス 出演 ドン・チーチル、マット・ディロン、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ
この作品を観ながらまず思うことは 「日本人でよかった。日本に生まれてよかった。」 でも、観終わってからこの作品を振り返ってみて思うことはそれとは違う。 誰しもが生まれ育って生きていく中で信条みたいなものをそれぞれ持っている。 それは十人十色で、それがあるからこそ私達は衝突を繰り返す。 またそれがあるからこそ、”わかりあいたい”という思いも生じる。 それが我々日本人にも確かにあるけれどもその違いは僅かな差である。 だが人種のるつぼであるアメリカではどうだろう? 肌の色、宗教、階級が人々の関わりに大きくはっきりと影響を及ぼす。 わかりあえないもどかしさは我々日本人の想像を絶するに違いない。
作品冒頭でグラハムがつぶやく言葉。
「ほんとうはみんな触れ合いたいんだ ぶつかって実感したいんだ」
この作品に出てくる人間に性根から悪い人間はいない。 皆、自分の信じるものに従い、正直に生きている者ばかりだ。 だからこそ、衝突した時に迷い、混乱する。 けれどもそこから何かに気づいて自分の中に変化をみる。
複数のエピソードが繋がる群像劇なのでアルトマン作品などと比較する人も多いようだが 物語としてのテーマが根本から違うので比較は見当違いなのではないかと思う。 群像劇としての面白さというよりも、登場人物を繋げることによって 鎖のように入り組んで難しい人種の壁、それが共存している街を描きたかったのではないだろうか?
とても良い作品だと思う。
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