驚異のピアニズム - 2005年12月09日(金) ↑先日聴いたフランスのピアニスト、ピエール=ロラン・エマールのリサイタルのことです。 このエマールの弾いたラヴェル「夜のガスパール」のCD に感動した話を前に書きましたが、 これを実演で聴ける!というので万難を排して東京オペラシティへ行きました。 CD通り・・・どころかやっぱり実演は違う、 会場で買ったプログラムのコラムにも書いてありましたが、 この人はどんだけ鋭敏な耳、 明晰な頭脳、 敏捷な腕の運動神経をしてるんだ?? 信じられない域です。 またこれはポリーニの彫刻的なイメージを喚起させる「明晰」とは また違ったタイプ。 ナマで聴いた「夜のガスパール」は 最初の「オンディーヌ」の霧のような音響の もう、なんというか音を超えて「気配」というくらいの微妙さから 爆発的に大きく鳴らされるフォルテまで 完全にコントロールされた音によって作られる神秘の世界。 しかし同じフランス人作曲家の作品でも ラヴェルの方がより幻想的で ドビュッシー(前奏曲集第1巻から3曲弾いた)が二次元的な絵画、という風に聴こえたのは面白かったです。 どっちかというと逆に聴こえることが多いのだけど。 あと驚かされたのは、現代作曲家ブーレーズのソナタ第1番。 ああいう難曲を、水を得た魚のように弾く、というのは やっぱり彼のキャリアを (彼は、長らくブーレーズが率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランの専属ピアニストだった。だからブーレーズの作品をはじめ現代曲の初演を数限りなくしてきた。) 考えると当然なのかもしれないけど それにしてもあれだけ精密複雑な曲を、いともたやすく弾いてしまい 音的にも形としても完全に調和のとれたシンプルで美しい曲に聴こえるなんて ただ事じゃない。 こないだ聴いたポリーニのシュトックハウゼンをも凌駕していたかも。 後半はシューマン「交響的練習曲」。 これも素晴らしかったけど、こういう曲を聴いて ああ、彼はまだまだ先に進むな、と(足りない、という意味じゃないんだけど) どういうわけかちょっとホッとした。 精密だけど、冷たくなくて、清々しいロマンティックさを感じさせるシューマン。 でも彼はこれからもっとファンが増えるよ、きっと。 偶然会った大学時代の女性の友達が、今回初めて彼を聴いて 「一目ぼれ〜♪ (一耳では?)」 と言ってたけど、そういう人少なくないだろうな、と思った。 ...
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