エマールの弾くラヴェル - 2005年08月30日(火) 「天才は物事の地平線を広げる人だ」 のようなことを誰かが言ったような気がするが (ホントか?何か違う言い回しじゃなかったっけ?) 先日あるCDを聴いて確かにそう思った。 フランスのピアニスト、ピエール=ロラン・エマールの弾く ラヴェル「夜のガスパール」。 実はついこないだもある若手ピアニストの「夜のガスパール」をCDで聴いて 「こりゃラヴェル演奏の理想だな。」と相当な感心をしたばかり。 ラヴェルの音楽というのは 彼がよく「スイスの時計職人のようだ」と言われることからわかるように おっそろしく精密に配置された音たちでできている。 情感、とかそんなものよりも とにかく音による見事なオブジェ。 それを達成する演奏があって 初めてラヴェル独自の様々な色合いの世界がぽっかりと顔をだす。 だからピアニストもまずは楽譜通りにどれだけ精密に弾けるかが要求される。 極論すればそれをクリアーしただけでラヴェルはOKだ。 でもそれがナカナカ…。 エマールというピアニストは私も実演でCDで色々聴いてきたが そういうのにうってつけのピアニスト。 だから現代の音楽、たとえばブーレーズやリゲティのような作曲家の曲、 普通の人が弾いたら(普通の能力じゃ弾けないけど) あるいは普通に聴いたらさっぱりわからない曲を いともたやすく、しかも「あれっ?こんなにシンプルな曲だったの?」 とこちらが違う曲を聴いてるのかと勘違いするくらいクリアーに弾く。 それも底知れないくらい美しい音で。 で、今回の「夜のガスパール」。 予想通りなんてもんじゃなく、 私の知っている「精密」なんてまだまだ甘いぜ、 といわんばかりの異様な「精密さ」。 最初の曲「オンディーヌ」のさざなみのような弱音から 私の知らない世界が目の前に現われる…。 私の今まで知らなかった艶かしい空間が目の前に広がる…。 こないだ思った「ラヴェル演奏の理想」なんてあっというまにこっぱみじんになり ステレオの前に釘付けになってしまった。 自分の既成概念なんて、いや〜どれだけくだらないものか、と思い知る瞬間。 天才はスゴイです。。。 ...
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