ブルックナーの慟哭 - 2005年02月28日(月) 2月というのは比較的コンサートの少ない時期ですが (音楽業界もニッパチはヒマなのだ) 今年は結構良いコンサートがたくさんあります。 バレンボイムのピアノ・リサイタルや彼の指揮によるベルリン・シュターツカペレのコンサート、 古楽の指揮者ブリュッヘンが新日本フィルを指揮しに来日したし、 大好きなハーゲン弦楽四重奏団も来日公演中。(でも行けなかった…) そんな中、私は本命?ヘルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートに行ってきました。 音楽ファンはよくご存知のように、シンフォニー・オーケストラとしては最古の楽団で、 創立250年を超える古豪オケ。 素晴らしかった…。 ドイツ人もだんだん変わってきた、とはいっても まだ良きドイツの「心」はここに残っていた。 魂からまっすぐに放射される誠実さ、真摯さが私の胸をいっぱいにしてくれました。 涙がでました。 「誠実」、「真摯」という言葉を使いましたが これは当日買った公演プログラムの中にあったものをそのまま書きました。 というのはこのオーケストラ、 創立以来モットーが「Res Severa Est Verum Gaydium (真摯なことが誠の喜び)」 とされているそうで、これ以上このオーケストラの音、演奏を言い当てる言葉もないだろうと思われました。 (ついでに言うと、このプログラム、細かいところまで丁寧にとてもよくできていた。) 以前聴いた時は、ちょっと古いお寺のようにうっすらホコリをかぶったような渋い音だったのが随分華やいできた気はしますが、 基本的な質は変わらない。 こうした音楽の中の、ある「真実」なものを伝えようとする姿勢。 オーケストラの技量や格からいうと、例えばドレスデン・シュターツカペレやロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団よりはちょっと落ちるかもしれませんが、 それでも充分素晴らしいオーケストラ。 (ところでカーテンコールで、全員がちゃんとバックステージ席に振り返ってお辞儀をしている姿もとても感動的でした) 昨日の公演ではブルックナーの「第7交響曲」が断然素晴らしかった。 前回(2002年?)もブルックナーの「第5交響曲」が、もうただ事ではない素晴らしい演奏で(私はあれ以上のブルックナー演奏を聴いた事がない。チェリビダッケやヴァントの指揮でさえも) ファンや専門家の間でも語り草になっているので、 今回もブルックナーを楽しみにチケットを買ったのですが、 これはもう期待通り。 しかし今度こうしてブルックナーのこの大曲をじっくり聴いてみて、 変な話ですが、急に遠藤周作の「沈黙」を思い出しました。 もちろん「沈黙」とブルックナーの世界の色合いは随分違う。 でも私は後で考えました。 ブルックナーはなるほど、よく言われるように(解説書などを読んでもそう書いてある通り)信仰厚きカトリックのクリスチャンであったに違いないそういう響きの音楽を書いているけど、 でもこの曲やその後の「第8」「第9」もそうだけど、 「こんなにまで神を賛美し、信じているのにどうしてあなたは自分に応えてくれない?私は一体どうすれば良いのだ?」 といった慟哭と、次第に近づくカタストロフィなものを感じるのは私だけでしょうか? 彼の音楽にはそういう現代的(?)矛盾を (150年近くも前の時代の人なのに) 聴きとらないわけにはいかない…。 ...
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