ジークフリート - 2003年04月04日(金) 昨日、新聞の夕刊を見ていたら お〜、一昨日「池袋ウエストゲートパーク」のことを日記で書いた時にふれた 「木更津キャッツアイ」が映画化!という記事が。 いやー、ファンとしてはすごい嬉しいっす。 ところで新国立劇場って行ったことありますか? 日本初の国立のオペラハウス。 開館からもう5年くらいになるのかなあ? 税金を使ってる「国立」ってことで、やれもっと水準をあげないととか、こんな保守的な演目ばっかりじゃダメだ、とか新聞や雑誌でたたかれたりすることも多いのですが、 私は、まず劇場がいいし(オペラがこんな素敵なところで見れるようになるとは思わなかった。それまで)、民間のオペラ・カンパニーがとても使えないような豪勢な舞台と歌手、それに今じゃ一ヶ月平均7〜8回はオペラが見れる!という状況には感謝したいな〜と思ってる。 東京に来る機会のある方は一度話のネタに行ってみてはいかがでしょうかね。 さて私は昨日その新国にワーグナーの超大作オペラ「ニーベルングの指環」4部作の第3作め、「ジークフリート」を観て来ました。 もうちょーちょー良かった! もうただただ圧倒されて体中を血が逆流するようでしたよ!! こういう時、いかに自分が感じたものを言葉にする才能がないか、というのを実感します。 そういう才がほしい!! そうしたらこの気持ちがどれだけ人に伝えられるか。 自分の感情や思いをド、レ、ミ、ファで伝えられる音楽家っていうのは本当に凄いと思う。 魔法使いですよ、ほんとに。 ワーグナーはそんな魔法使いの中の最高の一人。 いつも、彼の音楽は私にとって一種の麻薬のよう。 あの結婚式に流れる入場の音楽(これはオペラ「ローエングリン」の音楽) しかり、映画「地獄の黙示録」で有名な音楽(あれはオペラ「ワルキューレ」の音楽)しかり。 もう最初の数秒でひとつの「異世界」ができてしまって、数時間すっぽりとそれに包まれてその中で生きることとなってしまう。 この力はまさに圧倒的なものがあります。 「ニーベルングの指環」はワーグナーが足掛け20年かけて完成させた畢生の大作。 序夜「ラインの黄金」(約2時間30分) 第1夜「ワルキューレ」(約5時間) 第2夜「ジークフリート」(約5時間40分) 第3夜「神々のたそがれ」(約6時間) の4つのオペラからできていて、トータルすると18時間(!)くらいかかる。 ひえ〜。 (書いてて改めて驚いてる。) 神話的世界の話で,ライン河の黄金から作られた指輪にかけられた呪いによって神々が終末へとむかっていく、というストーリー。 (ものすご〜〜く平たく言ってます。) あれ?これって「ロード・オブ・リング」と同じじゃん、と思う人もいると思いますが、こういう指環伝説って大昔からヨーロッパに伝わる伝承話で、ルーツは一緒なんです。 映画の方がもちろん後。ワーグナーは19世紀半ばにこの大作オペラを作りましたから。 疑問だったのは映画が公開された時、雑誌なんかいくら見てもそれに触れている人がいなかったこと。 どういうことだ??? でオペラの方ですが、その中にはおよそ人間である限り直面することが満載。 親子、男女、夫婦の愛、確執。権力抗争。環境破壊。そして世界の滅亡。 もう人間である限り考えられるすべてがある、と言っても過言ではないかもしれない。 見る度にちょっとした見方で様々な新しいものが見えてくるし、年月を経て見るとまた違って見える。(自分もちょっとは成長できたのか?と思ったりする。) それが全部音楽として響き渡り、全身にのしかかってくる。 ささやくような響きから大スペクタクルな轟音、官能的だったり深刻だったり劇的だったり、オーケストラと歌のおよそ考えられる限りの表現手段が総動員されて音楽が創られる。 すごいですよ!これは。 もう感動しすぎてワケわかんないくらいでした。 そして今回の目玉はオケピにNHK交響楽団がはいったこと。 新国立劇場にはN響初登場です。 いつもこのオペラハウスには東京フィルか東京交響楽団なんですが、失礼ながらN響はかれらとは桁違いのレベル。 準(じゅん)メルクルという日独のハーフで今、世界でも最高に輝いている才能をもつ若手の指揮で(私は彼の大ファン♪)こんなものは滅多に聴けないぞ!っていう豊穣なワーグナーの音楽が響きわたりました。 歌手も主役ジークフリートには、この役を歌わせたら現在世界最高のテノール、クリスティアン・フランツ。 素晴らしかったー!! その一声を聴いただけで背筋がゾクッ。 ワーグナー・オペラの主役テノールは特にヘルデン・テノールと言われて、強力で美しい声、長丁場を歌いきるスタミナが要求されるのですが、こういう人は20年に一人出てくるか出てこないか。 90年代前半まではルネ・コロという不世出のヘルデン・テノールがほとんどの有名オペラハウスで上演されるワーグナー・オペラを歌っていたのですが、彼も70近くで引退してからというもの、ホントに誰もいなくなってたんですよ。 それからちょっとしかでてこない役なんだけど、すごく重要な役どころで智の女神エルダを歌ったメゾソプラノのハンナ・シュヴァルツ。 この人は70年代から(!)こういう役を歌い続けていて、今度もチラシでその名を見たときは「歌えるのか?」と思ったけど、 こりゃあ、こういう当たり役を一線で歌い続けた人の存在感たるや!という感じでした。 10年前にも聴いたことがあるのですが、その時より声に艶があるってどういうこったい? すっかり長々と感動話をかいてしまいました。 これで良いのか?この日記。 なんだかすみません。 でも私のワーグナーへの愛、またいつか書きますね。 (実はまだまだ書きたくて・・・全然反省してない… (-。-) ...
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