sasakiの日記
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空はとてもいい色 それに雲は高く さあ 早く起きろよ 愚図愚図してると遅れる 髪を洗い 念入りにお化粧 それが済んだら 波止場行きの 電車飛び乗り 防波堤まで ここで夏を見送る
僕は張碓によく彼女と行った。 今はどうなっているのか解らないけど、当時は無人駅で勝手に乗り降りする駅だった。 僕らは学生で、当然今の子たちのように車なんか持っていないから、移動手段はもっぱらバスか路面電車、遠くに行く時は汽車に決まっていた。 張碓が好きかどうかは問題ではなかった。 喫茶店でお互い、時間を持て余すようになってから小樽沿線を攻めだした。 駅を降りて、線路を跨ぐと海に降りていくことが出来る。数分おきに電車がゆったりと曲がりながら近づき、頭のコンクリートの壁を通過して小樽に向かって行く。 その度話が飛んで行く。 どんな話をしたんだろう? 新しくできたジャズ喫茶?遠藤賢次のこと?学生運動?僕がいつも遅刻する理由?スカートの丈について?新しく書いた詩について?浮気してるらしいこと? 夜の漁師について?ルノー=ベルレーがカッコウいいって?いくら寝てもまだ眠いのはどうしてなんだろう?進藤がホモで、僕が狙われてるらしい?唐十郎が面白いって?その髪型ヘンだよ、何かクレオパトラみたい。不安って?何が?母親が嫌いだって?今度浜益の方に行ってみようか?今、季節は何?
札幌が秋に変わり始める頃に彼女は東京に帰って行く。まだ夏の尻尾をぶら下げた東京へ。まだ何も先が見えていない。一つの季節の間中、繋がっているのは電話の線だけ。季節の間にいる彼女を見たことがない。 そして僕たちはお互い時々手紙を受取り、時々夜の8時に電話をする。
僕は彼女が遠いところいてもそんな困りはしなかった。僕は若くて、とても忙しかった。きっと解ってもらえないと思うけど本当に忙しかった。 さあ、時刻表を見に行こう。この駅にはなかなか止まってくれないから。
sasaki
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