内向的恐妻家の日記

   
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2004年01月18日(日) ある帰宅時の風景(実験日記5−時代小説風)

私がそのいつもと変わらぬ拙宅の扉を開けると、そこは倦怠の雰囲気にも似た
森厳な空気に包まれていた。


「ただいま帰りました。」


と軽く空気を振動させ、私は、家族の居住する居間へと向かった。

さらに居間の扉を開けると、そこにはトドのように伏臥し、炬燵に足を
入れ佇む配偶者と子息が居た。


「お帰りなさいませ。早速で申し訳ありませんが、麦茶をお入れして
 頂けますでしょうか。
 どうも咽が渇きますもので。。。」



と、配偶者は有無を言わせぬ口調で言った。

配偶者の咽の渇きは、無駄とも思える程、その排気口から熱された空気を
出し続けている暖房器具に拠る物と思われたが、私は無駄な口論を避ける為、
その考慮を胸に仕舞った。

『あれっ。いつもの所に麦茶がない。。。』

私は、麦茶を見つける事ができず、つれに尋ねた。


「大変申し訳ないのですが、私めの視力では視界に麦茶を発見する事が
 できませんでした。
 つきましては、麦茶の存する箇所をご指摘して頂けると望外の喜びなのですが、、、」


「貴方様。流しの下に存する事を、ご存知ではありませんでしたか?」

「左様でしたか。。。」


私は、煩悶の念に心を支配されつつも、麦茶を配偶者に差し出した。


「どうぞ、こちらに。」


黙って受け取る配偶者。

すると、こんどは隣に寝そべる子息がこう言った。


「父上殿。まろはプリンが食べたいでおじゃる。」


。。。息子よ。この日記の趣旨と口調がずれてるぞ。。。


「何せ、まろは雅で健やかなるおのこでのう。はよ持ってたもれ。」


釈然としない思いに身を焦がされつつも、冷蔵式格納庫をあけ、プリンを取り出す私。


「どうぞ、バカ殿。。。いえ、若殿様。」

「うむ。」


そういって、プリンを受け取る我が子息。


「。。。ぬぬっ。これでは食べられぬのぉ。
 ちゃんとプッチンしてたもれ。」


「。。。(怒)
 。。。はっ。承知致しました。只今、皿をお持ち致します。」


「ん、苦しゅうない。」


私は、諦めにも似た怒りの気持ちで、つぶさに炊事場へと向かった。


「旦那様!!、わたくしにもプリンをお持ち頂けますでしょうか。」


炬燵から一歩も足を出さず配偶者はいった。

この言葉に、私は一瞬、結婚に対する買春、、、いや悔悛の念を
浮かべつつも、二人分のプリンをプッチンした。


「3番テーブル、お待ちどうさまっ。(ハート)」


私は韜晦的にそう言うと、二人の前にプリンを置いた。


「よいお父上を持って幸せですね。」

「はい。母上様。」


目前のプリンにスプーンを入れながら交わされたこの二人の会話を聞いて、
良き父親=召使、という普遍なる真実に気付いてしまった私であった。。。




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