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| すききらい
2002年10月16日(水)
夕方。サカナさんが奥でコーヒーを淹れているとき。 少しおどおどしながらがんばるトロさんに、お客さんが言いました。
「このコーヒー、豆はなにを使ってるの?」
「…で、なんてこたえたの」 「ブレンドって」 「何のブレンドかって聞かれなかった?」 「え、ブレンドって、そういう豆があるんじゃないんですか」 「ブレンドコーヒーってのは、いろんな豆を混ぜたものだから」 「え!そうなんですか!」 「にじいろのブレンドは、キリマンジャロとモカと…」 「はああ。そうだったんですか」
心から「はじめて知った!」って顔をしているトロさんに、サカナさんは苦笑い。 でも、サカナさんも人のことは言えません。
「でも僕もね。トロさんがいないときに紅茶のこと聞かれたらってヒヤヒヤする。 やっぱり、お互いもっと勉強しなきゃね」 「そうですね」 「たとえば…ウインナコーヒーってどんなのかわかる?」 「え。ウインナコーヒー…」 「ソーセージとかは関係ないよ」 「ああ、違うんですか?」
はあ、とサカナさんため息。
「サカナさん、オレンジペコってわかります?」 「紅茶だよね?」 「それはそうですけど」 「オレンジの葉っぱを使った、フレーバーティーでしょ?」
ふう、とトロさんため息。
「淹れましょう。今」 「コーヒーを?紅茶を?」 「両方ですよ。私はオレンジペコを」 「僕はウインナコーヒーか。いいよ」
できあがったものを前に、二人は少しためらいながら。
「…わたし、コーヒーって苦手なんですよね」 「実は僕も、紅茶はあんまり…いやいや、がんばろう」
意を決して、ふたり、苦手なものを一口飲んで。
眉をしかめて。
無言でカップを入れ替えて。
「まあ… 少しずつ、がんばろうか」 「はい…」
サカナさんはウインナコーヒーを、 トロさんはオレンジペコの紅茶を、 おいしそうに飲むのでした。
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