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さんびゃくはちじゅうえん

2002年10月11日(金)

ねぶそくのサカナさん。
今日は1時間おくれての開店です。
とはいっても、お客さんがまってるわけじゃないんだよなぁ。
サカナさん、静かな店内でひとりコーヒー。


昼すぎ。
マグカップに残ったちょっぴりのコーヒーはすっかり冷めてて、
秋の気候はぽかぽかきもちよくて。
のんびり読書の予定のサカナさん、カウンターの奥で、ついついうとうと。



めざましがわりになったのは、カランコロンとドアのベル。



「え、あ、いらっしゃいませ!」

まずいよちょっと裏声になっちゃったよ恥ずかしいよ、
こころのなかでつぶやくサカナさんをよそに、
はじめてのお客さんがカウンター席につきました。

「ブレンド」
「は、はい」

あわててコーヒー豆をセットするサカナさん。
うわあどうしよう見られてるかもヘタだなあとか思われたらどうしよう、
こころのなかじゃ大あわて。
心臓の音は聞こえてないかなとお客さんを見ると、
文庫本を読みふけってるようす。

「どうぞ」

低めの声を意識しながらマグカップをだすと、
砂糖もミルクもいれずに、お客さんはおもむろに口に運びました。
うわあおいしくないとか思われたらどうしよう豆は買ったばっかりだよなあ、
お客さんをじっと見まもります。


とくに気にせずに、文庫本を読みつづけてます。




どれくらいの時間がたったのでしょう。
文庫本を読み終わったようすもないので、きっと少しだったのでしょう。

「380円でいいの?税は?」

と、いきなりお客さん。

「ぜい?(あ、税か)だいじょぶです、そのままで」
「うん」

お代をおいて、店を出ていきました。
体中の力がぬけて、サカナさんはふわあ、と大きなためいきをはきました。




はじめての売り上げ、380円。
夜、まっさらなノートに、でかでかと書いておきました。


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