カフェの住人...

 

 

第十六話 〜それは広がる宝物〜 - 2003年11月06日(木)

一期一会。

いつもいつも感じる大切な出会い。



色々なキッカケはあるが、

とても多くの人に様々な事を伝えられて、素敵な奇跡を起こす事もできる・・・

そんな仕事をしている人がいた。





以前、この住家を取材してくれた某有名雑誌の編集をやっている若い女の子だ。



それは一本の電話から始まった。

その彼女が担当するコーナーの取材依頼で、ここを取り上げてくれるという。

私にとっても、ここにとっても初めての事。



それにはフードや内装、ついでに私の写真まで載った。

出来上がったものは、特集コーナーのトップバッター。

大きく取り上げられていたので、反響も大きかった。

しばし忙しい日々が続いたのを覚えている。



今に思うと、輝かしい第一弾があんなにも素敵な記事だったのは

本当にラッキーだったと思う。





それからしばらくして、その取材をしてくれた女の子から連絡がきた。



「自分で冊子を作ったんです。置いてもらえませんか?」



沢山取材した中でも、こうして個人的に連絡してきてくれるというのは

仕事の枠を超えた ‘縁’ を感じられ、嬉しいもの。







それからすぐに、小さな手作りの本を抱え再び彼女は

今度はお客様として訪れた。



冊子は手作り感が残っているものの、

中はクオリティの高いものに仕上がっている。

さすが大手の雑誌編集に携わっていただけあると

改めて関心してしまった。

お友達と思われる若いアーティストも幾人か手伝って

色々なコーナーも設けてあり、なんだかワクワクしてくる感じだ。



仕事も辞め、少しのバイトをしながらこれに専念している。

冊子の行程を聞けば、それはもう気の遠くなる様な話。

その全国に散らばった友人達から集めた情報や作品の回収。

本人も遠くへ出向き、各オーナーさんらから話を聞くなど

地道に資料を集めたのが伺える。

さらには魅力的になるよう、編集にも時間を掛けたに違いない。

それを家のパソコンを使って、一枚一枚印刷していく。

もちろん、印刷屋に頼めばあっと言う間なのも知っている。

でも、作りたかったのだろう。

一つ一つ積み上げた自分の処女作なのだから。



そんな想いが、たっぷり詰まっている宝物のような作品。



もちろん言うまでも無く、私は何冊かこの住家に置く約束をしたのだった。





その彼女が訪れた日、私はいい事を思い出した。

この住家で以前個展をした女の子の友人が、丁度茨城でグループ展をやっている。

とても可愛い作品だったので紹介すると、

彼女はその足でそのまま茨城へと向かっていった。



そして第二号は、その紹介した子が表紙を飾る事となった。



私も記事を連載する事にもなり

そこでもまた、縁が縁を呼び輪が広まっていったのだった。



楽しい企画も次々浮かび、冊子の人気も出てきた。







けれど、残念な事に第三号で打ち切りになった。



より良くしていこうという仲間達との議論の末の話らしい。

話の流れを少し垣間見れば

苦悩の上の決断だったのも分かった。



正直無くなってしまうのは寂しい。

もう少しがんばって欲しかった。

けれど



「必ずまた復活します!」



そう残してくれた言葉に、確かな希望を感じられた。



全ての事を考えて、やっていくのは一筋縄ではいかない。

人と一緒にやっていくのも、それはそれは大変なこと。

体験しなければ分からなかった事もたくさんあったのだろう。

だから、この事も含め

もっともっと沢山の経験を重ねていったその時

また、夢の続きを見せてくれるに違いない。







あなたが創り出したものは、本当に素敵なものだった。



そう、伝えることが出来れば

私も再び出会えた喜びを感じられる。





ありがとう。

そして、がんばって。



あなたなら、いいものを広げていけるから。





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