今日こそは、学校に履修科目のコンピュータ登録をしに行くつもりだった。 まだ春休みが終わっていない今の時期、今回のコンピュータ登録が、春休み中最後の学校に行く日になるのだ。 「トゥルー・コーリング」を観始めたのは、去年の冬休みが始まった直後、もう冬休みに入っているのだという事を知らずに学校に通ってしまい、しょうがないから図書館にでも行くか、となったのがきっかけだ。 そして、「トゥルー・コーリング」を最後まで観終わるのも、今回のコンピュータ登録をしに行く日、という事になるだろう。 「トゥルー・コーリング」を観始めたのも、観終わるのも、どちらも休み期間中になるので、始まりと終わりにはキリが良いのだ。 なので、朝か昼までちゃんと眠って、今回だけはしっかりとした状態で学校に行きたかったのだ。 そして、コンピュータ登録に行く前に、昼夜逆転を直す事が目標になった。 昨日の夜からずっと陰鬱で苦しかった。 その苦しさを実感したまま横になり、考え続け、自然に意識が眠りに落ちそうになったところにまでこぎつけた。 意識が失われるその瞬間、親父が起きだしてきて、その物音によって目が覚めた。 午前3時頃だっただろうか。 普通、眠りにつく直前がどうだったのかなんて、目覚めた後じゃ自覚は持てない。 だけれど、眠りに落ちるその瞬間に意識を覚醒させられたので、「今が落ちる瞬間だった」と自覚を持つ事が出来たのだ。 その落ちる瞬間、まさに神がかり的なタイミングで邪魔されたのだ。 と、こんな事が今日、昨日、一昨日、と、三日連続で起きたのだ。 眠りに落ちそうになった瞬間阻まれた、というのが三日連続。 それまでシーンとしてたのに。 確率的に考えても絶対ありえん。 まあ、それもいつもの事だけど。 そんな感じで目が覚めて、朝まで結局眠れなかった。 こんな状態で行くのも嫌だなと思いつつ、とりあえず学校に行く仕度だけは整えた。 リビングに行き、何かのきっかけで母親ともめ出した。 そこから色々言い合いになり、「あんたは、何でそんなにキレやすいん?」みたいな事を母親が言い出した。 俺は、何かの本で得た知識をそのまま引用して返答する。 「成長過程で、強い緊張状態を強いられ続けたりすると、極度にストレス耐久の低い人間になるらしいな」 母親が、「また人のせいか!」 俺が、「俺がここまでイライラしやすくなったん、実際おかんにも原因あるやろ。俺が子供の頃自分がどんな仕打ちしてきたか覚えてるやろ?」 いつもの事だが、母親がとぼけ出す。 さらに俺が、「子供の頃とか、俺とおかんしか家に居ない時、よく『死ね』だの『糞ガキ』だの延々とブツブツ言ってたやんな。あれも凄いプレッシャーやったわ」 母親が「そんな事してへん」 俺が「毎日のように殴ってくれたよな。絶対俺が泣き出すまで殴るん辞めへんくせに、泣き出したら泣き出したらで『泣くな!』とか言ってさらにビンタ。こらえられるまで、何度も何度も殴られたりな。子供の頃とか、ほんま家の中おるだけで凄いプレッシャーやったわ」 「そんな嘘つくようになるなんて・・、あんたほんまに大丈夫?ほんま一回病院行ってきいや」とか、如何にも深刻な風を装った感じで母親が言い出す。 「はぁ?」と、これに俺が少しキレた。 さらに俺が、「またそれか!都合悪い事言われると絶対それやな」 母親が「私ほんまにそんな事してへんし」 さらに母親が、「そんな作り話して、誇大妄想にとらわれてるんちゃう?」みたいな事を言ってくる。 俺が、「じゃあ、○○の時に××した時のことはどうや。これも覚えてへんか?△△の時に□□した時の事は?あと、何度か思いっきり尻に蹴り入れてきた事もあったやんな、あれほんま痛くて声出えへんくらいやったわ」と、子供の頃に母親から受けた仕打ちを色々と、思い出せる限り言い尽くす。 10個以上言っただろうか。 すると母親が、「確かに、今までに1.2回くらいは殴ったりした事もあったな。でも、育てていくためにはそれくらいは」と言い出した。 俺「1.2回!それマジで言ってんの?殴らん日は無かったくらい連日殴り倒してきた時期もあったやん!殴るだけじゃなくて蹴りもや!蹴りだけじゃなくて罵詈雑言も言ってたやんな。まるでヤンキー女みたいな口調で!」 母親が、「蹴ったのは何となく覚えてるわ・・」 俺、「それ蹴ったん、俺が○○で××した時やったよな」 母親、「覚えてへん・・・。殴ったんも覚えてへん・・」 俺、「おかんこそ頭大丈夫なん?シラきってんのか?それとも、おかんってマジで二重人格かなんかなんちゃうんか?自分がどれだけ恐ろしい奴やったか、本気で覚えてない言うつもりなん?」 母親、「私、なんか昔からよく記憶抜け落ちてる。友達や親戚や、私のお母さんからも『何でこれ覚えてないん?』って、よく驚かれた。ほんまに覚えてないねん・・。本当言うと、死んだお母さんの記憶も殆ど残ってないねん」と言い出してきた。 俺の母親の母親、つまり俺の実の祖母が死んだのは、俺の母親が20歳を過ぎた後なのだ。その母親を、覚えてないなんてありえない。 おまけに、母親にとっての10〜18年くらい前なんて、俺の感覚で言うところの4.5年前くらいのものだろう。 俺がこんなにハッキリ覚えているのに、母親が覚えてないなんてありえない。 俺は今までに何度も、母親と話す時、母親から受けた仕打ちについて話題に出した事があったのだ。 その度に「知らん、知らん」とシラを切られた。 都合が悪いからシラを切っているのだとばかり思っていたが、本当に俺の母親は二重人格か何かなのかもしれない、と思えてくる。 さらに、母親との話は続く。 「中1の時、俺が親父に畳の上に座らされて説教されてて、その場におかんもおったよな。そして俺がおかんか親父に言い返した。そしたら、なんかおかんが逆上して、俺の側にあった椅子を俺の方に蹴り出して、俺鼻血まみれになったやん。それも覚えてへんの?」 母親「全然覚えてない・・。そんな事した覚えない」 「これも中1の時、俺が学校行く前、なんかおかんが俺に向かってヒステリー起こしだした事あったよな。でも、俺はウザいからそのまま無視して学校行こうとした。だけど、おかんが俺の襟首後ろからガッとつかんで引き止めたやんな。俺がキレて、おかんの腹にひじ打ちしたら『くうう・・』って苦しんで、おかんうずくまったやろ?それも覚えてないん?親父激怒しとったやん」 母親が「私あんたに殴られたん?そんなん知らん。ほんま知らんねんって!」 俺、「それ以来、おかん罵倒はするけど俺に暴力振るわんようなったやん。俺の方が力強くなったっての分かったんか知らんけど」 母親「そんな事あったんや・・」 俺、「この出来事は俺の方が加害者やのにごまかすん?シラきってるんやったら、これについては認めてもええんちゃう?」 さらに俺、「おかんってほんま二重人格なん?」 母親「分からへん。自分でも記憶色々抜け落ちてるし」 そんなやり取りが続いた。 俺は自己憐憫のために記憶をでっちあげたりなんて絶対しない。 今まで挙げた、数々の仕打ちもちゃんと記憶に残ってる。 なのに、母親はどれも身に覚えが無いと言い張り続ける。 記憶が欠如した風を装って非難を逃れようとしてるのか、本当に二重人格か何かなのか、俺には判断がつかない。 子供の頃、俺にとって母親は鬼だった。 あの声も出ない激痛の蹴りを入れられたのは数回だけど、ビンタなんて日常茶飯事。 「死ね」「ボケ」「糞ガキ」 そんな言葉がしょっちゅう飛び交い、家に居るだけで強いプレッシャーを受けていた。 どんなささいな理由だろうが、俺は母親に虐げられなければならない理由になるんだ、と常にピリピリしていたのを覚えてる。 「もし私がそんな事してたんやったら、本当悪い事したな・・」と謝られた。 今まで、この話題を出してもいつもシラを切られて終わるだけだったのに、自分の仕打ちについて母親が非を認めて見せたのは、今日が初めて。 それでも、あくまで自分の記憶にはないけれど、という様子を見せていたのだが。 もしも仮に、俺の母親が本当に二重人格者だとするなら、ヒステリー状態の母親は常に別人だった、と仮定していいのだろうか。 俺に酷い仕打ちを繰り返してきた時の事は、都合が悪いのではぐらかすのは当然だろう。 でも、俺に肘打ちを食らわせられた記憶も無いのだ、と言う。 俺に肘打ちを食らわされる直前、母親はヒステリーを起こしていた。なので、あれも別人格だったから今の母親の記憶に残ってはいないのだ、という事だろうか。 自分が被害を受けた出来事についても「記憶が無い」と言い張れば、自分が俺を加害し続けていた事について「記憶が無い」とする事に、より『真実味』を持たせる事が出来るだろう、という計算があってこその「殴られたのを覚えてない」かもしれないけど。 二重人格なんて大層なものでなく、ただ興奮状態における意識の飛散が、俺の母親は人と比べて極端に顕著で、後年記憶に残らない、とも考えられるが。 都合の悪い記憶を意図して忘れるよう勤めてきた、かもしれないが。 よく分からない。 今まで母親は、それらについて「してない」と言い張り続けていたのだが、「覚えてない」と言い出したのも今日が初めて。 今日は、「あんたそんな作り話までするようになって・・」とまで言われたので、俺は今現在の自分が思い出せる限りの全ての出来事を持ち出した。 すると、こういう状況の変化が現れた、という感じ。 現在午後13時01分。 とても眠くて、頭もボケてる。 学校に行くのは明日にしよう。 今日こそ、昼夜逆転を直さないとな。 母親との会話で、今日は初耳な事が沢山あった。 今まで信じられないほどのショックを受けすぎてきたせいもあるのか、母親がどこかおかしいかもしれないという事に対しても、特にショックは受けなくて、「おかんって二重人格かもしれんのや。おかんやったらそういうのもあるかもしれんな」くらいの気持ちしか沸いてこない。 今の俺には、「信じられない事」というものが殆ど無いのだ。 幽霊の存在にしろ、俺の意識にいちいち周りの奴らの物音がリンクして邪魔してくる奇跡にしろ、「こんな事が!」なんて驚きを感じる事が俺には出来ない。 とりあえず、今日はもう眠る事にする。 どうせ、今日の晩にも、眠りの瞬間奇跡が起こって昼夜逆転改善を阻まれたりするんだろうけど。四度目の奇跡が絶対起こる。
|