やっぱり、君との時間は楽しい。
有田君は、今日の帰りの電車で、 一緒に座らないかと声をかけてくれて、 あたしの爪を褒めてくれた(!)けれども。 いろいろ話すあたしを、優しい目で見てくれたけれども。 寺島の隣にいるときほどの安心感はない。
あたしの何かを褒めてくれることも、 あたしを見ながら話を聞いてくれることも、 あたしが寺島に望んでることばかりで、 有田君はそのままそっくりくれるのに、 あたしの心は穏やかなまま。
寺島のことが辛いときは、 周りのいろんな男の人にときめいて過ごすあたしで、 ミーハーを発揮するのに、 この人にだけはそれがない。
珍しいわ、とあたしは、 勝手に彼をレア物扱いしてる。心の中で。
また、「初めて」が増える。 昨日は初めての、お風呂。
寺島の部屋についている、小さめのお風呂で、 一緒にあったまる。
上がると、 寺島は久しぶりにメガネをかけていて、 (最近コンタクトに変わったので) あたしは自然ににやけてしまった。
でもそれであたしが喜ぶのは、 寺島はよくは思わないらしい。 かっこいいと思っているんだけどな。
未来を想うことは、出来ないけど。 あなたの「初めて」をたくさん奪ってゆくことは、 嬉しいと、今は思う。
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