「誕生日おめでとう」 今日は誰の誕生日でしょう? もう何年も、あたしの頭に染みこんでる。 小田の誕生日。
午前中にメールを送ったのに、 ずっと返事がなくて、 あの人は人気者だから、返事に忙しいのかなぁ、なんて。 仕事もあるだろうし。 だから夕方にはもう忘れかけていたんだけど、 帰りの電車で着信。 とるだけとって電車だから後でねっと言って切った。
久しぶりに聞いた、小田の声は。 あたしをにやけさせっぱなしで。 電車の中なのに相当怪しかった。 ダメだなぁ、と思いつつ。
数時間後に交わした、10分程度の会話は。 数年前に毎日交わしていた2時間の電話と、変わらず。 あたしはそれが不思議で、たまらなかった。 変わっていることと言えば。 小田が運転しながら、イヤホンマイクで喋っているくらい。
小田はあたしがあげたメールにいたく感動して。 たくさん「ありがとう」と言ってくれた。 「覚えててくれたんだね」って。 あたしにとっては、当たり前のことだから。
いつも、優しいのよね。 あなたの声は。 やすらぐ、響き。
でも、気づいたのが。 電話の向こうの小田が、 何だかいつもの寺島に似てるってことで。 「疲れたー」と、 子どものような声で話してきてて。 「どうしたの?」 ってあたしが聞いて。 あれ、これじゃいつもと変わらないじゃんと独りごちた。 そして苦笑する。
あたしがこの2人だけに本当の恋をしたのは。 どこかで2人が似てるからなのかな。
優しさの種類も違うし、 どこ、って確実には言えないけど。
それがあたしに恋をさせたのかな。 想うだけで幸せで、 傍にいないと苦しくて、 想われないのが切なくて、 それでも失いたくない、 本当の恋。
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