最近、子供が欲しいとか、 子供の世話が楽しいとか思わなくなったとか言うのは、 寺島との未来が考えられないからだと思う。
理由を上手く書くことは出来なくて、 それは多いからという気もするし、 複雑だからという気もする。 基本的に理由はよくわからない。
テニスクラブに子連れの夫婦がいらして、 子供の名前は篤史君で、 寺島とあたしはよく「あっ君」と呼んで相手をしている。
手の空いたときに相手をするので、 大抵はどちらかと遊ぶのだけど、 ふとしたときに3人になったりする。
今日はちょうどその「ふとしたとき」がやってきて、 3人でコートの備品を取りに行くことになった。 3歳のあっ君は、右手に大好きなぬいぐるみを持ち、 左手で寺島と手をつないで、歩いてた。
あたしはあっ君の右側を歩いていて、 今日は手をあっ君とつなげないな、なんて思っていた。
あっ君を笑わせるために、寺島が動いて、 あっ君をつかまえたりする。 その度にキャッキャッとあっ君が笑う。 周りの友達に何度言っても信じてくれないけれど、 寺島は子供好きだ。
そうしてるうちにいつのまにか、 あたしはあっ君の左側にいて、寺島は少しあっ君から離れていた。 甘えたがりなのか、あっ君はすぐ手をつなぎたがる。 空いている左手の傍にあったあたしの手を、つかんでくれた。
ただ、あくまでもあたしは彼にとってまだ新顔。 寺島の方が、好きなのだ。 寺島が戻ってくると、また手をつなぎたがった。 ぬいぐるみを少しだけ、押し潰して。
要するにあっ君を真ん中にして、 3人とも手をつないで。
あぁ、家族つなぎになっちゃった、と、 あたしは冗談を言って笑ったけれど、 本当は笑えなかった。 リアリティのなさに笑えなくて、 それが不思議じゃない自分にも笑えなかった。
あたしは一体。 何が欲しいのだろう。
昨日の地震の瞬間。 あたしは、電波の届きにくいところにいた。 すぐさま電話をすることも、 メールを打つこともままならなかった。
打つだけは出来ても、なかなか送信が出来ない。 それは電波が届きにくかったからなのか、 電波が多く行き交っていたからか知らないが。
ようやく送信して。 返信を受信するまでに、30分ほどあった。 寺島は無事なのか。それだけが頭にあった。 生きた心地がしなかった。
やっと。 本当にやっと返信が来て。 一気に安心して。 変わらない自分を自覚していたりもする。
今はよくわからない時期。 なのかな。
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