夕べ深夜の、寺島との電話。 雰囲気が、すごく悪くて、 電話を切った後、 あたしはもう何もせずに眠るしかなかった。
何にもしたくなくて、 化粧も落とさなかったし、 部屋の電気も消さなかったし、 節電モードのパソコンもそのままで、 あまつさえストーブも消さなかった。
そんな風にして眠った夕べ。 懐かしい、夢を、見た。
あたしがまだ。 ドリームキャストでチャットをしてた頃。 おままごとのネット恋愛をしてた。
そこで、圭介より前に出来た「彼氏」。 一応、あたしの人生最初の「彼氏」。 本当におままごと、だったのだろうけど。
名前は、ケンさん。 あたしより、7つ年上。 だから当時、21歳。
14歳のあたしと。 毎日毎日、電話してくれた。 毎日毎日、1時間以上喋ってくれてた。
優しかった。 いつもあたしを笑わせてくれてた。 どんな状況でもあたしの電話をとってくれた。
風邪引いてるときも、あったな。
電話を切るとき、 「ばいばい」って言うと、 照れくさそうに笑って、 「ばいばい、まりあ」 と返してくれてた。
別れた理由は、 あたしが、おままごとだと気づいたから。
夢であたしはまたケンさんと付き合ってて、 笑わせてもらって、 でもまた、別れてた。
ケンさんのことは、ちゃんと好きだった。 けどおままごとだと気づいて。 ケンさんはあたしのことを好きじゃないんだろうって。 嫌われてるとは思わなかったけど、 それじゃダメだと思った。 ケンさんに悪いと思った。
あたしの問い掛けるメールに対して、 ケンさんは「わからない」って答えて、 それっきり。 夢の中でも、同じ。
夢から覚めたとき、 ケンさんからもらったメールの最後を思い出した。 その、「わからない」って書かれたメールの最後。
ケンさんは、わからないと言いつつ、 たくさんの文章を書いてくれて、 真面目に向き合ってくれて、 最後まで。優しかった。
あれから5年が経って。 あたしは、ケンさんがくれた言葉を守れているんだろうか。
ケンさんの優しい関西弁と、 あの照れた笑い方を思い出して。 元気にならなきゃ。
今、愛する人のために。
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