何がきっかけで涙が出たのか、 もう忘れてしまった。
必死に隠していても、 顔が震えているのが自分でもよくわかった。
涙のしみが、寺島の服に出来てしまってた。 服を気にする人なのに、何にも言わなかった。
話は相変わらず、桃子の話だった。 2人で毛布にくるまっているのに、と思ったのが、 きっかけだったかしれない。
まりあ、と寺島が呼んだ。
ん?と答えた声は、普通の声だったはず。
寺島は顔をあげさせて、 話を続けながら涙を指で軽くぬぐってくれた。
その後、きゅっと抱き締めてくれた。
何にも言わなかった。 腕を解いた後、また桃子の話をしたか、別の話になったか、 それも憶えていない。
ただあたしは。 この反応が1番嬉しいってことと、 寺島が受け止めてくれたことだけ思っていた。 今までもずっとそうで、あたしだけが、 被害者面して甘えていただけなんだと。
寺島は、あたしを大事にしてくれてる。 何にも力になれないあたしなのに。 可愛くもなく、目の保養にもならないのに。
桃子の話をする一方で、 あたしの話もしてくれる。 いろいろと邪推してみるけど、 そこまで考えるプレイボーイでもないな、と思う。 だから素直に受け取っとく。
「上着 ¥2,990、
ジーパン ¥3,990、
まりあ …プライスレス」
「ご機嫌をとるのが上手くなったじゃない?」
「そんなんじゃないよ(苦笑)ホントだよ」
もうたくさん、受け止めてもらったから。 これ以上は、悪いよ。
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